善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや
ヨットが逆風を持って、前に進むように、苦しいということは、それを大きな順風に転じることができると話した。
題にしたのは、親鸞聖人のことばである。
「善人でさえ往生できるなら、悪人なら尚更往生できる」という意味である。普通の人なら、反対に考えるところで、「悪人さえ往生できるなら、善人なら尚更往生できる」となるだろう。
苦悩が多い悪人であるから、善人よりも菩提心(往生しようと望む心)は大きく、だから善人より、一層往生できる、という言葉である。
強い向かい風があるからこそ、力強く航海できるのである。苦をポジティブに捉えることができる。
気を付けるのは、なにも風を無視して無理やり航海するわけでない。能動的な動きではないのである。あくまでも風に耐える受動的な行為が、大きな能動に変わる。
変えるとしたら、風に向かうよう舵を切ることだ。苦に対面しようと視点を変えることである。苦から逃げていたら、反作用力は得られない。
縁起というハンモックに抱かれることは、忘れてはならない。