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アンコール遺跡の光と闇と自分

カンボジアのシェムリアップにいる。

地平線まで広がる水田を見渡して、ユーラシア大陸の一角であることを再認識する。

溶脱して赤みを帯びた土と、鉄っぽいシャワーの水から熱帯気候を感じる。


19日は4:20に起きてアンコール・ワットで日の出を見ることにした。

完全なシンメトリーから成る祠堂の中心部を目指して、太陽がゆっくりと昇っていく。

900年前に、これほど正確な測量技術によって、太陽崇拝を体現したのだと考えるとさすがに圧倒される。


タ・プロームではラピュタの世界に入り込んだかのように感じた。いや逆か。放棄された人工物に永い時間をかけて、自然が絡んでいく。その悠久の時に思いを馳せつつ、いつかは朽ちてしまう刹那を噛みしめた。


その後、訪れたアンコール・トムでも荘厳なクメール建築が見られるが、頭や腕のない立像(下の写真参照)が目立つ。日本語に随分と達者なガイドさんによると、財政難に陥っていたポル・ポト政権が外貨獲得のために、破壊してタイの闇市に売っていたらしい。カンボジアの歴史の光と闇が対照的で興味深い。


立像の写真を見返していると、不覚にも、タイでもカンボジアでも、手足のない子どもが物乞いをしている姿が重なる。

なぜ手足がないのだろう。事故か。先天的な病気か。一部ではマフィアが幼い子供を買い取り、手足を切断して物乞いをさせ、利益の一部を回収する場合なんかもあるらしい。

これが事実なのだとしたら、素直に哀れむこともできなくなる。利益が出る限りこのビジネスは終わらない。


そういえば、立像の足の白い部分は日本が援助して修繕しているらしい。

タイのバンコクにも日本が援助して掛けた橋があったな。

やはり、異国の地での祖国の活躍を見て悪い気はしない。

でも俺は1ドルの飯食って、0.5ドルのビール飲んで満足してるだけだな。


夕方は、トゥクトゥクに乗る金もなくて、国際免許を握りしめて、バイクを借りて丘に登り、トンレサップ湖に沈む日の入を見に行った。

見事な夕日。トンレサップ湖は雨季と乾季で3倍も面積が変わるらしい。

それだけ雨季と乾季の降水量に差があって、起伏の少ない地形なのだろう。


雨季のカンボジアでは1週間、太陽が出ないなんてことも珍しくないらしい。

朝日と夕日をどちらも拝めたのは奇跡だと思う。


この国に歓迎されているような気がしてしまう。実際カンボジアの人は本当に親切で、タイ人は表面的なサービスという感じがしたのに対し、カンボジア人は心から歓迎してくれるように思う。カタコトのクメール語で感謝を伝えるだけで本当に嬉しそうな顔をしてくれる。


私有地ではないはずなのに、夕日を見ているとタバコ咥えながら10ドル請求してくるヤニカスのお坊さん(あり得ない)もいるのだけれど。


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