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DIEGO 個展 『EASY RIDER』

虎ノ門のSIGNALでDIEGOの個展『EASY RIDER』が2/15まで開催されているので、ちょっとした感想を。

個展の会場は、虎ノ門ヒルズ駅から徒歩5分ほどの距離にある、カフェ&バーの奥に併設された、割と小さなギャラリーで、DIEGOとしては初の試みで、映像作品がメインの展示になっている。

まず、主役の映像がどんな作品かといえば、街中のあらゆる場所を自転車で巡る様子が、DIEGO視点のカメラで記録され、それらが編集されて、1つの映像作品となっている。街の路地裏や人混みの中など、あらゆる場所をDIEGOが探索する様子が、たんたんと流れ、途中に落書きのようなドローイングが流れてきたり、呑気な音楽に合わせて、カットが移り変わっていく。
裏山のような場所や川原など、いろんな場所を自転車で走破していく映像は、中学生時代に自転車でどこまでも遊びに行ってしまう記憶を思い出し、クスッと笑ってしまうユーモアとノスタルジーをまとっている。(昔はめちゃくちゃ自転車好きだったのに最近めっきり乗らなくなってしまった)それと同時に、よく見れば、街オタクでしか知り得ないような、変な場所を走っていたり、昼から夜へ街が移り変わる様や人の流れの変化など、多彩なシークエンスが映像の中に巧みに配置されていて、自転車での移動を通して、都市の総体を浮かび上がらせている。また、カメラアングル がDIY的なアナログ感に満ちていることや(YOU TUBE感もあり、任天堂64の007を思い出すようなゲームっぽさもある)、現代アートの映像作品にままある、コンセプト的オチをあえてつくっていないことも相まって、脱作品的な雰囲気があり、アートなのか趣味なのか、スレスレを楽しむかのような力の抜き具合で、アートシーンの作品主義に揺さぶりをかけるような試みにも見えた。その他にも、自転車の車輪を回すと、キャラクターがアニメーションのように動く作品や新作のドローイングも会場に展示されていた。

個人的には、ドローイング作品がとても魅力的で、グラフティに使うステッカーから出るゴミを集めて、紙漉きで作った和紙に、糸ごみで描かれたキャラクターや、ぐずぐずであたかも紙クズのようなテクスチャの作品が、アスファルトの床に放置されていて、街に落ちているゴミさながらに擬態しており、ここでもアート作品としてのクオリティに逆行するような実験が行われていて痛快だった。ボロボロのものが新しいものより美しいと感じる一瞬があり得るし、虎ノ門のように、開発で綺麗になっていく街が増えていく、現状への疑問符のようにも感じとれた。その他にも、街の配管などを抽象化して描いたようなドローイングも言葉にし難いなんとも不思議な魅力があった。

『Wasted can walk』

虎ノ門ヒルズのような新ピカの街で、のんびりとチャリンコを漕いで出かける映像が流れる会場は、ホワイトキューブの緊張感をほぐすような、程よい脱力感に満ちていて、噛めば噛むほど味がする、するめ的な作品で何度も見返すといろいろな発見がありそうだった。




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