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江戸の下級武士に学ぶ家計節約術(1):節約と蓄財の指南書『経済随筆』とは

経済随筆の概要

『経済随筆』という書物がある。いくつかの本や動画でも既に取り上げられている本である。これを書いたのは橋本敬簡という人で、江戸幕府の旗本だった。職禄300俵から始まり最後は1000俵まで出世したというから、厳密にいえば下級武士とは言えないかもしれないが、万石以上の大名に比べれば上級とは言えないだろう。なおこの人の節約術については、既に小川恭一さんの本の『お旗本の家計事情と暮らしの智恵』(絶版)でも、詳しく取り上げられているが、このコラムでは原典に沿って、順番に詳しく見ていこう。原典は『近世地方経済史料 第1巻』で簡単に見ることができる。


「経済」のポイント

敬簡はまず冒頭に「経済」なるものの要点を説いているが、それはやはり「入を量り出を為す」すなわち収入を正確に知り、その上で支出をせよと言っている。当然とはいえ、ついついクレジットカードなどで欲しいものを買ってしまう現代人には、耳の痛い話である。しかし、確かに基本はこれに尽きるのかなという気もする。あるいはよく似た言葉で「入るを図りて、出ずるを制す」というのがあるが、収入を極力増やし、支出を極力減らすという意味でこれも頭の痛いところである。但し、敬簡はケチを勧めてはいない。

人生を楽しむことも大事

彼は人生を楽しむことも大事だといっている。けちけちして守銭奴となり、義理人情を欠き、一生粗衣粗食で終わるのでは、何のための富か、と問うている。ありがたい太平の世の中に、楽しむことは難しいことではない、ただ度を越した華美やぜいたくはいけない、それをやると貧乏に転落すると述べているのである。さらに当時の世相を反映して、借金で困っている武士に、具体的な解決策を提示している。

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