
前例がないという暗闇
術後7日目。明けない夜はなくて、仕方なく起き出した。
目は腫れぼったいし眠くて集中力ないしぐだぐだだったけど、とにかく早く退院を目指すしかない。
術後3日目から2日おきくらいにレントゲン、心電図、心臓エコーと色々とってきたが、この日とった四肢血圧のときに初めて感じた違和感。
(え、私の心臓こんなに動くの激しかったっけ…?!)
横になっているのに体が揺れてるような錯覚がするほど動悸が強く、気持ち悪くなったほど。血圧自体は問題なかったそうだけど、このドキドキ(バクバク?)はあまり嬉しくなかった。
その後普通に立って自力で病室に戻ってからはドキドキしなかったので少し忘れていたが、また寝る時にベッドを横にするとドキドキが強すぎて眠れない、ということが起こり出す。
リハビリに行ってもあまり元気が出ない私に理学療法士兼看護士さんがたくさん声をかけてくれて、話を聞いてくれた。
同世代の患者さんが病棟にもリハビリ室にもいないし、看護士さんもあくまで今までにいたよと過去の話をするしかできなくて、私のモヤモヤと不安はぶつけるところがなかった。
結婚するのが遅かったし、結婚してしばらくは仕事があまりにも楽しくて子作りはそこまで力を入れてなかった。
ふと気づけば40歳目前で、不妊治療が保険適用になるというのでやっと重い腰を上げた。近所の婦人科から総合病院の生殖センターを経て専門クリニックへ。
乏精子症と子宮腺筋症のダブルパンチで、顕微授精しか手段はなかったけど、それでも私達夫婦には希望の受精卵ができた。
妊娠したい、子供を産みたいなんて、心臓病の私が望むのはダメなことなのかな。凍結してある受精卵はどうしよう…とくよくよ悩んだ。
ネットに全然例が載ってなくて、ほんとに絵空事、考えるのもおこがましい事なのかなと落ち込むばかり。
私がフロンティアになるしかないのか。自分の体を使って実験するしかないのか。実験台になるしかないのか。
痛みも辛さも苦しさも、人によって違う。置かれている状況によっても違う。
40代、既婚子なし、糖尿病、心臓病、冠動脈バイパス手術(ミッドキャブ:低侵襲手術)を乗り越えて、妊娠出産できたよと公表しよう。
でも、そんな気持ちになれたのはもっと後のこと。
ネットの世界でXもFacebookもやっているけれど、新しくブログやホームページを始める元気はなくて、それでnoteを始めた。