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第20回過去問を読んでみての感想です。
第1問の労働紛争事例問題は、私が受験した第16回とよく似た試用期間中の解雇でした。私の印象としては、第16回よりも第20回の方が、Y社の言い分に説得力があり、解雇有効になる可能性が高いです。もちろんどちらが勝つかは余り重要ではなく、小問(1)~(5)の解答に矛盾がなく、1本筋が通っているかどうかですから、Xが勝ちそうと判断したとしても、それだけで失敗ということにはなりませんから、ご安心ください。
小問(1)は、①労働契約上の権利を有する地位の確認、②解雇されている期間中の未払い賃金の支払(途中で金額が上がることを忘れず)の2点を書けばOKです。
小問(2)はXに都合の良い事実を拾い上げ、小問(3)はY社に都合の良い事実を拾い上げる訳ですが、Xの主張事実を書く文章の最後には、全部言い訳じみた評価を書かざるを得ないのがつらいですね。
小問(4)は、解雇権濫用法理と解約権留保付雇用契約と言う2つのキーワードが書けているかどうかが勝負の分かれ目ですね。カクカクしかじかの理由で、本件解雇には客観的合理的と社会通念上の相当性がある上に、XとY社の間の労働契約は解雇権留保付雇用契約なので、Y社の裁量の範囲は広いと考えられるから、Y社が勝つ可能性が大きいと思われる(私の意見)。
小問(5)は、Y社が勝ちそうなときに、Xから提示する和解案というのは、当然、弱いというか控えめな内容にならざるを得ません。まあ、残る試用期間2か月分の賃金相当額を解決金として請求するぐらいがいいところかな。一方、Xが勝ちそうと予想した受験生は、XをY社に復職させて試用期間中の残りの研修を受けさせたうえで技術職として配属すべしという請求をすることも可能ですが、Xの資質から考えると技術職だと不安が残るので、事務職として復職・配属ぐらいに抑えておくのが妥当かなと考えています。この場合、解雇期間中の未払い賃金の支払を書き忘れないように。
第2問の倫理事例問題は、小問(1)は違法な業者との提携、小問(2)は過去の顧問先を相手に元従業員が起こすあっせんの代理人、の問題です。
小問(1)は、(イ)、Bコンサル会社は会費をもらっていて付随サービスとして助成金申請書類の作成代行をしている(脱法行為)のだから社労士法2条1号違反です。そのB社から事件のあっせんを受けることは社労士法23条の2で禁止されているから、受任できない。
小問(2)は、(イ)、まず、乙とC社の顧問契約は解消されているので、社労士法22条2項には抵触しない。しかし、乙から見ればC社は過去の顧問先であり、社内の事情や秘密情報を知り得る立場にあったので、守秘義務違反を引き起こす可能性がある。加えて、今回、乙がE部長の代理人を引き受けると、C社(D社長)や世間から見ると、乙は顧問契約を解消された腹いせに、E部長をそそのかして、あっせんの申し立てをさせたと受け止める可能性があるので、社労士としての公正、誠実、信用、品位を害するおそれがあるので受任すべきでない。
以上、さっと見て、ざっと書いた感想です。