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第9回と第10回第2問(倫理事例問題)の解説


第9回(平成25年度)
 まずは問題文を読んでください。小問(1)を解きます。今回から出題の趣旨は省きます。ご自分で、連合会のWebsiteのPDFを見てください。
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第2問 特定社会保険労務士甲は、中小企業A社の労務管理の相談等を受任していたが1年半ほど前に友人BをA社に紹介し、Bは経営企画課長として、A社に途中入社した。ところがBはA社の社長と経営方針を巡り激しく対立したことから、退職することでA社と口頭による合意をした。Bは、入社3年未満で、退職金規程上の支給要件には該当しないが、A社は甲の助言を受け入れ、A社とBの間で退職金60万円を支払うことで合意した。
 以下の(1)及び(2)に答えなさい。
小問(1) 甲は、A社及びBの双方から、有償で退職にかかる退職金の支払い等に関する和解契約書をA社及びBの名義で作成することを依頼された。このような依頼を甲は受けることができますか。  
解答用紙第6欄にその結論を述べ、理由を200字以内で記載しなさい。
小問(2) A社はBに対して上記退職金を支払い、BはA社を退職した。Bの退職と同時に、A社は甲との継続的な労務管理の相談等の業務契約を解消する旨甲に通知し、甲も承諾した。他方、A社を退職したBは、退職日の1カ月後、甲に対して「退職の合意はA社の説明に虚偽事実があり、このままでは懲戒解雇となるとの説明を信じて錯誤に基づいて意思表示をしたものである。ついては、Bの錯誤を理由にA社を相手方とし、退職の意思表示の無効を求めて、都道府県労働局長に、『あっせん』の申請をして欲しい。」と依頼した。甲はBの依頼を引き受けることができますか。
 解答用紙第6欄にその結論を述べ、理由を300字以内で記載しなさい。
(注)本問の解答と直接関係はありませんが、民法改正で瑕疵ある意思表示の錯誤は無効から取消しに変更されています。
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 倫理事例問題で最初にするのは、各「登場人物の立ち位置(機能)」と「登場人物同士の関係」を図に描いて、当該事例の全体像を把握することです。利益相反関係が、だんだんややこしくなって来ました。この時代の倫理事例問題は、最近の問題より難しいのではないかと思います。
A社、B、甲の3人の登場人物について整理すると次のとおりです(図はご自分で描いてください。)
A社(労務管理の相談を継続的に甲にしていた。甲の友人Bを経営企画課長として、中途採用したが、社長と経営方針をめぐり激しく対立して、Bを退職させることになった。)
(甲の友人。甲の紹介でB社に経営企画課長として中途採用されたが、社長と経営方針を巡り激しく対立して、退職することでA社と口頭の合意をした。)
特定社労士甲(A社の労務相談を継続的に受任していた。友人BをA社に紹介し、Bは経営企画課長としてA社に中途採用された。Bは、入社3年未満で、退職金規程上の支給要件には該当しないが、A社は甲の助言を受け入れ、A社とBとの間で退職金60万円を支払うことで合意した。)

(注)本問の解説の原稿は2年前に書いたのですが、第19回第2問の解説を書いた後で見直すと見落としが見つかって、「そこまで考えて書かないと、(解答には書かないにしても)解答の解説としては不十分だなと思う」反省をしています。以下は、見直し後の内容です。

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