【13】グレート・ギャツビーの世界

 さきほどまでの私はまさしく、ギャツビーの夜会に招かれたニックだった。

 普段お世話になっているFP(ファイナンシャルプランナー)の方に、とあるチャリティパーティーに誘われた。会費が1万5000円とまあまあ高く、行くかどうか悩んだのだが、行くことにした。結婚式でもないのに会費が1万円超えるパーティに出席したことある人を、身近で見たことがなかったからだ。興味の赴くままに参加した結果、まさしくグレート・ギャツビーの世界に迷い込んだかのような体験ができたので、紹介したいと思う。

 16時半の開場ぴったりに到着した私は、入場した瞬間心のなかで謝罪した。間違いなく自分はこの場にふさわしくないような輝かしさが会場にはあった。私のようにくたびれたスーツで参加しているような人はおらず、ブランドはわからないが見ただけで高そうだとわかるスーツを着た人がぞろぞろいた。身につけているものから格の違いをひしひしと感じて、入場して5分後には帰りたい気持ちでいっぱいになったくらいだ。せっかくこんなパーティーに参加できるのなら、たくさんの人と話をしてみようと思ったのだが、そんな意気込みもむなしく、私は一人ぽつんと式にはじまりをまった。

 孤独に耐え忍ぶこと30分。ようやくパーティーは始まった。同じテーブルにいた人がたまたま中学校の教員をしている人らしく、自分と似たような人がいることにとても安堵した。誰とも話さない2時間にならず、本当に安心した。どうにかやっていけそうだと思い、ドリンクを飲み、バイキングの美味しいお肉を食べ、その場を楽しんでいたら、福引大会が始まった。会場に入ったときにくじを1枚引いていたのだが、どうやらその番号に沿ってプレゼントが用意されていたようだった。その中身がまたとんでもなくて、シャネルやらヴィトンやら、「名前は知っているけど実物見たことないシリーズ」のブランド品が用意されていた。それが一つ二つとかではなく、まあまあの量用意されているようだった。その他にも箱の形からなんか良いもののオーラが漂うものばかりだった。私が頂いたのはラルフローレンのハンカチとゴディバのチョコだった。





 もう一度書こう。ラルフローレンのハンカチとゴディバのチョコだった。







 あのラルフローレンが、ハズレのような扱いを受けている!!


 顎が外れるかのような驚きだった。昨日、職場の忘年会であったプレゼント交換会の景品のどれも、ラルフローレンには届かない。家に帰って中身を確認したらまあおしゃれなハンカチだこと。これだけで本当に大満足なのに、なんと申し訳程度にゴディバのチョコがついてきたのだ。カントリーマアムつけときましたのノリでゴディバのチョコが一緒に入れられている。ニックはもう、ついていけない。

 その後、FPさんに連れられて何人かの人の話を聞いたり、話をしたりした。自己紹介のとき、聞き返されるくらいには声が出なくて、自身のなさはここまで体に影響を与えるのだなあと少し悲しくなった。ただ、名刺を持っていっていたおかげでなんとか相手に自分のことを伝えることができたし、「教員なのに名刺を持っている」ということに驚いてもらえてよかった。名刺は偉大である。

 このあとも、7万円の賞金をかけたじゃんけん大会があるなど、予想を遥かに上回るきらびやかな世界を体験させていただいた。2時間という時間はあっという間で、すてきなパーティーは幕を閉じた。

 ようやく最近貯金ができるようになってきた30歳の大きな子供が経験するにはあまりにも刺激が強すぎるパーティーだった。まさしくギャツビーの夜会そのものだ。僕はニックとして、記録に残しておくべきだと思う。とても素晴らしい体験だった。​

いいなと思ったら応援しよう!