趣味:「博物館浴」

「博物館浴」という言葉があるらしい。少し前に新聞の記事で読んだ。どこかの大学が実験して、美術館や博物館に行くとリラックス効果があることがわかったという。

この記事を見て、まず真っ先に「これ私やってるわー!」と思った。足繁くとまではいかないけど、月に1、2回くらいはどこかしらの美術館や博物館に足を運んでいる。

好きなジャンルはない。いや、あるんだけど、言語化できない。言語化できないというか、自分の好きなジャンルは何と称されているのかを知らない。語彙を知らない、ということだと思う。

SNSで展覧会系のまとめアカウントをフォローしていて、情報は主にそこから仕入れる。サムネイル画像を見て、「あ、これ好きかも」と思えば詳細をチェックする。記事内にもいくつか展示物の画像が上げられているから、それらを見て行くかどうかを決める。

そして実際に美術館や博物館に出向く。少し緊張しつつ(勝手がわからなかったり、展覧会名がきちんと言えるか心配だったり)受付でチケットを買う。前売りを買えば安いのは知っているけど、本当に行けるかどうかわからないので、いつも当日券を買う。

展示室に入った瞬間の、あの静かな空間がよい。ちょっと非日常に移行する感じ。
非日常と言っても、今やたらもてはやされている「没入感」とは違って、もう少しニュートラルというかナチュラルというか、没入できるかどうかは鑑賞者に委ねられている、そんな空間がちょうどいい。

私はたいていほかの人達より鑑賞時間が長い。どんどん抜かされていってるなーと感じながら見ている。しっかり見ないともったいないと思っている節もあるし、単純にぼーっと見ているのも心地よい。
何を表現しているのかわからない展示物もあるけれど(むしろそういうもののほうが多い)、それでも自分なりの感想を捻り出すべく、近くに寄ったり遠目に眺めたり斜めから見たりする。

時々、鑑賞するペースが私と同じ人がいる。つかず離れずの微妙な距離感で。その人がなんとなく雰囲気のいい人なら、勝手に同士と思って、落ち着いた気持ちで鑑賞ができる。
逆に、なんとなく気が散るような雰囲気の人もいる。服装とか、ちょっとした動きとか、顔つきとか。そういう人が近くにいたら、さっき見た展示物をもう一度見に行ったりして、なんとか視界に入らないくらいの距離感を保つ。

言語道断でいらっとするのは、会話をする人。「お静かに」と注意書きがあるところもないところもあるけれど、たいてい館内はとても静かだ。そんな中で、普通の音量でしゃべる人達は何を考えているんだろう。
小声でしゃべるのも個人的にはアウト。こしょこしょした音が館内に響くと、普通のしゃべり声より耳につく(イヤホンの音漏れの感覚に近い)。

美術館や博物館では静かにするべきだ、とは思っていない。もし見に行った展覧会で、多くの人が思い思いに会話を楽しんでいたら、それはそれで心地いい気がする。みんなが静かにしているところに1人2人が声を出しているから耳につくわけで。
会話可とか、子どもが騒いでもOKとかを謳っている展覧会も見かけた気がする。それはそれで、とても楽しそう。

そんなわけで、不満もそれなりにあるけれど、リラックス感のほうが圧倒的に上回るので、今後もこの空間を浴びて楽しんでいきたい。

本当はもっと、見たものを覚えて教養として蓄積できればいいのだけど。
せめて、自分の好きなのは○○時代の□□派です、みたいに説明はできたほうがいいと思う。

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