なるべくしてなった私のミニマリストの経緯
どうしようもない苦しい現実にぶち当たったとき、落ちるところまで落ちたら這い上がるしかありません。
何もないからこそ、無の美しさを知ることができました。
結婚した当時の生活は苦しかった
子どもが生まれてすぐ、われわれ夫婦の生活はとても苦しかったです。
アパレル店員(平社員)同士で結婚した私たち。結婚する前からお給料の3分の1は服代に使い、貯金もなく生活はぎりぎりでした。
そんな私たちが結婚して一番苦労したことは、服に使えるお金がなくなってしまったこと。アパレル店員にとって服は、商売道具でもありプライドでもあるからです。
今となればそんなプライドは無意味だということに気が付きましたが、毎月のように服を購入するのが当たり前だった生活が何年も染みついていたので、服が買えないという現実は、やはり耐え難いことでした。
服が買えない辛さと屈辱に耐えた
子どもを持つ親として一番たいせつなことは子育てです。
自分の身なりをかっこつけようなどという気持ちは、自然に消えていきました。
ある時夫の覚悟を機に、夫婦で200着以上ある服を20着程度まで減らすまでになります。
夫はこれまで持っていたほとんどの服を手放し、
「自分は2着のスーツと数枚のシャツだけで十分だ。むしろそのほうがいい。」と言いました。
この一言がミニマルな生活を始めるきっかけになります。
夫は、職場で同僚たちが季節ごとに何を買うか相談しているさなか、内心は穏やかでなかったと思います。一緒に家庭を支える妻として、それは屈辱的でした。
私も育休期間の間は新しい服を買わずに、あるもので過ごしました。
このように2013年~2017年の4年間は、アパレル店員としての情けなさを強く感じ、そして憤り、とても辛い日々でした。
2人の子供に恵まれ、おかげさまで育休&復帰を2度させていただきました。ですがやはり生活は楽にならず、職場に復帰しても新しい服を購入できない辛さは続きました。
みなさんにとってはどうでも良い話だと思いますが、アパレル店員って
今日、〇〇ブランドの人が着ている服、新しいスタイルだね!
あの人、いつもおしゃれだよね♪
そういう会話が良く飛び交うんです。
そういえば、ある上司から、
「自分が舞台に立っているとでも思って演じろ!」などと言われたこともあります。
女優ではありませんが、そうやってお客さまに挑み、話しかけるタイミングでは緊張感を克服し、モノを売るために言いたくないことも言う、それをセリフだと思って売るしかない。だからこそ演じろ!なのでしょう。
まぁこんな風に、そのための自信となったり背中を押したりしてくれるのが【服】というわけなのです。
「店員さん、おしゃれですよね」そう言われるのも原動力になりますので、アパレル店員はおしゃれをすることで、安月給でも仕事の楽しさやプライドを築いていけます。
それだけに店員にとっての【服】とは、仕事を続けるために必須の鎧とでも言えるかもしれません。
下がるところまで下がったら、這い上がるしかなかった
とはいえ楽にならない生活とおしゃれができない状況の中、私はアパレル店員の仕事が、だんだんつまらなく感じるようになります。
そのときです、子育てと仕事に奮闘しているときに父親がガンになりました。もう、絶望的になりました。
子育てと父の介護を経験し、とうとう私は鬱になり仕事をやめざるを得なくなります。
しかし、ここまでどん底まで下がり何もなくなれば、あとはもう上がるしかなくなるのも事実。
ちょうどその頃スキルアップのために通っていた骨格診断とパーソナルカラー診断のスクールを卒業したのもあり、2018年にパーソナルスタイリストとして独立しました。
父親の闘病の中、家族の愛や支えがあったからこそ独立できたと思います。
所有しない喜びと本当に大切なものを知った
すべてを失ったかのように思えた日々も、そこから這い上がるしかなかったことをきっかけに、いまは財産や所有物がなくても喜びを感じて生活をしています。
辛さや苦しみは私に必要でないものを教えてくれたように思います。
不要な物、プライド、良くない感情を捨てることで見えてきたことがあります。
要らないものを手放したおかげで、本当に必要なものだけが残ったのです。
本当に必要なもの、大切なものとは、
自分にとってかけがえのないものを見失わない精神です。
(例えば守るべき家族の笑顔)そして、所有しないことに喜びを感じるということです。
所有するものが多いイコール、自分の価値ではありません。
毎日同じ格好―。それは恥ずべきことでもありません。
今となっては、毎日違う格好をしなければならないと必死だったアパレル店員時代のファッションより、今の自分のファッションのほうが自信もって好きと言えます。
恥ずかしながら以前の私は、所有欲がとても高かったのです。
物が多いと裕福
高級なものが買えないと不幸
毎日キラキラしたSNSをしている人がうらやましい
しかし、そういう感情は、とうになくなりました。本当に大切なものを見失わない精神があるからです。
さらに親として子供を育てる経験から得た知識が、視野を広くしてくれたかもしれません。
いま世界に目を向けたら、ちっぽけでどうでもいい事だと思うのです。
9歳の息子(※2022年現在)がSDGsに興味を持ち、「将来、環境を守りたいんだ」と純粋に言っている姿を見ました。
息子がお年玉で買ったSDGsの本を家族みんなで読んでいます。
いま世界の中で、飢餓や貧困、不平等が存在し、1日生き抜くのも不安でいっぱいな人々がいます。いよいよ環境の問題も目を背けてはいられない状況になっています。
世界にはもっと目を向けるべき問題がたくさんあるということ。これに気が付かせてもらいました。
私はこれまでの苦労を本当に感謝します。
なぜなら、この先何が起きようと諦めない精神を持っているという自信だけで生きることにまったく不安がないからです。
無の美しさを伝えたい
このように身軽な私が今できることは、ファッションを通じて無の美しさを伝えること—。
このnoteの中でもミニマリスト的視点で、おしゃれについてを発信していますが、私の視点はちょっと変わっているかもしれません。
おしゃれとは、自分を着飾ることが大切なのではなく、自分の人生と同じものなのだ、という意識が大切だと思うのです。
自分の好きなことをあきらめずにやり続けるために、
自分がどうあるべきか
どんな目標をもって生きるのか
このような指針をもつことが大切であり、おしゃれ(というより見た目)は二の次で良いと考えています。
あなたが本当に重要だと思うことはなんでしょうか?
魂を持って心の声に背くことなく、生きていくために。
なにか共感を持ってくれることがあれば幸いです。