ファッション・イン・ジャパンを見てきた③
理系ファッションアドバイザーの Kaori です。東京の国立新美術館で開催中の1945-2020の日本のファッションの遍歴を追う展示会。その感想③です。
前回は、既製服が登場した時代の話をしました。誰かが創ったものを着る場合、そこにどんな意図が含まれていて、自分は何を選択するのかが大事だ、と書きました。
今回のテーマは「流行の発信源はどこ?」という話です。誰かが創造した世界観をそのまま使うだけなのか、自らが作り出すのか、という違いがあります。
良くも悪くも、ファッションには流行があります。そして、その発信源はどこなのか?という議論です。
デザイナーズブランドの欠点
既成服が登場した時代、服は「作るもの」から「買うもの」に変わったのが1960年代。それ以降は、どこぞのデザイナーが作った服を着る様に変わりました。しかし、それには実は、大きな欠点がありました。ハイブランドであればあるほど、目立ってしまう欠点です。
マネキンやモデルが着てるのは素敵なのに、試着したら残念だった・・・・
皆様、こんな経験はないでしょうか。
デザイナーは、ファッションモデルに着せた時に一番美しく見えるシルエットやデザインを追求します。モデルとは、一般人とはかけ離れた体型をしている。モデルに比べたら、誰でも短足で顔デカだ。
一般人が、モデルが着て美しく見える服を身にまとう。それはデザインをダウングレードしたことに他ならないのです。
有名なセレブが着ているから、自分も〇〇というブランドを着たい。
デザイナーや企業主導の流行とは、実は一般人には合わないことも多い。それに、お金がない若者はハイブランド品なんて手が出せない。
デザイナー主導のファッションに自分を合わせるのではない。自分に似合うものを探そう!と広がっていったのがストリートファッションだそうです。
自らのスタイルを探すストリートファッション
このファッション・イン・ジャパンの音声ガイドや動画にて、数々のデザイナーの話を聞きました。その中の一人はストリートファッションが大好きだそうで。
デザイナー作品に、無理に自分を合わせるのではない。自らのスタイルを見つける・作るという所がとても魅力的だとか。若い世代がこれを始めたのは、「ハイブランドを買うお金がないから」という理由だけではないと思います。ここからは私の推測です。
世の中に流行っていたパンクやヒップホップ。それを体現するような服は、デザイナー主導では出てこなかった。だから、自分たちで編み出したのではないだろうか。
何も考えずに、上の世代のマネをして、上の世代の言う事を聞いていく。学校に居る間はこれが評価されるのかもしれないけど、そんなのやっぱりつまらない。その反抗心や自己アイデンティティ確立の通過点として、ストリートファッションを通ったのではないだろうか。
自らのスタイルは、メディアにはない
ハイブランドやメディア主導で与えられたファッションスタイルだけを着ていても、自分の本質とは全く向き合えない。人が考えてくれた物に乗っかっているだけなのだ。
かと言って、服を作らなければいけない、という訳でもない。ちょっとした工夫をすることで十分に創造的になる。
科学で言えば、過去に実績がある研究や実験だけをしていても新発見はありえない。けれど、同じ実験を違う条件下で行うことは「新発見」につながります。
私は大学院生時代に、オゾン破壊の化学反応について研究していました。同じ化学式についての既存の研究は沢山ありましたが、特定の方法(閃光光分解法)を使った実験は世界初だったのです。
※もし、化学式や研究に興味がある方はこちらをご覧ください↓
私が「理系ファッションアドバイザー」を名乗る原点は、ここにあります。元は実験室に籠もってこんな研究をしていました。
唯一無二のファッションを生み出す方法
唯一無二、オリジナル。そういうものを生み出すのに、難しいことを考える必要は実はないです。上述のとおり、科学研究でもそれは同じ。少し視点を変える、方法を変える。それだけで、新事実になるのです。
ファッションも同じ。ちょっとした工夫を加えるだけで、少し組み合わせを変えるだけで、世界初、世界で唯一のものになる。
どの時代に生きても、どの国に居ても、貴方という存在は唯一無二の存在。
もちろん、ファッション誌を見てもいい。Instagramを見てもいい。そこに貴方だけの正解はないけれど、それにつながるヒントが沢山あります。
私が提供しているトータルファッション診断は、完全にカスタムメイド。人ぞれそれ、異なるアドバイスをしています。似合う色も割合も、シルエットも何もかも、一人ずつ違う。
その一つ一つを重ね合わせて行くと、お客様の性格なんかも見えて来るのが、実はとても楽しいです。
感想④では、社会と個人について書いていきます。