私は強揉み戦争には参加しませんw

先日、縁があって元有名プロスポーツ選手のマッサージをしました。今回はその時に思ったことを綴っていきます。

その方とは過去に数回会ったりしたことがある仲で、これから日本でやっていくにあたって私のマッサージを受けてもらい感想などを聞きたかったので、とてもお忙しい中わざわざ来てくれました。

ところでみなさんは「スポーツマッサージ」と聞いて何を連想しますか?

おそらく同業者(鍼灸マッサージ師)であれば、スポーツ外傷の治療、もしくはコンディショニングのためのマッサージと言うかと思います。私が長年住んでいたイギリスだとスポーツマッサージといえば、撫でさするような欧米式のオイルマッサージとは対照的に「強く擦り上げるマッサージ」のことを皆が連想します(ディープティッシューマッサージも同じく強いマッサージですが、スポーツマッサージはそれをスポーツ選手のコンディショニング、治療のために行うという感じです)。日本でもスポーツマッサージというとほぼほぼ強揉みではないでしょうか?


その元有名スポーツ選手も現役時代から多くのマッサージを受けてきており、もちろん「超強揉み」慣れしています。それを予め知っていたので私が昔やっていた「筋肉の凝りを押しつぶす」ようなマッサージ(超強揉み)も少し(昔ほど無茶苦茶押し込んではいないですが)やってみて強さ加減を聞くと

「大丈夫です。
いつもはもっと強いマッサージを受け慣れているので・・・」

と言われました(( _ _ ))..zzzZZ

このブログでも何度も書いてきたように、手やマッサージ器具などで緊張で縮んだ筋肉を「物理的に」伸ばすことは不可能です(前回のブログでも紹介)。

またこれも過去のブログで紹介していますが(有料読者以外の方々はggrks ! 笑)、凝り感や筋肉の硬さは感覚です(リンク)決してクライアント本人の凝り感や硬さは実際の筋肉の緊張度や硬さとは比例しません。ですので、クライアントが硬い、凝っていると感じている部位を手や鍼やマッサージ器具でほぐそうとする行為は道理が通りません。

そして前回のブログでも紹介したように、100歩譲って、1000歩譲って、いや1億歩譲って施術者が触って硬い、凝っていると感じている箇所が筋肉の緊張だとして、それを手やマッサージ器具で「リリース」するには力が到底足りません。

もっと言うと、施術者が触って硬いと感じるところは他の施術者が触って「同じように」硬いと感じるとは限らないし(笑)、その施術者が別の日に触って「前回とどう違うのか」を正確に当てることはいろいろな研究で不可能とされています(笑)。(俗にマッサージパレイドリアと言われています。知らない人は過去ブログを読むか、ggrks!笑)

もっともっと言うと、そういう硬い筋肉(本当は私は多分筋肉が硬いのではなくその浅層ファシアの硬さだと思うのですが、これは不明)「リリース」「ほぐす」「緩ます」といって強烈なマッサージしたり、太い鍼をハリネズミのように刺すやり方をする人たちがこぞっていう謳い文句「好転反応」もとても怪しい理論です(笑)。それには2つ理由があって、「好転反応」の生理学的見解から考えると変なのと、「揉み返し」はおそらくラブドではないか?という意見もあるからです(ラブドを知らない人は過去ブログを読み返そう!有料読者以外はggrks!笑)。

以上のことから、クライアントが凝っている、硬いと感じている部位を、施術者が「ああ〜、凝っていますねぇ〜。だから痛いんでしょうねぇ〜。」とかいって強揉みマッサージをするのは愚の骨頂であることは明らか。

ですが、硬さや凝り感はその感じている本人の「感覚」と上で書きました。ですので、もしクライアント本人が強いマッサージで痛くされると「ほぐれる」と思うのであれば、実際は決してその硬いと感じる部位がリリースされなくても(ほぐれなくても)頭の中で、「楽になった〜」「緩んだ〜」と感じているのであれば、強揉みマッサージも頭ごなしで否定はできないとも言えます。

しかし解剖学を勉強している人であれば、強揉みマッサージ、もっというと太い鍼を大量に刺す手法は何かしらの皮下の組織にダメージを与えていることは十分に想定できますし、 中長期的な強いマッサージは皮下の神経血管に何かしらの悪影響もあるかもしれないし、何よりクライアント本人がもっともっと!と思い始めどんどん強いマッサージに依存していき、施術者側も指を使うと痛いから肘や器具でもっと押し込み・・・というドツボにはまります。

ただ私の今住んでいる某所にはスポーツ選手を多く治療する「超強揉み系マッサージグループと太い鍼を大量に刺すグループが幅を利かせており、実際に私の知っているプロスポーツ選手たちもそこに通っている人も多くいます。私もそこに負けないように昔取った杵柄で超強揉みをやっていくべきなのかというジレンマがあったりもします。

ですが、私はやっぱり解剖学、生理学、痛みの科学を日本人治療家の中で一番勉強してきたと自負している以上、私がここ数年行なってきたファシアの層を意識した一番敏感な層に指を当ててクライアントの「そこ!そこ!」感がでるようなちょうどいい具合の気持ちよさをだす独自の手法(ファシアツとして別ブログで紹介しています)以上の強揉みマッサージはこれからもしないですし、有名スポーツ選手に気に入ってもらおうと自分の考えを曲げてまで強揉みはいたしません。他のスポーツマッサージの方々とも競争もいたしません。

私は強揉み戦争には参加しません。

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