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「グラスファーミングスクール」の使命

創地農業21が主催する、グラスファーミングスクール。
日本にいながらニュージーランド(以下、NZ)の集約型管理放牧を本格的に学べる唯一の機会として始まったものです。


ここで第一に目指すのは、放牧の知識・技術に加え、商品化、さらには経営全般に精通する、全方位型の“強い”酪農・畜産生産者の育成です。

早いもので、2022年春現在で42回を迎えているスクールですが、参加者の方々の農業に対する想いはいつの年も熱く、主催側も背筋の伸びる思いです。

私たちがスクールを開校するにあたり、いくつか留意しているポイントがありますので、軽くご紹介させてください。

 

1.ハードルは高く

1996年当時、土づくりや放牧の技術を集中して学べる場所は、日本ではこのスクールの他にありませんでした。
つまり、かなり先進的な内容を取り扱ったものとなっており、参加する側にも相当の意欲が必要であったわけです。

ですから、私たちは参加者を募るにあたり、あえて高いハードルを設けるようにしました。

例えば、年3回行われるスクールに、必ず通しで参加すること(1回につき2泊3日ないし3泊4日)。
これは、通年で参加することで初めて、体系的な学びを得ることができるからです。

また、参加にあたって、決して安くはない費用を払っていただくこと。
これは、もしタダにしてしまうと、せっかくのスクールの価値が下がってしまうと考えたからです。
お呼びする講師はみな、その分野の第一人者とも言える権威の方々ばかり。敬意を払って臨んでほしいという意図もあります。

参加人数も、第一回では限定30名としました。
このくらいの人数であれば、参加者が気兼ねなく質問でき、活発な議論の場とすることができると考えたからです。

特に生産者の方々は、天候や動物たちの調子次第でその日の仕事量が変化するため、連日家を空ける予定を組むというのはかなり難しいものです。
ですから、実際に参加されるのは、その困難をも押し切るほど前のめりな姿勢を持っている方ばかりです。

そんな未来の農業リーダーたちの姿を、とても頼もしく思います。

 

2.夜なべ談義の充実

実は、グラスファーミングスクールの枠組みは、商業界のゼミナールを参考にしてつくられています。

創地農業21の前代表である庄司社長は、以前、実家の旅館を手伝い始めたものの何をすればいいかがわからなかった頃に、ゼミナールに参加して大変救われたというご経験があるそうです。
その際に最も大きかったのは、周りの先輩方が自分の悩みを真摯に聞き、これからどうすればいいかを夜通しで一緒に考えてくださったことだと。
そして、その日にできた人と人の繋がりが、今の経営にも生きているのだと。そうおっしゃっていました。

この経験を基にして、グラスファーミングスクールには「夜なべ談義」の時間が設けられました。

主催側からは、議論を活発にするため、
「先輩は後輩に親身になってあげてほしい。自分が得たものを後進にどんどん還元してほしい」ということを皆さんにお願いしています。

その甲斐もあってか夜なべ談義は大変好評で、参加者30名のほとんどが夜中の2時、3時まで話し続け、そのうち3分の1ほどはついに朝まで話し込むほどになっていました。

翌日の講習に支障が出るようになってきたので、いつの年からか、時間に制限をかけざるを得なくなりましたが……例年、それほどの盛り上がりです。

 

3.学ぶ内容は柔軟に

グラスファーミングスクールでは当初、NZコンサルタント、酪農家、農業団体職員、行政の担当者など各界の専門家をお呼びして、農業の技術や知識に関わる講義を展開していました。

しかし2011年からはさらに内容をパワーアップさせ、夏には「土・草・牛」を学べる従来に近いコース、そして冬には会計を基礎から学べる経営コースをそれぞれ開講するようにしました。
農業の課題をより多角的に捉えられるようにするための刷新です。

それまでにも、スクールでは回ごとに様々な試みを行ってきました。

BSEが流行したころには、イギリスからその分野に詳しい方をお呼びしたり。
加工品のプロに、素材にこだわったケーキを作っていただいたり。
一流ホテルの最上階で、シェフに調理をお願いしたこともありました。

基本的に毎回、その年に合わせて、業界で有名な方、話題になっている方などを講師としてお呼びするようにしています。

グラスファーミングスクールは毎年欠かさず行われてきましたが、その形は常に変わり続けています。
次のスクールでも、リモートのより良い活用法の導入など、進化が求められているところです。

 


講師の方も参加者の方も、まずはグラスファーミングスクールの理念を理解し、共感していただいた上でご参加いただくようにしています。
これが一番大切なことです。
もしも黒字を目指したビジネス目的のものだったなら、スクールはこんなに長くは続かなかったでしょう。協賛企業についても、かなり慎重に選ばせていただいています。

ある人にとっては、同じゴールを見据える同志を増やす場。ある人にとっては、生産者と知識人を結ぶチャンネル。ある人にとっては、日頃の課題を解決するための糸口。
スクールが持つ意義は様々ですが、みな日本の農業の未来を真剣に考えているという点では、きちんと共通しています。

 

そんなグラスファーミングスクールですが、今年度は「自給飼料」をテーマに、滝上町にて9月7日から2泊3日で開催予定です。

志のある方々の、幅広いご参加をお待ちしています。


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