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「創地農業21」誕生秘話

私が代表を務める、「創地農業21」という団体があります。

「地球環境に負荷をかけず生活(経営)として成り立つ農業を世の中に広める」ことを使命とし、「グラスファーミングスクール」を主とした取り組みを行っています。


創地農業21は1995年に発足、1996年より活動を開始しました。
発足当時、私は副会長であり、会長を務めていたのはハンバーグレストラン「びっくりドンキー」の親会社である「株式会社アレフ」の創業者、
故・庄司昭夫氏でした。


庄司社長は非常に勉強熱心な方でした。
自社でのアレフ牧場(現・牧家)を立ち上げるにあたって、世界中の農場へと視察に周ったそうです。
そしてありがたいことに、その視察の最後に、以前から縁のあった私のところへ話を聞きに来てくれたのです。

私は、自分が会社を興した経緯から始まり、現状の酪農畜産の問題点、環境問題、食品の安全問題、詳しい放牧ノウハウに至るまで、農業に関して私が知っていることの全てを改めてきちんとご説明しました。


すると庄司社長は、

「目からうろこだ」「そんなことは全くわかっていなかった」「最後にここへ来てよかった」

と、しきりに感心してくださったのを覚えています。

 

庄司社長が携わっていたいわゆる外食産業は、20兆円産業と言われています。
そのうち、仕入れ関係で動いている金額は約4割。そのおよそ半分が、輸入製品の購入のために使われているものです。約4兆円分ですね。

それに対して、北海道の農業は、約1兆円産業です。

ということは、この差である約3兆円は、北海道農業の伸びしろであると言えます。
外食産業が、もしも商品のすべてを北海道の生産品によってまかなおうとすれば、あっという間に3兆円分の市場が国内に生まれるということなのですから。

つまり、外食産業と農業が本気で手を結べば、かなりの規模での成長が双方に見込まれるということになります。


また、放牧で日本の農業を変革するために私はファームエイジを立ち上げたのですが、それまでは点で成功する生産者はいても、面で成功する例をなかなか生むことができませんでした。
農業界は古くからすでに体制が出来上がっており、それを内側から、つまり生産者の側から変えるのは至難の業であったわけです。

ならば、外から。
消費者の方々に放牧のよさを知っていただいて、放牧から生まれる製品の需要がもっと高まれば、自然と放牧を取り入れる生産者も増えていくのではないか。そう考えました。

つまり、外食の立場から、安全で環境負荷の少ない生産品の大切さを、直接発信できるような牧場づくりを目指してほしい。

それが、私が庄司社長にお伝えした結論でした。

 

「すぐにでも、放牧先進国のニュージーランド(以下、NZ)へ案内してくれないか」と庄司社長は言いました。

実際、一か月ほど後には、もう私たちはNZに降り立っていました。

 

現地では、エリック川辺博士やガビン・シース博士など、プロの酪農コンサルタントの方を何名か紹介いたしました。
当時の日本には集約放牧の知識に触れられる機会はほとんどありませんでしたから、NZのコンサルタントの方々のお話は極めて貴重です。

すると庄司社長は、
私たちだけが話を聞くのではもったいない。日本に彼らを講師としてお招きして、日本の農業の未来を考えている人たちを参加者として広く集め、みんなで勉強できる場をつくろう」とおっしゃったのです。

この「知識や機会はみんなで共有する」「同じ志の仲間を増やす」という庄司社長の分け隔てない姿勢を、私は心から尊敬しています。

 

こうして、本格的な放牧の勉強会「グラスファーミングスクール」は始動することとなりました。
同時に、それを主催する創地農業21の組織化も行われました。

 

グラスファーミングスクールの詳しい内容や、そこに私たちが込めた想いについては、また次回に詳しくお話したいと思います。


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