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鏡を知らない人々が巻き起こす滑稽昔噺
大判ちりめん本 フローレンツ『三つの鏡像』明治33年 東京刊 独文日本昔噺
Florenz, Karl, Die Drei Spiegelbilder. (Japanische Maerchen). Tokyo, T. Hasegawa, 1900<R17-66>
First German edition. 8vo, [22]pp, original crepe paper
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「三つの顔」は、長谷川弘文社発行のちりめん本日本昔噺シリーズ20編(21冊)に続く、続「日本昔噺」の一冊として刊行され、英語版(1894年)、ドイツ語版(1900年)、フランス語版(1934年)が発行されました。
仲が良くて外見がそっくりの父と息子、その息子の妻、夫婦の仲裁に入った尼、鏡を知らない彼らが鏡に映った自分の像に対する誤解から巻き起こされる滑稽話です。
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最初に発行された英語版では、ちりめん本の翻訳を多く手掛けたジェイムズ夫人が「訳者」ではなく、「著者」とされていたこともあって、彼女のオリジナル創作昔話と考えられていました。ただ、最近の研究では、ジェイムズ夫人自身が訳出を手掛けた同じく鏡をテーマとしたちりめん本「松山鏡」や滑稽昔噺の「尼裁判」を原作にした作品ではないかと考えられています。
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本品1900年に刊行されたドイツ語版は、お雇い外国人で日本学者でもあったカール・フローレンツが手がけました。話の筋は変わりませんが、結末部分について、英語版では息子が仲裁した尼の判断を必ずしも納得できていない煮え切らない終わり方をしているのに対して、ドイツ語版では最後に「しかしながら家族内での平和が大事だ」”aber der liebe Haufried“という文言でもって、家族愛を重んじて事を収めるという形で物語が完結しています。
参考文献:
石澤小枝子『ちりめん本のすべて』三弥井書店、2004年
柗村裕子「Japanesiska studie och skizzerにおける日本昔話の紹介について “Tre spegelbilder”とちりめん本Three Reflectionsとの比較を中心に」、『聖徳大学児童学研究所紀要 』22、2020年
京都外国語大学附属図書館編『文明開化期のちりめん本と浮世絵』、京都、2007年
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