第三共和政下での子どもたちへのナポレオン神話の浸透
ヨブ 『ちいさい子たちのための大ナポレオン』 1893年 パリ刊
Job [de Breville, Jacques Onefroy], Le Grand Napoleon des Petits Enfans. Paris, Plon, 1893 <R19-191>
<First edition, oblong 8vo, 48 pp, original green cloth binding, title and illustration on front cover, red edges, joint loose, signed by former owner on end paper>
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本書はフランス第三共和政期に発行された、ナポレオン1世の生涯を子供向けにまとめた絵本です。挿絵はイラストレーターで風刺画家であったジャック・アンフリ・ド・ブレヴィル(Jacques Onfroy de Bréville: 名前の頭文字をとったペンネームでJob)、彼は本書のほかにもフランスの歴史的な英雄を扱った愛国的な絵本の挿絵も手掛けていました。
内容としては、コルシカ島での子供時代、フランス陸軍での出世、エジプト遠征でのピラミッドの戦い、ヨーロッパ諸国の制圧から皇帝戴冠、ロシア遠征、ワーテルローの戦いからセントヘレナへの幽閉とその死といった、現代でもよく知られるナポレオンの経歴を時系列的にたどる内容となっています。
ナポレオンの誕生をコルシカ島に朝日が昇るシーンで再現し、その死をセントヘレナでの日没で表現、その後に天に昇るナポレオンの復活を思わせるシーンとナポレオン伝説を崇拝の対象まで高めようという意思が見えます。
独仏戦争でナポレオン3世が捕虜になるという大敗北を喫し、ナポレオン伝説が地に落ちるとともに始まった第三共和政。体制の安定と共にナポレオンもフランス史の中の歴史的人物の一人と位置付けられ、子どもへの愛国教育へ利用された当時の第三共和政下の歴史観の変遷を見ることができます。
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