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極東書店ニュースNo.725 日本人著者・日本関連テーマ 注目タイトル

極東書店ニュースONLINE、2024年6月3日に新着書誌情報を追加いたしました(No.725)。その中から日本人著者・日本関連テーマの注目タイトルをご紹介いたします。

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岡部光明著 人間性のための経済学-ウェルビーイング、コミュニティ、実践哲学の統合

Okabe, Mitsuaki, Economics for Humanity: Integrating Well-being, Community, and Practical Philosophy. (Routledge Frontiers of Political Economy) 206 pp. 2024 (Routledge, UK) <725-177>

主流派の経済学における人間=ホモ・エコノミクスとは、物質的な充足だけに関心を示し、自分の利益のためだけに行動する「理論的な」人間像のことです。

しかし、本書ではこれをより現実的で多面的な人間の動機に置き換えることで、新鮮かつ「説得力のある」人間社会の姿を提供しようと試みています。

具体的には、ウェルビーイングの追求、人的ネットワークの形成、能力の可能性の実現といった人間的な側面を取り上げており、人間の動機と社会をよりよく理解しようとするならば、従来の2セクター(市場-政府)の社会モデルを、より一般的で理論的に優れた社会モデル、市場-政府-非営利セクターからなる「3セクターモデル」に置き換える必要があることを示しているのです。


村中あいみ他編 高齢化社会における移民と生活の質-移民にとってどんなに日本とドイツが魅力的か?

Wang, Aeneas Zi / Muranaka, Aimi / Coulmas, Florian (eds.), Immigration and Quality of Life in Ageing Societies: How Attractive for Migrants are Japan and Germany? (Routledge Contemporary Japan Series) 240 pp. 2024 (Routledge, UK) <725-306>

外国人従業員のいないコンビニエンスストアがほとんどない日本、外国人介護スタッフがいなければ老人ホームが機能しなくなってしまうドイツ…

本書では、日本とドイツの状況を詳細に考察しながら、教育、訓練、労働市場への参加などさまざまな側面から両国への移民を分析し、これらの国への移住や居住を価値あるものにするための国家や政策立案者側の政策や行動を考察しています。

日本とドイツにおける移民研究、第一線の研究者たちが一堂に会した本書は、日本とドイツ、そして広くヨーロッパとアジアにおける移民問題に関心を持つ学生や研究者にとって貴重な資料となることでしょう。


城所哲夫、瀬田史彦他編 新自由主義政策と不平等-アジアの都市地域からの証拠

Biswas, Arindam / Kidokoro, Tetsuo / Seta, Fumihiko (eds.), Neoliberal Policies and Inequality: Evidence from Asian City Regions. 230 pp. 2024 (Routledge, UK) <725-610>

本書は日本やインド、韓国、台湾、タイといったアジアの都市を例に、都市部及び地域の不平等に関するディスコースを考察しています。

アジア都市圏における新自由主義政策の広範な適用を分析し、不平等の拡大への影響を明らかにするため、本書は、分析、ナラティブやシミュレーションを駆使して、グローバリゼーションと新自由主義政策の影響を受ける都市地域にとっての機会と脅威を解き明かしています。

都市経済学、都市・地域計画、都市研究、都市社会学、政治経済学、公共政策、ガバナンス、開発研究、アジア経済などの学者や研究者にとって必読の書。


R.D.エルドリッヂ他編 1960年代における日本-転換点となる10年間

Eldridge, Robert D. / Morgan, Jason M. (eds.), Japan in the 1960s: Ten Years of Turning Points. (Inside East Asia) 232 pp. 2024 (Routledge, UK) <725-621>

現代日本史研究で著名なエルドリッヂらによる、日本の1960年代を考察した新刊。

本書は、1960年代をそれ自体の歴史的主題としてとらえた初めての書であり、この時期の東アジアに根ざした特殊性と内的複雑性が、この10年間を形成する上で東アジア人がいかにダイナミックな主体であったかを示していると論じています。

日本人研究者も多数寄稿しています。現代日本史・社会史研究として、研究者のみならずすべての図書館にお勧めいたします。


日本の妖怪 第2版

Foster, Michael Dylan, The Book of Yokai: Mysterious Creatures of Japanese Folklore. Expanded 2nd ed. 472 pp. 2024 (U. California Pr., US) <725-622>

初版は2015年、U. California Press の新刊である本書は、見事なカラー画像の妖怪ギャラリーや新たに追加された50点の挿絵を使って、日本の妖怪を紹介しています。

今日、日本初のアニメ、マンガ、映画、ビデオゲームなどで人気の妖怪の多くは、日本の地域に根差した伝説や民話、怪談に由来しています。(現在ロンドンで大評判の舞台「千と千尋の神隠し」Sprited Awayにも、たくさんの妖怪たちがでてきますね)

「妖怪の本」では、人々がどのように民間伝承を創作し、伝え、収集しているのか、また、自分たちを取り巻く世界の謎をどのように意味づけているのかについて、考察をいざなっています。


宮澤安紀、山田慎也他著 日本における死と葬儀の実際

Gould, Hannah / Miyazawa, Aki / Yamada, Shinya, Death and Funeral Practices in Japan. (Routledge International Focus on Death and Funeral Practices) 152 pp. 2024 (Routledge, UK) <725-623>

超高齢化社会、世俗化、経済の停滞によって不安定な未来に向かう日本では、かつて死と葬送を組織していた社会宗教的構造がますます不安定になっており、その代わりに、死者との別れ、火葬の扱い、祖先への追悼のための新しい技術や儀式が生まれ始めています。

本書は、日本の葬儀、墓地、供養の分野における著者の広範なリサーチと、現在英語では入手できない最新の日本のデータソースや学術出版物が豊富に含まれております。

本書は、大学院生や研究者だけでなく、国際的な政策立案者や死生学の実務家にとっても、文脈に沿った情報を提供する1冊です。


日本の近代性再考-物語と翻訳

Steele, M. William, Rethinking Japan's Modernity: Stories and Translations. (Harvard East Asian Monographs) 352 pp. 2024 (Harvard Univ. Asia Center, US) <725-628>

歴史とは唯一の統一された物語ではなく、数多くの物語が同時に語られたものです。

本書は、1853年のアメリカ人提督マシュー・ペリーの来日を皮切りに、「その時」の出来事を生きた人々の体験と、振り返った人々の考察の両方に焦点を当てています

大衆紙、風刺漫画、浮世絵、その他の錦絵、絵葉書、写真などの視覚的資料から導き出されているのは、近代日本の展開を体験した人々の多様な、そして時には相反する認識です。

日本の西洋化の先駆者である福沢諭吉による2編と、福沢が西洋の学問を提唱した記念碑的著作をパロディ化した男鹿萬亭による1編の新訳3編も収録されており、これらの物語やその他の物語は、日本人の近代観が時代とともにどのように変化していったかを示しています。

各章の冒頭には、取り上げたテーマや歴史学的アプローチについての短い紹介があり、各章を独立させるだけでなく、日本の過去、現在、未来のつながりを理解するための情報を提供し、私たちに挑戦するという本書の全体的な目標も支えています。


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