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「文明」の成果を誇示したセントルイス万博、日本初のオリンピック参加者?
『セントルイス万国博覧会での名所、風景、驚異:万博公式本』 セントルイス刊 1904年
Sights, Scenes and Wonders at the World’s Fair, Official Book of Views of the Louisiana Purchase Exposition, St. Louis, 1904 <R24-59>
12.5x17.5cm, no pagination, original staple bound, title embossed on front cover, joint loose
Sold/販売済み
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本書はアメリカ合衆国のルイジアナ買収100周年を記念して開催された万博の公式パンフレットです。日本も日露戦争が差し迫っていた状況でしたが、万博に参加を表明し、この万博を通して日本が西洋に並ぶ文明国の一員であることをアピールしようとしました。
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この万博ではテーマとしては「人類の進歩」を掲げていました。しかし、実際にこのテーマが意味したことは、当時の「進歩的な」欧米白人優位の市民社会に対する、「未開な」社会を対比するという帝国主義的な意図がありました。
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その目的のため、ネイティブアメリカン、中央アフリカのピグミー、日本からは人類学者で「お札博士」と呼ばれたフレデリックスタールにより選ばれたアイヌなどの少数民族が万博会場に集められ、その生活を見せる差別的な「人類学展示」が行われました。
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あわせて博覧会組織委員会とアメリカオリンピック委員会がこの「人類学展示」に集められた人々を参加させた「人類学オリンピック」を開催し、アイヌからも男性4人が参加することになりました。当時のアイヌの人たちは日本国籍者だったので、彼らこそが金栗四三と三島弥彦に先立つ日本のオリンピック参加者第一号と言える存在でしたが、現在ではIOCがこのイベントを差別的なものとしてオリンピックとは無縁としているため、非公式扱いとなっています。
参考文献:真田久『加納治五郎 オリンピックを日本に呼んだ国際人』、2019年、潮出版社
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