【ss】最初で最後の嘘
もしも俺が変わらないことを求めたら
君は変わらずにいてくれたの?
「もう一緒にはいられない…」
そう君に告げられたのは数十分前。
納得なんて出来るはずもなくて。
お互い我儘に一方的な思いをぶつけ合うような、話し合いとも言えない時間が続いている。
「別れるのは…無理」
「どうしてよ…」
「俺にはお前しかいないから」
「そんなの私が同じ気持ちじゃなくなった時点で成立しないじゃない」
その通りだ。
このまま付き合い続けていたって俺への愛情を失くした君と、今まで通りの日々を送れる訳が無い事くらい嫌ってほどに理解している。
それでも…
「じゃあ俺の想いはどうなるんだよ」
「それは……」
「勝手に置いていくなよ…!
俺はずっとお前しか見てなくて、今までもこれからもお前と過ごしていく毎日しか想像できないくらいなのに。
なんでお前はどんどん俺の知らないお前になってっちゃうんだよ!」
「……ごめん…なさい」
なんか悔しいのか、悲しいのかも分からなくて。
自分の感情さえ理解できないくらいなのに君が困っていることだけは手に取るように分かってしまうから。
こんな風に我儘言ったって君の気持ちがもう戻ってこないことも。
「なんで……」
なんでまだこんなに君のことが好きなんだろう。
どうしたら嫌いになれるの?
こんなに胸が痛いなら大嫌いになれた方がマシじゃないか。
「私なんかより…、もっと素敵な人と幸せになって」
涙声でそんな台詞言うなよ、バカ。
そんなの見つかる訳ねぇだろ。
この返事は結局声にはならずに…。
君をこれ以上泣かせたくなかったから。
「……お前もな」
“ さよなら ”
こんな日が来るなんて想像もしてなかった。
君を繋ぎ止めることも出来ないまま、俺の愛は今この瞬間から永遠に叶わない片思いに変わったんだ。
*end*
(君には嘘吐いたこと一度もなかったのにな…)
お読み頂きありがとうございました。
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