【ss】ご都合主義
「明日さ、暇?」
「なんで?」
「なんでとかじゃなくて、
暇かどうか聞いてんねんけど」
「じゃあ暇じゃない」
「じゃあってなんやねん!
絶対暇やん。暇やろ?」
自分の都合でグイグイ話を進める彼に今までも何度となく振り回されているのに、どうしてか憎めなくて。
「もう…何なんよ」
「話聞いてほしいねん」
「また?」
「お前に話したら楽になるっていうかさー、
…人助けやと思って頼むわ!」
「仕方ないなー」
「やったー!!」
この無邪気な笑顔に翻弄されて、
また甘やかしてしまった。
あとで苦しくなるのは私なのに。
───── 翌日。
「やっぱり俺、悪ないよな?」
「んー。相手の言い分を聞いてないから断言は出来ないけど、今聞いた感じやと悪くないと思う」
「やっぱそうやんな!
いやー、お前に聞いてもらって良かったわ」
分かってたのにな。
今回もまたきっと
彼女絡みの相談だろうなって事くらい。
「……じゃあ、もう帰るね」
「え、もう帰るん?」
「だってほらスッキリしたみたいやし、私はもうお役御免でしょ?」
そう言い終わるが早いか、
彼は帰ろうとした私の手を強く掴んだ。
「そういう言い方すんなよ」
「だって…」
「確かに相談ばっかして悪いとは思ってるけど…、お前やから聞いてほしいねん。
いっつも真剣に俺の話聞いてくれてさ、俺以上に俺の事分かってんちゃうかってくらい的確な事言えんのマジでお前だけやもん」
「それは……」
「ん?」
“ それはアンタが好きやからやん ”
そう叫びたくなる気持ちを押し殺したら、
なんか涙が止まらなくなって。
「ちょっ、どうしてん!?
なんで泣くん?ごめんって、よしよし」
オロオロしながら泣き出した私を抱き締め、
小さい子をあやすみたいに頭を撫でてくれた。
「………アホ」
「ごめんごめん!
俺なんかお前が嫌がるような事言うた?」
「教えたらへん!」
「なんでやねん」
情けない表情で私の顔色を伺う彼が新鮮で。
彼女さんには悪いけど、少しだけ私が見た事のない彼を見せてもらいたくなった。
「デートして」
「……えっ?」
「いつも相談聞いてあげてるお礼に、1日くらい私にも付き合ってよ」
「あ、ああ…!そういう意味な!
なんや意味深な言い方すんなよ!デートとか言うからビックリするやん」
意味深でも何でもない。
私にとっては下心ありまくりのデートそのものを希望してるって事は今はまだ内緒。
「しっかり1日空けてくれる?」
「もちろんや!」
「やった!」
いつまでも振り回されてばかりじゃ割に合わない。
これからは振り回されてもらおうじゃない。
*end*
(無邪気な笑顔の彼に宣戦布告。
私の想いにそろそろ気付いてもらわなきゃ。)
関西弁男子第二弾。
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