【ss】その笑顔が眩しくて


「久しぶり!」

背後からかけられた声に
思わず呼吸を忘れてしまいそうになるくらい驚いた。

君の声だって
すぐに分かったから。


「…久しぶりだね」


振り返った瞬間、
私はどんな顔してたんだろう。


君は相変わらず爽やかで、
眩しいくらいの笑顔だったのに。


「クラス変わるとこうも合わへんモンなんやなー。
前はしょっちゅう帰り道でバッタリ会ってたのに」


そう屈託のない笑顔で話す君に、少し心が痛んだ。


だって…、
同じクラスの時は君が帰るのを見計らって、タイミング合わせてたんだよ。

数分遅れで学校を出て、
わざと違う道を選んで、
いいタイミングで君が帰ってる道と合流する。

そうすればごく自然に、
私がひょっこり曲がってきた後ろ姿を
君が見付けてくれるから。


「きっと終礼がバラバラだからじゃないかな?」

「あー、そっか!」


それもあるけど、それだけじゃない。

君が帰るタイミングが
分からなくなっちゃったからなんだよ。


……そんなこと言えるはずもなくて。


ただ久しぶりに並んで歩く君を見つめてた。


「なに?そんな見つめんといてや。
なんか恥ずいわ」


そう言って笑う君に、
赤くなったのは私の方で。


「なっ…、見つめてないし!」


そう言うのが精一杯で、恥ずかしさのあまりそっぽを向いた。


「ちょ…、冗談やん!そんなムキにならんでもー」

「うるさい!」

「うるさいのは生まれつきやからなー」


どうしよう。

久しぶり過ぎてドキドキするよ。


こうして並ぶのが半年振りだからかな?


少し背が伸びた君との距離感がうまく掴めない。


嬉しいのに素直になれなくて、
恥ずかしさを誤魔化したくてツンケンしちゃうんだ。


「なあ…、」

「……なに?」

「これからもたまにこうやって一緒に帰れたらええのにな」

「………へっ?」


あまりにも予想外の言葉に変な情けない声が出た。


「なんやねん、今の返事はー」


そう言いながらケラケラ笑ってる君とは正反対に、返事もリアクションすら返せないほど頭が真っ白になる。


「……嫌やった?」


そんな真面目な顔しないでよ。

期待したくなる。


「嫌な訳ないよ」

「ほんま?良かったー!
これから一緒に帰りたい時はクラスまで迎えに行くな?」


「うん」



……ダメだ。

今の私には、その言葉の真意を聞き出す勇気はない。


ただあまりにも幸せな展開過ぎて。


クラスが離れて、半年話すこともなかった君が
今こうして隣で大好きな笑顔を見せてくれている。

それだけでこんなに嬉しいのに、
きっと私は今、
数分前より欲張りになってしまった。


*end*



(その笑顔を独り占めしたくなるよ。)
お読み頂きありがとうございました。
今回noteに色々書き始めて初の関西弁男子を登場させてみましたが、いかがでしたでしょうか。
私自身、登場人物の方言は結構好きだったりするので、不評でなければ今後もちょこちょこだしたいなー…なんて思っております。


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