【ss】運命の選択


どちらかなんて、選べない。



例えば誘い方ひとつにしても、あまりに正反対過ぎて。

でもそれが飾らないありのままの姿だからこそ、とてつもなく惹かれる瞬間がある。


「今度の土曜にさ、お祭りがあるんだけど…
もし先約とか無ければ一緒にどうかな…って。
迷惑なら全然断ってくれていいんだけど…」

そう言ってお誘いの電話をくれたのは今年知り合ったばかりの一つ年上の優しい人。

いつも自分の事より私の気持ちを最優先に考えてくれてるんだなっていうのが言葉からも行動からも伝わってくるようで。



「あ、そだ。土曜日に祭あんじゃん?
その日絶対空けとけよな。
迎えに来てやっからさ、一緒に行こうぜ」

そう言ったのは腐れ縁を疑うくらい長い付き合いになる同い年の幼馴染み。

どんな時でも自分の意見をしっかり主張出来るタイプだから、何事にもあまり積極的じゃない私をいつも輪の中に引っ張ってくれるような存在。



どちらにも尊敬と感謝の気持ちがあるからこそ、どうして私なんかを好きになってくれたのかはハッキリ言って全く分からない。

…と同時に、選ぶには難し過ぎる問題で。

かと言って、私なんかが断るには失礼すぎる気もして。

どうすればいいのか悩みに悩んだ結果、今の正直な気持ちを二人に伝えることにした。



「どちらかなんて、選べない。」


物凄く我儘を言ってる自分に腹が立つやら情けないやらで、少しでも気を抜くと涙が出てきそうだ。


「ごめんなさい。凄く失礼な答えだって分かってるの。
だから…、出来れば二人の方から私をフッてください」


こんな優柔不断な私に幻滅して
“好きでもなんでもない”って言われるのが
きっと一番しっくりくる終わり方だと思うから。


「そんなこと出来るわけないでしょ?」

「えっ……」

「バカじゃん。なに泣きそうな顔してんだよ」

「だって私…」


「今すぐじゃなくてもいいんだよ。
ゆっくり考えて。
君の心が決まるまで、いつまでだって待ってるから」


「どうせまた一人でアホみたいに悩んでたんだろ。
…ったく、しょうがねぇよなー。
いいよ、ゆっくり好きにさせてくから。
お前はいつもみたいにボケーっと俺だけ見とけばいいんだよ」


私が悩み抜いて出した結論にも、やっぱり二人は正反対の態度で。
だけど全く同じ答えを言い渡した。


“ 待ってる ”と。


私には勿体ないくらい…


こんなにも素敵な二人のどちらかを
いつか私は選べるのだろうか。



*end(?)*



(こんなにも贅沢で苦しい選択肢)
お読み頂きありがとうございました。
もしかすると続きを書くこともあるかも…?

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