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ライラックの花束 #1


茜坂ハーモニーホール


そこは、世界でも指折りの演奏家や有名オーケストラなど選ばれし者だけが公演を許される、いわばクラシックの聖地とも言うべき、国内最高のコンサートホール。




「「「bravo!」」」
パチパチパチ!



その夢の舞台で、総立ちの観客たちからの称賛の嵐を一身に受ける男。

昨年行われた、世界で最も権威あるピアノコンクールの一つ、"ショパン国際ピアノコンクール"で、史上最年少15歳にして、日本人初の優勝を果たし、以降、数々の有名オケと共演するなど、現在、世界最高のピアニストとの呼び声も高い、

『齋藤〇〇』

その人である。



〇〇:本日はお越しいただき、ありがとうございました。
この街に帰って来れたこと、皆様とこうしてお会いできたこと、そしてなにより、こんな素敵な景色を見ることができたことが本当に幸せです。
近く、また皆様とここでお会いできると思います。
またその日まで!


パチパチパチ!


公演が終わり、帰路に着く観客たち。
その中には…



??1:やっぱ生の〇〇君はかっこよかったな〜

??2:ほんとに??1は〇〇さんのこと好きだよね

??1:そ、そんな、好きとかじゃ…ないし…

??2:はいはい。そういうことにしといてあげるw

??1:もうっ…///

??2:それにしても、あの言い方はまたコンサートでもするのかな?

??1:また生で聞けるのかなぁ〜



??3:〇〇さんの演奏やっぱすごかったな〜

??4:ほんとすごかった!

??3:それにしても、??5は大丈夫かな?
大号泣してたけど

??4:どうせ、また拗らせてるだけでしょ?

??3:それだけならいいけど…




〜ハーモニーホール 楽屋〜


楽屋で休む〇〇のもとに、

??:おつかれさん、〇〇

〇〇:あ、奈々未さん
ありがとうございます

奈々未さんと呼ばれたこの人物は、〇〇のマネージャーの橋本奈々未。
〇〇のプロデビュー当時からずっと隣で支えている。

奈々未:お疲れのところ悪いんだけど、件の人たちが来てるみたい
今から大丈夫?

〇〇:全然大丈夫ですよ

奈々未:じゃあ、お連れするね

そういうと奈々未は再度廊下へ戻り、2人の訪問者を連れて戻ってきた。

??:やっほ〜〇〇君!
久しぶり〜

奈々未:あんたは相変わらずだねぇ…

〇〇:えーっと…

奈々未:ほら、昔、飛鳥の伴奏してた生田絵梨花。覚えてない?

覚えていない様子の〇〇に奈々未が耳打ちした

〇〇:あ!その節はお世話になりました。

生田:まさかあの時のシャイボーイが、こんな立派になるとは思ってもなかったけどね

〇〇:それを言われるとなにも…

生田:今日も凄かったじゃん

〇〇:いやいや、まだまだです

生田:またまたー、謙遜しちゃってー笑

奈々未:ゴホンッ… 生ちゃん…

生田:あー、そうそう、こちらが件の小沢先生。

小沢:小沢です。どうぞよろしく。
お疲れのところ悪いね

〇〇:いえ。
こちらこそ、よろしくお願いします。

小沢:あれだけのものを見せられたんだ、楽しみにしているよ

○○:僕も、マエストロとご一緒できるなんて楽しみです

小沢:嬉しいことを言ってくれるじゃないか
それじゃあ早速だけど、色々と話しておきたいことがあるからね





なにやら打ち合わせをする4人
一体何を企んでいるのか





生田:じゃあ、いよいよ明日からだね

〇〇:色々と無理を言ってすいません…

生田:全然いいの、うちのみんなもきっと喜ぶと思うから

〇〇:だといいんですけどね
それでは、明日からよろしくお願いします

生田:よろしく〜
バイバーイ



奈々未:よし、じゃあ明日も早いんだし、私たちもホテル戻ろっか

〇〇:はーい




翌朝


奈々未:おー、似合ってんじゃん。

〇〇:ありがとうございます。

〇〇は学校の制服に身を包んでいた。

奈々未:でもさ、びっくりしたよ。
いきなり〇〇が高校行きたいとか言い出すなんて思ってもなかったから

〇〇:やっぱり、その人たちのことを知らないと、いい演奏なんて出来ませんからね。

奈々未:相変わらずストイックだねぇ

〇〇:それに、あす姉に言われたんです。
ちゃんと青春するんだぞって。

奈々未:そっか、あの子が…

〇〇:例の約束も守らなきゃいけないですし!
なので、しっかりと青春とやらを謳歌してきますよ。

奈々未:わかったよ。
んで、青春を謳歌するのは構わないけど、こっちから連絡したらちゃんと出てよ?

〇〇:わかってますって

奈々未:じゃあ、あとのことは私が手配しといたから
あんたは楽しんできな!

〇〇:何から何までありがとうございます
それじゃ、行ってきますね

奈々未:いってらっしゃい!



私立乃木学院高等部

全校生徒1,000人余のごくごく普通の私立高校なのだが、そこに…




〇〇:失礼します
転校してきた齋藤〇〇です

生田:あ、来たー!やっほー!

〇〇:あ、生田先生

生田:私が担任だからね〜

〇〇:え、そうなんですか

生田:あれ、昨日言わなかったっけ?

〇〇:聞いてないですよ

生田:ま、そういうことだからよろしくね〜
人気者間違いなしだよ〜!

そう言って笑う先生に連れられ、教室へと向かう。

__________

2年1組教室

??1:昨日の〇〇君やっぱりよかったなぁ…

??2:まーだ余韻に浸ってんの?さく

さくら:だって、かっこよかったんだもん…
かっきーも見たでしょ?

遥香:はいはい笑
それより、新年度始まったばっかなのに、転校生来るみたいだよ。ここに机置いてるし

さくらから見て左横、遥香の後側、教室の一番後ろの窓際の位置に昨日まで無かった机が置かれていた。

さくら:〇〇君だったりしないかなー…

遥香:んなわけないない笑

ガラガラ

生田:はいはーい、みんな座ってー!

生徒A:いくちゃん先生、転校生来るって本当?

生田:本当だよー!

生徒B:よっしゃ、カワイイ子来い!

生徒C:イケメンがいいな〜

生田:それは自分たちの目で確かめな!
んじゃ、早速だけど入ってきてー!


ガラガラ


さくら:えっ…

遥香:うわぉ…




"齋藤〇〇です
よろしくお願いします"




生徒C:え、ショパンコンクール優勝したっていう、あの齋藤〇〇君?!

〇〇:あー…よくご存知で…




クラス:「「「えぇーーーっ!!!」」」




生田:〇〇君は一番後ろの窓際の席ね〜
じゃあ、みんな今日も一日がんばろ〜

〇〇は指定された席に座ると、前の女子生徒が話かけてきた。

遥香:私、賀喜遥香っていうの、よろしくね!

〇〇:賀喜さん、よろしくね

遥香:んで、この君の横でゆでダコみたいになってるのが、遠藤さくら

〇〇の右隣に座っているさくらは、遥香の言う通り、顔を真っ赤にして、目を伏せている。

さくら:ちょっと…かっきー…///

遥香:さくは君のファンなんだよ
昨日のコンサートも2人で見に行ったんだ〜

〇〇:ありがとう
遠藤さんもよろしくね

さくら: あっ…///
よ、よろしくお願いしましゅ…///

それだけ言って、さくらはさらに真っ赤に染まった顔を両手で覆った。



同時刻 1年1組教室


??5:宿題見せてぇ〜…

??3:珍しいね、??5が宿題終わってないなんて
今日来るのも遅かったし

??4:そこは察してあげな?

??3:あっ…

??5:わ、忘れてただけだからっ!

??4:ほんとに〜?

??5:もぉ!

__________


毎時間おきにやってくる〇〇への質問攻めも、ようやく落ち着いて、やってきたお昼休み

遥香:〇〇君、お昼一緒に食べない?

〇〇:いいよ

遥香:さく、いいって!

さくら:やった…///


一緒にお昼を食べていると…


梅澤:さく〜!かっき〜!

先輩だろうか、廊下から2人を呼んでいる

梅澤:今日の放課後、第一音楽室に全員集合だってさ、よろしくね!

遥香:了解です!

さくら:わかりました



〇〇:いまの方は?

遥香:あー、うちの部の部長の梅澤先輩

〇〇:賀喜さんたちって何部なの?

遥香:オーケストラ部だよ!
私はファゴットで、さくはクラリネットやってるんだ〜!

さくら:あんまり上手くはないんだけどね…

〇〇:へぇ、そっか
楽しくなりそうだな…(ボソッ

遥香:ん?なんか言った?

〇〇:いや、なんでもないよ

遥香:そう?



__________



1年1組

??4:今日の放課後は第一音楽室に集合だってー!

??3:りょうかーい

??5:わかったー

??4:そんなことより!さっき聞いたんだけど、〇〇さんが2年1組に転校してきたんだって!

??3:あ、??4も聞いた?

??4:知ってたの?チラッ

??3:私もさっき聞いたんだけどね?チラッ

??5:な、なに?2人してこっち見て…

??4:よかったねぇ、??5ちゃん?w

??3:よかったねぇ?w

??5:べ、別にどうでもいいし…

??4:あ、噂をすれば!

??5:えっ!

??4:あれあれ?
??5ちゃんは〇〇さんのこと、どうでもいいんじゃなかったのかな〜?笑

??3:かな〜?笑

??5:もぉ〜!うるさい!

??3・4:あーおもしろい笑

??5:全っ然おもしろくない!


__________




そして迎えた放課後


第一音楽室


生田:みんな集まった〜?

梅澤:集まってます

生田:よーし!始めるよ!
まず、なんで皆に集まってもらったかというと、今日は紹介したい人がいます!
じゃあ、入ってきて!

そう言われて、〇〇は音楽室へと入る

生田:今日からうちに転校してきた齋藤〇〇君!

〇〇:齋藤〇〇です。お願いします。

生田:知ってる子もいると思うけど、齋藤君はピアノやってます。

部女A:いやいや、知ってるどころじゃないですよ、ショパンコンクール優勝したんですから!


部員B:それで、その齋藤君とオケ部になんの関係が?


生田:なんと、この度、齋藤君と私たち乃木学オケ部が共演することが決まりました〜
イェ〜イパチパチ〜


いきなりの発表に、戸惑うオケ部一同



梅:き、共演って、まさか、どこかで演奏するんですか?

生田:おっ、さすが部長!
よくぞ聞いてくれました!



来たる8月10日


なんと



あの



茜坂ハーモニーホールで

コンサートやりまーす!







オケ部:「「「えぇーーー!!!」」」 





乃木学オーケストラ部にとって、嵐のような激動の4ヶ月が幕を開けた瞬間だった。
 


            〜To be continued〜




#1 



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