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20/21 中間評価

先日行われた第18節オサスナ戦をもって、20-21シーズンのリーガも半分が終了(開幕節のヘタフェ戦は未消化)。今週はスーペル・コパが行われ一旦リーグはストップするということでキリが良いので、今季のここまでを選手ごとに評価していく。

だがその前に、軽くチーム全体の振り返りもしたい。

短すぎたプレーシーズンを経てようやくチームが軌道に乗り始めたと思われた10月中旬。悪夢のような第6節カディス戦を皮切りに、以後11試合でマドリーは4勝5敗2分という不甲斐ない成績を叩いた。入れ代わり立ち代わりで続出した怪我人事情はあったにせよ、どう考えても看過できる数字ではなく、クライシスやジダン解任論まで囁かれた。
この流れを変えるために主力組とジダンによって導き出された答えが「メンバーの固定化」。左のウイング以外は極力スタメンを変えずにベストメンバーで挑み続けるスタイルに舵を取ると、セビージャ戦以降9戦無敗(7勝2分)と調子を取り戻し、今に至っている。

スランプ中に失った勝ち点はもちろん取り返しはつかないし、リーガでは首位アトレティコに大きく遅れを取っている。けれども、CLではなんだかんだグループリーグを突破できたし(謎の1位通過)、リーガでもアトレティコとバルサを破った。そういう意味で、ある程度ポジティブに評価していい部分はあるのではないかと思う。ただ逆に、エルチェ戦やオサスナ戦のような取りこぼしが減らない限り、上との差は縮まらない。リーガを取りに行く上では実力で劣る相手に実力通りの結果を残すことはマストであり、後半戦に向けて修正を加えなければならないだろう。そこでチームにしぶとさが身に付いて初めて、CLの可能性も少し開けてくるのではないかと思う。優勝候補との戦いは免れたものの、ラウンドオブ16の対戦相手は昨季ベスト4のアタランタで、決して侮れない(むしろアヤックスを想起させる)。そこを突破してさらに駒を進めていくためにはやはりチーム全体の底上げが不可欠で、その意味でもより一層の奮起が求められる。

GK

ティボー・クルトワ

リーガ:先発18途中0・15失点
CL:先発6途中0・9失点

ここまでチーム唯一の全試合フル出場。圧倒的なリーチを活かした安定感抜群のセービングは今季も健在で、特にチームの練度が上がらなかった序盤戦は何度も窮地を救った。アラベス戦でのパスミスからの失点は頂けなかったが、悪かったところといえばそれくらいしか思い当たる節はなく、現状のパフォーマンスは水準を超える素晴らしいものであると言える。欲を言えば、今季すでに6本決められているPKを止められればとは思うが…。

アンドリー・ルニン

リーガ:先発0途中0
CL:先発0途中0

クルトワが絶対的な存在として君臨する中、ターンオーバーを採用しない(できない)チームの方針もあって、未だ1分も出場機会を得られず。第2GKの難しさに直面している。まだ21歳ということでレンタルに出した方が本人のためにはなりそうだが、他のGKを取る余裕はなく現実的ではない。今はクルトワからできるだけ多くを盗み、有事に備えてほしい。

DF

ダニエル・カルバハル

リーガ:先発9途中1・0G2A
CL:先発1途中0・0G0A

2度の負傷があり、昨季ほどの圧巻のパフォーマンスは見せられていないが、それでもシンプルかつ効果的な上下動や精度の高いクロスを中心に大きく貢献した。特に攻撃面では、周りを上手く使えて周りに上手く使われることができるルーカスが右WGに固定されたことで攻撃参加のバリエーションが増幅。コンビネーションでの打開やインナーラップのランニングというように、右サイドでの攻撃に深みをもたらしている。守備時に、対峙するアタッカーに軽く振り切られてしまうシーンが散見されるのは少し気になるところで、コンディションをしっかり整えてほしい。

エデル・ミリトン

リーガ:先発1途中1・0G0A
CL:先発1途中0・0G0A

加入2年目での爆発が期待されていたが、むしろ状況は悪化。ハイパフォーマンスを披露するナチョに完全に遅れを取り、まともに出場機会を得られていない。快勝したウエスカ戦はラモスとのコンビで安定感のあるビルドアップと守備対応を見せたものの、ヴァランとコンビを組んだシャフタール戦はラインが上手く揃わずボロが出て崩壊。ミリトン自身のパフォーマンスが特段悪いわけではないが、このコンビの印象の悪さが自身の評価の伸び悩みに繋がってしまっている印象だ。とはいえ、ナチョに比べてポジショニングや対人守備で劣っているのも事実で、マドリーでの未来を維持するためにはここを乗り越えなければならないと思う。

セルヒオ・ラモス

リーガ:先発14途中0・2G(うちPK2)0A
CL::先発3途中0・1G1A

細かな怪我は増えてきたが、依然代えのきかないチームの大黒柱。だが、今季目立つのは個人のパフォーマンスというよりはリーダーとしての側面であるというのが率直な感想だ。クラシコやボルシアMG戦やマドリードダービーといった重要な試合での集中力とリーダーシップは凄まじく、チーム全体の士気を上げてまとめ上げるという意味でこの上ない存在感を発揮している一方、DFとしてのピッチ上の側面においては、少し軽い場面も散見。背後を取られるシーンも多いが、単純にマークを離してしまうのが1番気になる。より万全に近かった昨季と比べると物足りなさを感じてしまう前半戦の出来だったように思う。攻撃面でも、ここまでPKで2G、CKから1Gで、ラモスにしては静かな年だと言える。流れの中からのオーバーラップも不発に終わりむしろカウンターを食らうようなシーンは少なくないので、できれば自重してほしいというのが本音だ(特に今季はその役割はカゼミーロが高次元にこなせている)。契約延長の交渉が難航し様々な話が飛び交い始めているが、ピッチ上ではリーダーとして責務を全うできるかはチームにとっても大きなポイントになる。後半戦はもう1段階ギアを上げることができるか。

ラファエル・ヴァラン

リーガ:先発17途中0・0G0A
CL:先発6途中0・0G0A

今季はウエスカ戦を除く全試合にフル出場しているヴァラン。ジダンから過剰な寵愛を受けていると度々揶揄されるが、その批判は行き過ぎたものであるように映る。たしかに、昨季終盤から言われている通りラモス不在時にチームを率いられないし今季は2つもOGを記録しているけれど、ルーズボール・ハイボールの処理やカバーリングの能力は群を抜いて高い。ラモスとの補完性も抜群で、やはり相方としてファーストチョイスになるにはふさわしい出来なのではないかと感じる。もちろん批判に値する側面も少なくはない。特に今季目立つのがビルドアップの部分で、足元でのパスを引っ掛けて自陣でカウンターを食らう場面が続出。その他にも集中力が欠如しがちな点やラモス不在時に極端に萎縮する点がある。よほどのことがない限り後半戦もヴァランは出ずっぱりになりそうなので、これらの改善点は早急に直してもらいたい。そうでないとまたシティ戦の悪夢が繰り返されかねない。

ナチョ

リーガ:先発7途中0・0G0A
CL:先発2途中0・0G0A

不完全燃焼となった昨季から一転、今季は本職CBで出場機会を得て、かなりのハイパフォーマンスを見せている。決して大柄でもなければ圧倒的なスピードがあるわけでもないが、セオリーに忠実な守備対応で相手に仕事をさせない。ビルドアップやポジショニングでもミスらしいミスがなく安定感が抜群、最終ラインをまとめあげる統率力も備えていて、それら点での不安が残るミリトンを凌駕している。特に、攻守両面でラモスと同等レベルの存在感を発揮していたインテル戦のパフォーマンスは圧巻で、3番手にしておくのは本当に勿体ないと感じた。もしラモスが契約満了で来夏に退団するなら後釜にはそのままナチョを据えれば良いと本気で思わせる、今季の前半戦はそんな出来だ。

マルセロ

リーガ:先発6途中0・0G1A
CL:先発1途中0・0G1A

過去2シーズン以上に厳しい状況を迎えている。そもそも守備ベースというチーム事情を鑑みるとメンディにポジションを奪われる展開は驚くことではないが、出場機会を得てもマルセロ固有の良さを出せていない。長年言われ続けてきた守備の軽さと帰陣の遅さにどれだけ目をつぶっても、攻撃時のクオリティーが上がらない今季前半戦の出来には猶予の余地がなく、「足を引っ張っている」という表現が正直なところだ。それを裏付けるように、今季出場した7戦の戦績は2勝1分4敗。全盛期を知っているだけに、悲しくなってくるような出来栄えだ。ジダンが監督の限りはすぐに売られることはないだろうし、これからもチャンスは与えられるだろうけれども、クロスの精度や自らゴールを狙うことで違いを生まなければ、このチームで生きていくのは厳しいと感じる。32歳はまだ老け込む歳ではない。後半戦はもう一花咲かせて欲しいと切に願う。

アルバロ・オドリオソラ

リーガ:先発1途中0・0G0A
CL:先発0途中0

バイエルンでCL優勝を経験し、夏に帰還したオドリオソラ。そもそもバイエルンへのレンタルは昨年1月、アセンシオの復帰に伴いマドリーでのCL登録メンバーから漏れるという理由で仕方なく行われたものであり、今季はレンタルバックされ再びマドリーで戦力になるというのは当然の流れだった。しかし、今季初の出場となった第4節バジャドリー戦で不安定なパフォーマンスに終始し、本来休息だったはずのカルバハルに急遽交代。その後は怪我、ルーカスやナチョのSBでの素晴らしい出来があって完全にジダンの構想外になり、結局バジャドリー戦以来1分も出場機会を得られずに今を迎えている。加入当初は期待されていたものの、最近は「幸運の置物」と揶揄される場合を除いてはその名前さえも耳に入らないほどで、マドリーでの未来はほぼ閉ざされていると言えるだろう。本人は移籍を希望しているようだがこの状況下で獲得に乗り出すクラブがあるかは不透明で、飼い殺しも十分考えられるのでは…

フェルラン・メンディ

リーガ:先発12途中2・0G0A
CL:先発6途中0・0G0A

守備ベースのチームにあって、ポジションを争うライバルはマルセロ。加入2年目にして地位は確立されつつある。洗練された安定感のある守備対応と、迫力のあるオーバーラップやインナーラップはもはや語るまでもなく、激しい上下動を難なくこなせる運動量やアジリティーの高さも素晴らしい。リーガに限れば未だ負け知らずという事実も納得だ。しかしその反面、ボール保持の質については大きな改善の余地を残す。基本的にクロスはいい所には飛ばず、シュートも大きく枠を逸れる。酷い時には数メートルのパスをずらしただのトラップを失敗することさえあり、ポゼッション主体の攻撃に大きな停滞を生んでしまう場面が散見される(それでも体を入れて自ら処理できてしまうので、大きなピンチにはならないのだが)。後半戦も出ずっぱりになるのは明らかだからこそ、その質の部分は改善してもらいたい。ここが変わればかなりチームの攻撃全体の質が上がると思う。

MF

トニ・クロース

リーガ:先発14途中2・1G1A
CL:先発5途中1・0G1A

マドリーの攻撃を組み立てる司令塔は、今季も調子が乱れる気配がない。リーガでここまで成功させたパスは1066本で、その成功率は驚異の93.3%。長短のパスを織り交ぜて角度をつけながらテンポを生み出していく独特のゲームメイクスタイルは、今のマドリーの攻撃の源流として高い機能性を誇る。決して守備が得意な選手ではないが、このチームスタイルの中で守備面での献身も怠らない。セットプレーのキッカーやロングシューターとしての役割を含めて、今季もマドリーのミッドフィールドに不可欠な存在であり続けている。ちなみに、4-2-3-1採用時にドブレピボーテの一角で起用されると、システム上ポジショニングが低くなって持ち味を出しにくくなってしまう傾向があり、やはり適性はインテリオールにある。

ルカ・モドリッチ

リーガ:先発15途中2・3G1A
CL:先発4途中2・1G0A

チーム最年長ながら、負傷欠場したグラナダ戦を除く全試合に出場している小さな巨人。ドリブルやコンビネーションでのエリア前進、オフ・ザ・ボールの動き、質の高いクロスやシュートで違いを生み、ここまで既に4ゴールと絶好調。素晴らしいのは攻撃面だけでなく守備面も同様で、華奢な体でボールを刈り取る奪取力とピッチ中を駆け回れる豊富な運動量にも頭が上がらない。フェデがなかなかスタメンで出れないのも当然で、キャリアハイのシーズンを送っていると言っても過言ではない。今季限りで満了となる契約も既に更新で合意済みとの報道もある。ただし、先述したような連続勤務で疲労がかなり溜まって来ているのも事実で、つまらないミスも少し増えてきたように思う。後半戦も万全な体調で過ごすためには適度な休息が不可欠だが、この調子のモドリッチを外すことはジダンにとっては相当のジレンマか…

カゼミーロ

リーガ:先発13途中2・3G0A
CL:先発4途中1・1G1A

フィルタリングの役割をこなせる守備的なキャラクターのMFはチーム唯一で、依然その存在は重要かつ貴重。中盤の強度を上げ、相手のチャンス数を確実に減らす能力は健在だ。しかし今季は、意図的にポジショニングを上げている(理由は後述)ために被カウンター時に食い止められない場面が続出。守備面では昨季ほどの存在感を見せられていない。問題はビルドアップにある。一時期はかなり精度の上がったロングフィードの質が下がり、足元で繋ぐパスにも以前ほどの安定感が見られない。そのためジダンは、カゼミーロをビルドアップに参加させずにクロースとモドリッチに任せる形にシフト。カゼミーロがゴール前に顔を出す機会は多くなっている。グラナダ戦の先制点などはまさにその形で、今季は攻撃面での貢献はセットプレーを含めて絶大。大きな脅威になっている。この二項対立に関しては議論の余地はありそうだが、カゼミーロの前半戦のパフォーマンス自体は評価に値するのではないかと思う。

フェデ・バルベルデ

リーガ:先発8途中7・3G1A
CL:先発3途中0・0G0A

昨季は大ブレイクを果たしたが、コロナの中断明け後の11連戦は明確にトーンダウンしてしまったフェデ。今季はその継続性を含めてさらなる進化が問われた。序盤戦はとても素晴らしかった。持ち前のダイナリズムを完全に取り戻して攻守両面で躍動しただけでなく、得点能力も開花。マドリーのシーズン初ゴールやクラシコでの先制点といった重要な場面で結果を残し、成長を実感づけた。チームがプチスランプに陥った中でも自身のパフォーマンスは落ちることはなく安定していて、その存在感は日に日に高まっていった。しかし11月中旬に右足後脛骨の怪我で1ヶ月戦線を離脱すると、その間にチーム状況は一変。連勝街道を歩みだしメンバーは固定化され、直接のライバルとなるモドリッチは圧倒的なパフォーマンスを披露。フェデとルーカスの相性が今一歩なこともあり、フェデは復帰後もなかなか満足いく出場機会を得られず、以前のパフォーマンスを取り戻せていない。モドリッチが素晴らしいと言ってしまえばそれまでだが、序盤戦を考えると少し物足りなさを感じる現状だ。今後のシーズン佳境を乗りきるためにはフェデの本領発揮は間違いなく必要不可欠であり、完全復活が待たれる。スーペル・コパや国王杯を上手く活用して、復調してほしいところだ。

マルティン・ウーデゴール

リーガ:先発3途中4・0G0A
CL:先発2途中0・0G0A

今季のマドリーの事実上唯一の新戦力。長期に渡って育てられてきた至宝がついにトップチームに加わった。しかし今のところ、全くの期待はずれに終わっている。まだスカッドが手探り状態だったシーズン序盤戦、トップ下で試されたものの連携がとれず失敗に終わった。それによりジダンの構想から外れると、その後は2度の負傷離脱も相まって出場機会は激減。最後に先発した12月2日シャフタール戦以降の出場時間はわずか8分で、完全にチームの蚊帳の外になっている。積極的にボールを受けて、展開やラストパスを送るプレースタイル自体を否定するつもりはないが、短い時間の中で目に見える結果を重ねない限り、マドリーの中盤で居場所を確保するのは困難だろうというのが率直な感想だ。勝負は2年目に持ち越されることになりそうだが、スーペル・コパや国王杯でのアピールには期待したい。

イスコ

リーガ:先発3途中8・0G1A
CL:先発0途中1・0G0A

先発はわずか3試合、CLの出場時間はたった17分。マルセロ同様、黄金期メンバーの中で苦しんでいる。コンディションが整わないのか既に衰えはじめているのか分からないが、体のキレが落ちて以前のようにボールを動かせない。リトリートをして強度を高く保つ守備スタイルにも適応できず、完全に信頼を失ってしまった。唯一アラベス戦のパフォーマンスだけはチームを上昇させる光明となったが思いつくのはそれくらいで、厳しい時間を過ごしている。ジダンは黄金期メンバーへの待遇が厚くイスコもチームにいる限り一定の出場機会は確保されるだろうが、本人は移籍を希望しているようでマドリーでの残り時間は長くないかもしれない。得点力不足に喘ぐチームにとって、チャンスメイクと潤滑油の役割をこなし得るイスコは貴重な存在であるはずで、まだ本来へのパフォーマンスに戻るのではないかという期待も捨てたくはないのだが…

FW

エデン・アザール

リーガ:先発4途中2・1G0A
CL:先発2途中1・1G(うちPK1)0A

期待されながらも何も成し遂げられなかった昨季を経て、今季は復活を誓う勝負の2年目のシーズンだったはずだ。しかし先発したのは6試合、負傷とコロナ感染によってその倍以上の14試合を欠場し、直接残した結果はウエスカ戦のスーパーミドル1点のみに留まっている。ピッチに立てば他のどのWGよりもボールを持ててバリエーション豊かな仕掛けを繰り出せる総合力の高さはあり、チームに必要な存在ではある。しかし怪我を恐れてなのかチェルシー時代やマドリーでの最初数ヶ月ほどの積極性は見られず、それがゴールから自身を遠ざけている印象だ。これらの評価は19/20の後半戦のそれと全く同じで、端的に言えば昨季からの改善がほとんどない。このままいくとまた不完全燃焼なシーズンに終わりそうな雰囲気は否めないが、ここからの大逆転はあるのか。大きな期待を少しだけ抱きながら、後半戦を見守りたいと思う。

カリム・ベンゼマ

リーガ:先発16途中0・8G5A
CL:先発4途中1・4G0A

21試合で12ゴール5アシスト。マドリーの絶対的エースは今季も素晴らしいパフォーマンスで数字を重ねている。世界最高の9.5番と評されるように、ゴールだけでなく縦パスを引き出してビルドアップの出口になったりラストパスを送りアシストをしたりと仕事は多岐にわたる。クラシコやインテル戦やボルシアMG戦のような絶対に落とせない大一番に必ず結果を残す勝負強さもエースに相応しい流石の所業で、ベンゼマへの依存は今季も変わらない。逆に、昨季から少し変化しているのがポジショニング。サイドに流れて強引にボールに関わろうとする場面が減り、スムーズで円滑なアタッキングが増えている。ただ、格下に不覚を取るような試合ではベンゼマが完全に試合から消えていることが多く、そういう場合にはサイドや中盤を使う判断も必要だと感じる。今後アトレティコを追いかけていくにあたっては落とせる試合などないはずで、そのためにはベンゼマの継続的な活躍が文字通り欠かせない。後半戦もチームを牽引しながらゴールを量産してほしい。

マルコ・アセンシオ

リーガ:先発8途中8・1G2A
CL:先発4途中1・0G0A

直近2年間満足できるシーズンを送れず、背番号を11に変えて再起をかけた今季。未だに本来の良さは取り戻せていないものの、少しづつは変わってきている印象だ。序盤戦は守備時の意識の高さと的確なポジショニングが買われて右WGで起用されたが、攻撃面での適性は右サイドには無く結果が出せず。起用法を含めて納得のいかない時期を過ごした。その後はルーカスの活躍もあって出場機会は減少気味だったが、第15節グラナダ戦で左WGで出場すると縦への突破がハマり今季初アシスト。そこから現在3戦連続で先発し、再浮上のきっかけを掴もうとしている。ポジションを選んでしまうこと、そしてカウンターサッカーでないと活きづらいことは難点であるが、ハマりさえすればその能力は一流。後半戦はさらに調子を上げてほしいところだ。願わくば本職トップ下での起用も試したいところだが、今はその余裕はないか…

ルーカス・バスケス

リーガ:先発13途中2・2G2A
CL:先発5途中0・0G1A

現在17試合連続スタメンの鉄人、ルーカス・バスケス。正直どこから話せばいいか分からないが、まず端的に言えば今季のパフォーマンスは圧巻で素晴らしすぎる。SB(先発9試合)でもWG(先発9試合)でも圧倒的な運動量と規律に沿ったポジショニングでチームに安定をもたらし、タックル成功数もカルバハルに次いでチームで2番目に多い。インターセプトや守備意識の高さも含めて守備面での貢献はかなり大きく、対人守備に一抹の不安はあってもそれをカバーできる存在感を放っている。しかし、もっと劇的な変化・ビッグサプライズが見られたのは攻撃面だ。SBを経験し視野が広がったことで逆サイドへの対角線やトップへの斜めのパスを効果的につけられるようになり、ドリブルで相手のプレスを交わし内側へ侵入し局面打開する術も身に付けた。ボールの勢いを殺した状態で放たれるクロスは高い精度を取り戻し、実質3アシストを記録している。さらに最近はゴールで直接試合を決める機会も増えてきていて、攻撃面での貢献度も絶大。バランスを取りながらも絶妙なタイミングでアタックのスイッチを入れられるその存在はもはやチームに欠かせなくなっていて、元々今季はSBでブレイクしたものの気づけばWGでも他の追随を許さない確固たる地位を築きあげている。突如覚醒した理由は分かりかねるが、放出候補筆頭から一転ここまで大きな存在になった事実はチームの雰囲気に与える影響も大きく、賞賛に値するだろう。12月以降は疲労からか若干パフォーマンスは低下気味だが、後半戦はまた切り替えて臨んでほしい。その先には必ず、サラリーアップの契約更改が待っていると信じて。

ルカ・ヨビッチ

リーガ:先発2途中2・0G0A
CL:先発1途中0・0G0A

移籍金6000万ユーロで加入したものの、1年目の昨季はチームに馴染めず結果も残せず散々な出来に。今季は成長が期待された勝負の2年目だったが、状況はむしろ悪くなっている。序盤戦の2試合で2トップが採用されてチャンスを得たものの、連携が取れずに結果を残せず。信頼獲得に失敗すると、この後は4-3-3の回帰と大黒柱ベンゼマの存在で完全にチームの構想外になってしまった。コロナ感染と負傷による戦線離脱もネガティブに作用し、11月9日のバレンシア戦以来12試合連続で出場がない。マリアーノにも序列を抜かれる始末になったこの前半戦は評価に値するものではなく、後半戦はフランクフルトにレンタルで復帰するシナリオが濃厚となっている。買取オプションはつかないようでまた来季にはマドリーの一員になるが、その時にまた戦力としてカウントされるよう、勝手知ったクラブで調子を取り戻してほしい。

ヴィニシウス・ジュニオール

リーガ:先発8途中7・2G1A
CL:先発2途中4・1G1A

昨季後半戦は攻撃陣の核となってチームを引っ張ったヴィニシウス。今季は背番号を20に変更してさらなる進化に期待がかかっていた。実際、序盤戦は素晴らしかった。WGを置かないシステムも採用された中、目に見える結果を連発してチームの勝利に貢献。ゴールへの嗅覚が澄まされ、成長の一途を辿っている印象を受けた。しかしその後は徐々に勢いがトーンダウン。ゴール前の存在感は失われボール保持時の視野も狭まり、ルーカスやロドリゴなど他のWG陣の台頭もあって焦りが募るように。その自信喪失は最大の特長であるドリブルにも影響を及ぼし、まるで昨季前半に逆戻りしているかのような質の悪いプレーを披露してしまっている。その積極性は依然魅力的ではあり、インテル戦やセビージャ戦のように実る場面もあるにはあるものの信頼は確実に落ちてきていて、最近は完全にクローザー要員になってしまっているのが現状だ。前半戦全体の評価としては良い面悪い面の両方を含むと言えるだろうが、昨季に比べて序列を大きく落とした意味ではやはり印象はマイナス。後半戦はチームの勢いに相乗し、再び感覚を取り戻してもらいたいところだ。

マリアーノ・ディアス

リーガ:先発2途中3・1G0A
CL:先発1途中1・0G0A

昨夏に扁桃腺を手術し、今季序盤戦はリハビリのため欠場。昨季同様、今季もチームから置いていかれる展開も十分に有り得た。しかし、ベンゼマとヨビッチの同時離脱でチャンスを得ると、第10節ビジャレアル戦で1年6ヶ月ぶりに先発し開始わずか2分で初ゴール。少ない時間での結果と背後への鋭い動きでアピールに成功し、ヨビッチと再び序列が入れ替わった。決して固定化されたメンバーの一員に名を連ねているわけではなく、出場機会が依然少ない状況は続いているが、以前よりもポジティブな風が吹いている印象だ。おそらくヨビッチが退団する中、後半戦はより重要なタイミングでの重い1点が求められることになりそうで、期待に応えられなければ強い風当たりを受けるだろう。再び真価を発揮することができるか、まずはスーペル・コパでコンディションを上げてほしい。

ロドリゴ

リーガ:先発4途中7・0G4A
CL:先発3途中3・1G1A

センセーショナルな1年目を経て、今季はトップチーム登録となり背番号は25に。他のWG陣に比べると出場機会に恵まれていないものの、成績は1ゴール5アシストと引けを取っておらず、着実に成長している印象だ。本職は左サイドで、ドリブルからのチャンスメイクは左サイドの方が鋭さを見せるが、右サイドでもプレーの質はあまり落ちない。むしろバランスの取り方やクロスへの反応は右サイドの方がより秀逸で、ゴールもアシストも右サイドから多く生まれている。一辺倒ではなく様々な顔を持ち合わせる長所を改めて感じた前半戦だった。問題は守備面で、運動量と守備強度が求められるレベルに足りていないのが現状。プレスバックが遅れるシーンが散見され、その点がヴィニシウスやアセンシオに比べて明確に劣っている。逆にここが改善されればかなりの活躍を期待できそうだが、その前にまずはグラナダ戦で負ってしまったハムストリングの怪我を治さなければならない。再発が多い箇所なだけに一抹の不安が残るが、じっくりしっかり治して、再びマドリディスタを歓喜に沸かせてほしいと思う。

以上。データはSofaScore参照。

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