隣人を愛せよ (祝!アカデミー賞 受賞)
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 』最高でした!
まずキャストがいいです。ミシェル・ヨーがいいのはもちろん、キー・ホイ・クァン君は『グーニーズ』や『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』など子供の時どハマりした映画で自分と歳が近いので、今回注目を浴びたのはすごくうれしいです。そして久々に見たジェイミー・リー・カーティス(シュワちゃんの『トゥルー・ライズ』で格好よかった彼女、お父さんはトニー・カーティスでお母さんはあの『サイコ』のジャネット・リーですよ)、すっかりお婆ちゃんになりましたが、存在感抜群の悪役を楽しげに演じてました。そして驚いたのがお爺ちゃん役であの『ゴーストハンターズ』のジェームズ・ホン氏が出てきたこと、何と彼は今年94歳!あとマニアックなところで言うと『大福星』の西脇美智子さんもチョイ役で出てきます。
どうしてこんなキャスティングが実現したのかわかりませんが、ダニエルズ監督の2人が相当映画オタクなのは間違いなさそうです。そしてキャストだけでなく映画の内容もかなりブッ飛んでいるので、この作品がアカデミー賞で注目を浴びるなんて、なかなか面白い現象ですね。
監督は「マトリックス」で始まり「マグノリア」で終わるような映画を作りたかった、と言っているようですが、正にそんなアクションあり哲学あり、家族の物語あり宇宙の話あり、何でもありの不思議な作品に仕上がっています。他にもにキューブリックやウォン・カーウァイやタラちゃんなど、たくさんの映画のエキスが出てきます。これらの要素が見事に化学反応を起こして、全く新しい映画を生み出したダニエルズ監督の手腕にはホントに脱帽です。
正直、アクションと目まぐるしく変わるハイテンションなシーンの連続についていけない人もたくさんいると思いますが、映画のテーマは実はとてもシンプルで「争いはやめよう」「愛し合おう」という、愛のメッセージと人生讃歌です。
アカデミー賞の音楽関係は受賞しませんでしたが、音楽の使い方もとても上手く、重要なシーンでドビュッシーの「月の光」が流れるのがとても印象的でした。エンドロールの最後にはこのメロディに♪I Love You ♪と歌詞が付けられて繰り返されます。
そしてジェイミー・リー・カーティスが演じた役は、ある世界では敵、他のシーンでも悪の親玉、基本的に悪役ですが、そんな相手にミシェル・ヨーが“I Love You !”と叫ぶシーンがあります。そして別の世界ではミシェルとジェイミーが恋人同士で愛し合っている、という世界線もあることが描かれています。
つまり「戦うのではなく、隣人を愛せよ!」と言っているのです。これは正に今、世界が必要とするメッセージでしょう。単なるアクションコメディかと思いきや、案外深いテーマを持った映画でもある点が、アカデミー賞を受賞した理由かもしれません。
祝!ミシェル!キー!ジェイミー!ダニエルズ監督!