ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ感想…

絶望を鑑賞し自分に失望する映画。
二度と見返したくないし人に勧めたりできないけど心に残ってしまう作品。

観終わってもびっくりするくらいずっと悲しい気持ちのままなので、この文章を書こうと思った。

ストーリーに関わるネタバレはないけど、人によってはネタバレに感じるかもしれないです。

席についてから約2時間半、ずっと鬱々とした気持ちでいた。
途中で歌やダンスのパートもあるのに、ずっと終わりのない静かな夜の海を漂うような仄暗い心地で過ごした。
これは意図的に作られた不安感なのだと思う。
そこがこの映画の魅力なのだろう。
でもフィクションだとしてもこんな辛いキャラクターを生み出すなんて酷いことをする…

今作はアーサーが主人公なのに、周りの人は誰もアーサーをみていない。
彼は上映終了まで髪の毛一本ほども大切にされない。
四六時中、求められているのはジョーカーだ。
観客はそれがわかってしまうので、アーサーが喜びを感じている瞬間すら絶望を感じる。
アーサーをアーサーとしてみていたのは恐らく裁判に登場したあのひとりだけ。
その貴重な人物すら、アーサーは傷つけてしまう。
とてもやるせない。

私は作中でアーサーに幸せになってほしかったけど、アーサーを好きにはなれなかった。
自分で手を差し伸べて、君のことが好きだから助けたいと言えない。
アーサーが薄っぺらい善意では掬い上げられないくらい深いところにいるのがわかるし、彼の暴力性が怖いのだ。
アーサー自身に寄り添えない時点で作中のアーサーの周りにいる人間と同じ加害者であるような気持ちになってしまう。
それがこの映画の恐ろしさであり、すごいところ。

鑑賞後いちばん最初に抱いた感想は、不愉快。
一晩たって思うのは、自分のやるせなさや汚さを浮き彫りにさせられたから不愉快に感じたのだろうということ。
この映画が賛否両論と言われてる理由がわかる。
受け取り手によって抱く感想が違うようにされている。なんだか心理テストみたい。
作り手の力量が素晴らしかった。

観てほしくないけど観てほしい気持ちもある…

絶望を味わいたい方は是非、映画館で鑑賞してほしい。※前作の視聴は必須です。

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