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バイオリンの視線、コントラバスの視線

 皆さんの「利き目」はどちらだろうか?「利き手」ならすぐ答えられても、利き目となるとわからない人が多いのではないかと思う。指鉄砲でバンとする時にどちらの目で的を狙うかを試してみるとどちらが利き目だかわかる。今はあまり使われなくなったが、ファインダーを覗くタイプの一眼レフのカメラを覗く時にも利き目はわかる。

 私の効き目は右である。バイオリンを弾く時の目はどう使っているだろうか?私は左目で左手を見て、右目で楽譜と指揮者を見ている。完全に左右の目が分業しているわけではないので、そんな感じというだけである。たぶん、そうしている人が多いのではないだろうか?

 ところが、コントラバスを持つと目の使い方がかなり変わる。左手を見るのが左目というのは同じなのだが、バイオリンは視界の下方に左手をとらえるのに対し、コントラバスやチェロは視界の左隅の方になる。当たり前のことかもしれないが、お互いに楽器を交換して実際に構えてみるとすごく違和感があり初めての時はとても見にくい。そして、コントラバスでハイポジションをとる時は、首を動かして目線を下に移動させるのである。コントラバスを弾くのに慣れていれば、顔をあまり下に向けないで目線だけ下に向けてハイポジションの位置を確認することもできる。一方、バイオリンはハイポジションを見るために首を動かすことはできないし、ハイポジションでも見る方向を変える必要はな。ハイポジションになると同じ方向から左手が目に近づいてくるだけである。コントラバスではハイポジションは逆に目から遠ざかり方向も変わる。

 オケの中でバイオリンの席に座っていると視界が非常に狭い。逆にコントラバスの席は視界がものすごく広い。コントラバスの視界が広くなるのは、目の前に楽器がないということもあるし、座っている高さが高いからというのもある。コンサートマスターの席から見える視界よりもコントラバスの席から見える視界の方が圧倒的に広い。オケで弾いている時にバイオリンからコントラバスの弾く様子を見れるが、それよりもコントラバスからバイオリンの様子を見る方がよく見える。バイオリンからコントラバスの引き間違いを見分けるのは難しいが、コントラバス奏者からはバイオリンの弾き間違いがよく見えている。バイオリンの後ろの方で間違いを誤魔化しながら弾いているとコントラバスからは丸見えである。

 ステージ上の上手側と下手側とで目線の向きが逆になる。当然ではあるが、利き目というのを意識しないでいると逆サイドに移動した時に違和感が強くなる。バイオリンとビオラの両方を演奏している人はどうやって視線の方向を使い分けているのだろうか?そんなこと考えるまでもないことなのだろうか?私はステージ上手で弾くと、左目偏重になる。下手側なら右目で見ている指揮者も左目で情報を取ろうとしてしまう。それにより左目が疲れてしまう。自分だけの癖なのか他の人も同じなのかは少し気になる。

 視線の使い方は想像以上に演奏に影響を与える。見る方向が変わるだけで音質が変わるし、アンサンブルの合い方も変わってくる。自転車に乗る方法を子供に教える時も視線を上げるように教える。他のスポーツでも視線を変えるだけでコントロールする力が全く違うものになってくる。

 プロの人とアンサンブルをしていると、視線の使い方がさすがだなぁとよく思う。一見楽譜しか見てないようで、絶妙なタイミングで回りを見ている。私が暗譜でアンサンブルに挑んだとしても、プロの目くばせと同じことはできない。

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