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16歳から17歳までの詩片 2



    夜ふるえる

あまりに寒いこの空が。

暗いあみにすっぽり包まれ

みにくい命は逃げ回る。

いやだ、いやだ。

生きてみても

死んでみても

俺一人。

月は今日も見えるかね。

    飯

がらりと戸をあけると

三度目の飯が、置かれた。

犬は飯をとろうとする。

鎖が、思い切り伸びても

届かない

一杯の飯。

それでも犬は、あきらめぬ。

自らの家をひきずり

手で引き寄せる。

強くなった首輪のために

犬は苦しげだ。

その前にあるのは、

一杯の飯。



  捨ててしまえば…


笑ってしまえばそれまでだ。

泣いてしまえばそれまでだ。

ああ滑稽なる悲劇よ。

ボールペン先の玉のローリング。

インクは静かに逃げていく。

捨ててしまえばそれまでだ。


神?

いるというのか。

それは、

自然そのものじゃあないか。

神をむじばむ囚人達よ。

滅んでしまえばそれまでだ。


ああ余分なるこの夢よ。

ふうわり、ふうわり

おりの中を

うつろにさまよう。

捨ててしまえばそれまでだ。



  われらは過ぎ行く


この世の中の鐘がなります。

       ぼおん、ぼおん。

そのあとにまるで時計の針の音。

       こち、こち、こち。


いくつもの。いくつもの。

ときがこうしてたってゆく。

知らず知らずにたってゆく。


外は今夜もうすぐらい。


季節はずれの虫が鳴きます。

       じい、じい、じい。


いくとせも。いくとせも。

こうして過ごしてきたような。

季節はずれの虫の声、

いくつもの。いくつもの。

こうしてとき時間が過ぎ行くような。


ああこうやってまた朝が来る。

  (沈んだ空気に漂って。)

この世の中の鐘が鳴ります。

      ぼおん、ぼおん。

いくつにも。いくつにも。

  響いて。響いて。


    形

すべてに形がある。

それは例えばものであったり、

       こころであったり。

むろん形は外見だけ、

なかみはさっぱりわからない。

それでも外見でしか判断するしか手がない時は、コインをなげたり、

六角形の鉛筆をころがしたり。


そして形はいつかは変わる。

夢であったり、

ことばであったり、

自分自身であったり。

それは確かに昨日まで有った。

だが今日の時計と無関係。

  今日の自分と無関係。


それでも昔の形を捨てきることができないときは、

笑ってみたり、

泣いてみたり。


そんな自分の「形」がある。



    夜

すべてが、終わった、という安堵感?

いやいや、やはり明日の来る不安だろう。

静かに夜はふけていき

月はよろよろ夜空に浮かぶ。


Moon is blue

しかし月は、ほほえまない。

難しい顔をして、じっとこちらを見つめている。


深まっていく夜の静けさ。

屋根の上で猫がくしゃみをしている。

ギッシュン。

かぜをひいた猫はゆっくりと

赤い瓦を踏んでいく。

ギッシュン。

雨が降ってきたのだ。

月が消え、雲が夜空を埋め尽くす。


夜は紫、

夜は黒、

夜は灰色、


やはり明日のくる不安だろう。



   何にもなくても

何にもなくてもあきらめてはいけない。

ここに俺がいるのだから。

昨日がなくてもいじけてはいけない。

ここに俺がいるのだから。

明日が見えないからといって

やりかけのまま投げ出してはいけない。

ここに俺がいるのだから。


日は上り、やがて沈む。

そして心があちこちへとさまよいだす。


何にもなくてもあきらめてはいけない。

それでも俺はここに居続けるのだから。





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