#12 完敗

「また聞いてないよね?」

辛うじてこのセリフは取りこぼさなかった。
どうして私は彼女の言葉を聞き取れないのだろうか。
友達に相談すると
「お前は同時に違うことを考えている。文章見たらわかるやろ。
意識がいろんなところに飛んでまう。やから集中してないだけ」
的を得ていないと思った。もう一人の男は私の相談を聞きこぼした。
特に心配もしなくて良いと思っていたが、流石に彼女に怒られてしまった。
「でも仕方ないよ。あなただから」
「いつもありがとう」
一件落着。しなかった。
「私は何をしてもあなたの1番にはなれない」
「いやいや俺浮気とかしてないよ」
「わかってる。絶対に浮気しないって思ってる」
彼女の違和感に気づくのも遅い。
彼女の目には凄く力が入り、決して涙は落とさないと決めたように私を睨む。
以前、泣く女はずるいと言っていたことを思い出した。
それをいう彼女は強く見えたが強がっているようにも見えた。
「自分が好きでしょ?私はあなたを超えられないよ」
そうか私は私を優先していたにすぎない。
「そんなことか。そりゃそうでしょ」
肩をフルスイングで叩かれた。
「そういう時は嘘でもそんなこと言わない。私が一番って言っておけば良いの」
「そんな用意されたこと言われても嬉しくなくない?」
全く同じフォームで叩かれた。

私は下手くそらしい。
もちろんアイスを奢ってことなきを得た。
「INTPだから仕方ないよ」
「うるさい」
アイスを食べたあとに蒸し返してまた怒られる。
「どうやって生きていくつもりなん?」

私には彼女が必要だと暗示をかけるための罠かと思った。

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