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ファンベースなワークショップを考える
ファンベースプランナーのキャン(宮下)です。
ファンベースカンパニーではファンミーティング、ファンと行うワークショップ、ファンベースを行う企業の社内ワークショップなどファンベースを実践するための場づくりに多数伴走しており、私もこれまでプランナーとして伴走してきました。
初めのうちは社内の既存プログラムに沿って経験豊富なメンバーに相談しながら設計していたのですが、実施機会が増えていく中で「ワークショップ」を体系立てて理解し、目的に合わせた場づくりを設計し運営をサポートできるようになりたいと思うようになりました。そこで昨年、青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラムを受講しました。ワークショップの理論と実践について、講義とワークショップ演習を通して学ぶというプログラムです。
今回は「ファンベース×ワークショップデザイン」というテーマについて考えていきたいと思います。
そもそも「ワークショップ」ってなんだろう?
「ワークショップ」と聞いた時にどんな場を思い浮かべますか?個人向けからビジネスの場面、分野もアート・まちづくり・教育・自然体験・精神世界といった多岐にわたる場でワークショップという言葉を見かけますよね。
ワークショップデザイナー育成プログラムでは次のように定義されていました。
「講義など一方的な知識伝達のスタイルではなく、参加者が自ら参加・体験して、共同で何かを学びあったり、創り出したりする学びと創造のスタイル」1)であり、「コミュニティ形成(仲間づくり)のための他者理解と合意形成のエクササイズ(練習)」2)という定義です。
1)中野民夫著、「ワークショップ」、岩波書店、2001年
2)苅宿俊文著、「ワークショップと学び1 まなびを学ぶ」、東大出版会、2012年
ファンの熱量が高まる場を醸成するポイントとしては、相互作用の中で他者を理解し、何かを創造しあうことが大事だと感じました。それはコミュニティ形成にもつながっていきます。
「ファンミーティング」と「ワークショップ」の違い
ファンベースの実践では、ファンに集まってもらい、ファン同士で企業・ブランドの好きなところを話し合っていただく「ファンミーティング」をよく実施します。「ファンミーティング」と「ワークショップ」どちらも人が集まって、相互に対話をするということは同じですが、目的の違いによって整理することができます。
「ファンミーティング」は企業がファンの声を傾聴することを目的に開催しますが、「ワークショップ」はファンとの共創などを目的に開催しています。
「ファンミーティング」の中でも、ファン同士やファンと社員が対話をすることによって、お互いが触発されたくさんの声が出てくるようプログラムの設計を行います。ただ、この場の目的はファンの商品やブランドへの愛を語り合ってもらうことにあります。そのため、会が終わった時点で「こんなアイデアがたくさん集まった!」のような具体的な結果が出ていることを重視しません。あくまでも、フラットにファンの声を傾聴することを重視します。
一方で、「ワークショップ」では、ファン同士、ファンと社員で一緒に体験や対話をすることで、アイデアの種のようなものが見つかる相互作用を意識してプログラム設計をします。一人の意見や、企業担当者の考えだけでは到達できないようなアイデアや発見があることを目指すのです。
ここからは私たちがこれまでに実際に行ったワークショップの一部をご紹介します!
① アイデアスケッチワークショップ
IAMAS(情報科学芸術大学院大学)で開発された視覚的ブレインストーミング手法「アイデアスケッチ」3)を用いたワークショップです。このワークショップの特徴は「誰でも一定のクオリティで絵を描けるようになる」ことや「言葉だけでなく絵にすることで、たくさんの意図を伝えあえる方法」であることです。絵を描きアイデアを出すことで、対話や相互作用が促進されるのは、非日常的で自然とやりたくなってしまう楽しさをもつワークショップという形だからこそ。私も何度か行っていますが、普段より楽しくアイデア出しができますよ!
3)James Gibson, 小林茂, 鈴木宣也, 赤羽亨 著、「アイデアスケッチ」、BNN新社、2017年
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② レゴ®シリアスプレイ®ワークショップ
弊社メンバーのふともも(坂本)は「レゴ®シリアスプレイ®メソッドと教材活用トレーニング修了認定ファシリテータ」の資格を持っています。このワークショップの特徴は①のアイデアスケッチ以上に子どもから大人まで幅広い世代の方が目の前にあるブロックを使い、自然とワークに没入していくことができること。参加者の心の奥に隠れた内観を、ブロックを使って立体化した作品を創ることで可視化させ、参加者同士が作品を通して内観を語り、互いに質問し聴き合うことで自分と他者の内観に気づくことができるプログラムです。社内メンバーで体験会をした時、自分では意識していなかったことを質問され「なぜか?」を考え言語化する楽しさを感じました!
私の担当したある地域のプロジェクトでもレゴ®ワークショップを実施したことがあります。その地域のファンタイプが、「学びへの意欲や向上心が高い」方々であったため、同じ形式を繰り返すのでなく新たにこのワークショップを行ってみてはと提案し実施しました。参加したファンの方から年間の活動振り返りの中でも「レゴ®のワークショップが面白かった」「他の参加者のアイデアに刺激を受けた」といった声がたくさんあがっていました。参加するファンのタイプに合っているか?という適正も大事にしたいですね。
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③ エモーションワーク
最後にファンベースカンパニーのオリジナルワークショップ「エモーションワーク」を紹介します。弊社メンバーが開発し、クライアント企業で実施しています。4つの感情ごとに1~2枚のカードを選び、自分の感情を基にどんな施策があると嬉しいか?を考えていくワークショップです。「エモーションワーク」という名前の通り、参加者それぞれが改めて自分の感情と向き合い、その時々に何を求めているのかを楽しく考えることができるのが特徴です。参加された方からも「新しい自分に出会えて楽しかった」という感想をよくいただきます。
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💬 まとめ
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ワークショップという手法はファンと企業がお互いを深く理解し合い、分かち合うことによって新たな価値を生み出していける可能性があるものだと私は思っています。普段と異なる対話を通して発見があり、参加していくうちに楽しくなっていく、そんなファンとの場づくりをいろいろな形で実践したいです。これからもファンベースなワークショップについて実践を重ねながら、みなさんと一緒に深めていきたいと思います。
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