ショートショート②
「寒いね」
「そしたら、ラーメンだね」
「ラーメンなの?」
「こういう日に食べるのが1番おいしいからね!」
もうすでに頭の中はラーメンでいっぱいであろう彼女に手を引かれ、灰色の寒空の下を早足に歩く。
決して小綺麗ではない店に慣れたように入ると、いつもの2つね!と笑顔で店員さんに伝えると、店員さんも慣れたように笑顔で応える。
「ここの味噌ラーメンはほんとおいしいの!」
大きな瞳を輝かせる彼女は、早くも味を想像して目を細めてふにゃふにゃしている。
出てきたラーメンはもやしが乗っていて、コーンと煮卵はどうやら彼女の"いつもの"らしい。
レンゲに器用に具材を乗せて口いっぱいに頬張ると、それはそれは良い笑顔をする。
「うまそうに食うね」
「だってうまいもん!どう?おいしい?」
「うん、なんか通っちゃいそう」
「でしょー!なんてったって私の一押しだからね!」
何故か自分の店のように胸を張る。
そんなところも可愛らしい。
まだ始まったばかりの2人の時間は、これからどんな色で彩られるのだろうか。
愛は実を結び花開くのか…まぁそんな遠い未来を想像するよりは今この時に一緒に居られる喜びを噛みしめる。
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