留める

写真を撮るっていうのは時間をそこに留める行為だと思っている。
時間の流れは誰にも逆らえない。
この世に生を受けた瞬間から人は平等に時を刻む、どれだけの長さ時間を刻んでいけるのかどうかは人それぞれだし、自分で時計の針を止める、ということぐらいしかできず。
巻き戻したり早回ししたり、そんな夢のようなことはできないのが現実で、転生なんて概念があるが僕は信じていない。
人は死んだら無になる、そこで終わり。
あくまで自意識はそこで途絶えて、そこからはただただ時を刻むのを止めた置き時計のように、体は朽ちて土に還る。
だからこそ僕は写真を撮るという行為に一種の神秘性と信仰心を持っている。

いつか君も年老いて心臓が止まるその瞬間まで時を刻む。
でもそれは絶望ではない、誰しもその時を迎えるまである程度懸命に血を交わす。
そしてその都度都度に時を止めたいと思う瞬間がある。
ファインダー越しに眺める君の横顔を見て、綺麗な輪郭と白く輝く歯、細めた目は太陽の光のせいなのか、なんにせよ写真に収めるにはどうしようもなく美しい。
永遠は無い、それはそれでつまらない。
それでも僕は信じている。
この一枚には永遠がある。
そしてこの一枚を撮った後も君はより美しく、逞しく、命を燃やすんだ。
いつか振り返る時が来るその時に永遠の中に留められた美しさを尊いと思うと同時に、今の君が最高に綺麗だと思えるように。
今日も目を凝らし、シャッターを切る。

時よ止まれなんてつまらない。
君はいつでも美しいのだから。

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