今回の記事では、こちらのインタビュー記事について取り上げる。
まず、平本淳也氏が、なぜジャニーズ事務所に肯定的な書籍や記事を書いてきたのか、ということを説明していたので、引用したい。
率直な感想として、「性加害について書かせてもらえず、宣伝になるような内容しか取り上げられないのなら、何も書かないほうが良かったのではないか」と思った。
直感的な話ではあるが、褒める記事によってより多く増えるのは、肯定的な人ではないだろうか。その中から一人でも、性加害疑惑について問題意識を持ってくれる人が現れればいい、と平本氏は考えたのかもしれない。
しかし、何より優先すべきは、被害者を増やさないことだったはずだ。経営の資金源となるファンを増やしたり、ジャニーズ志望者を増やしたりしては、本末転倒だ。
続けて平本氏は、人々にジャニーズ事務所に入所することを勧めてきた過去についても、言及している。
これについては、「単にアドバイスをしなければよかったのではないか」と思った。夢や希望をわざわざ阻まなくても、「自分は実態を知っているのでとても勧められない。止めはしないが、アドバイスもしない」と言えば、それで済むはずだ。
それに、平本氏は大人である。未成年者が性的被害にあうのを分かっていながら、それを防ぐ努力をしないことには、どんな言い訳も立たない。
そもそもこの発言は、実態とは少し異なる。
確かに、知人にアドバイスを頼まれたときには、断りにくいということもあったかもしれない。しかし、平本氏がアドバイスしたのは、知人に限らない。平本氏は、不特定多数に向けても入所すること・させることを勧めてきたのだ。
以前の記事でも書いたが、再び引用する。
上記は平本氏自身のサイトに載せていた文章だ。
この他、自社の事業として、依頼を募集していたこともある。
こうした事実がありながら、まるで「聞かれたので仕方なくアドバイスした」かのように言うのは、不誠実だと感じる。
さて、長々と感想を述べてきたが、この記事にはさらに見過ごせない記述がある。
この記事が出る約1週間前、当事者の会は、日本弁護士連合会(日弁連)に対して人権救済の申し立てをした。その後の会見で、記者から申立代理人の佃克彦弁護士に対して、「被害者が警察に取り合ってもらえなかった、という話がある。その件は日弁連の調査対象に含まれているか?」といった質問が出た。それに対して、佃弁護士はこう答えている。
この発言に対して、平本氏を含む9人の中から異論が出ることはなかった。これはどういうことだろう?はっきりと矛盾がある。
弁護士ドットコムニュースは、この会見についても記事にしている。佃弁護士の発言を知らないわけはないと思うが、平本氏の「警察に門前払いされた」という話と矛盾するとは思わなかったのか、疑問に思う。
平本氏はまた、こんなことも語った。
(※前回のnoteで、平本氏が使う「被害」という言葉のニュアンスについて触れているので、ぜひお読みください。)
まず一つの事実として、平本氏は「被害者」と名乗っていたことがある、ということには触れておきたい。6月の記事だ。
これは例外とするとして、確かに、「被害者」を名乗るかどうかは個人に委ねられるべきことだろう。しかし何となく、腑に落ちないものもある。
平本氏は当事者の会の代表だ。自分は被害者とは名乗らず、「被害者を名乗るメンバーたちの勇気を分かってほしい」とだけ言うのは、やや及び腰すぎないだろうか。
平本氏と他の「被害者」の間に距離を感じるのは、今回が初めてではない。週刊実話WEBの6月15日の記事で、平本氏はこんなふうに話している。
「好き勝手に言える」という言葉は、何となく、他人事のように聞こえる。
また平本氏は、ジャニー喜多川氏からの行為を拒みながらも一線で活動していた、ということにプライドを持っている。だから余計に、他の人達と一緒になって「被害者」と名乗ることには、抵抗があるのかもしれない。
疑問点について、平本氏から説明があるのは有難い。しかし、さらに疑問が増えてしまうことがあるのも事実だ。
今後も検証していきたい。
↓前回の記事はこちらです。合わせてお読みいただければ幸いです。