“Drive My Car” についての微かな思い出
歌詞和訳/In My Life
今春、濱口竜介監督の2023年ヴェネツィア映画祭銀獅子賞作品 悪は存在しない が一般上映されるそうです。
公開を期待しつつ、ちょっくら時を戻して、いいやかね。
…… 2021年にカンヌ国際映画祭で脚本賞を獲るなど、世界で高評価を得た ドライブ・マイ・カー の脳内再生を試みてみました。
Drive My Car
(The Beatles/1965/vo./Paul MaCartney)
(youtube)
ビートルズの曲では、映画スターになるつもりの女が、「私の運転手になりなさいよ、稼げるから」と男に言うんだが、実はまだ車を持ってないというスベりオチ。
映画 ドライブ・マイ・カー の原作小説は "世界" の村上春樹。10年ほど前、雑誌に発表していた連作短編の第一話です。読んでたんですが、中身をよう覚えてないんよ、これが。“もう中学生” のようには廊下を走れない代わりに、もう脳の老化が走り出してますわ、なんとも、早っ!
映画は中年の舞台演出家、家福 (西島秀俊) の、女優である妻 (霧島れいか) との出来事から始まって、東京から演劇祭に招かれた広島へ、赤いサーブに乗って展開する。
さて、広島で専属ドライバーになる、運転に長けた若い女性みさき (三浦透子) が登場。ストーリーが進むにしたがい、この寡黙な女性ドライバーにフォーカスしていく。
一方で、演劇上演にからむ多国籍の主催者や俳優。その中の一人、死んだ妻の愛人だった男 (岡田将生) との絡みもあって、話が長くなります3時間 !?
手話を含め多言語の出演者たちに独自のメソッドで稽古をつける家福。
粘り強い繰返しによって、役柄の心の内から言葉が融合していくプロセスが、劇外の人間関係の進展と重なって描かれる。
この広島を背景にした中盤で、個々の人間同士がコミュニケートしようとする姿勢が、世界と向き合うことに繋がる重要性を撮る濱口監督の視点、素晴らしい感!
だいぶ前から、“世界” の村上春樹はアカデミー文学賞に取り沙汰されては、盛り上がっていた “ファンクラブ?” の方々にため息をつかせてきましたが (ちゃうか、酒呑んではしゃいでただけか?) 、映画化作品が米アカデミー作品賞にノミネートとは、いやはやなんとも!(国際長編映画賞受賞)
寄る年波の坐骨神経痛から、2時間超の映画は避けてますが、尻痛を感ずることなく、スクリーン世界に見入ってましたなん。
三浦透子、この映画で初見の俳優でしたが、なかなかの存在感あるあるの女子感! 国内の助演賞総なめでしたな。さらなる飛躍を期待しております。
*家福役の西島秀俊は海外でもいくつか主演男優賞を受けてますが、みさき在りきだったかなし。
終盤は、みさきの育った北海道の寂れた町を目指すロードムービー仕立て。心の中のミステリーをたどり、ついに雪に埋もれた廃屋を眼前にして、閉ざされていた二つの魂が共鳴するシーンは美しい。
原作での黄色いサーブを赤にしたんは、雪景色との映えか? 他にも意味がありそうでなさそで、、、ゴールデン・ハーフ、かい!
What! can't I know it?
ラストシーン、みさきは傷が癒えた鳥のように、青い空の下、迷いのない真っ直ぐな道を飛ばして行く。やっぱり映画のサーブは赤で当たりでした。
ところで、
ビートルズの初の全曲オリジナルアルバム RUBBER SOUL なんですが、1曲目が Drive My Car 。2曲目の Norwegian Wood は「ノルウェーの森」とした日本でのセールスタイトル。本来 wood が沢山あっての woods が森ですが、邦題無茶付けあるある。“This bird had flown” ラストヴァースでは、小鳥が飛んでいってしまうんで、(多分森へという願望でひねりだしたのか?) まあ、いいか。
Norwegian Wood (This Bird Has Flown)
(The Beatles/1965/vo./John Lennon)
(youtube)
村上春樹のとんでもベストセラー、「ノルウェイの森」(主人公が「ノルウェーの森」を聴いている) を2010年映画化公開された時に観ましたが、後半、尻痛がひどくなった思い出しかなかったな、なさけない。
ともあれ同アルバム収録曲の中では、
イン・マイ・ライフ を一押したいです。
In My Life
(The Beatles/1965/vo./John Lennon)
(youtube)
*恐れ入りますが、原詞はネットで閲覧くださいませ (_ _)
In My Life
人生を振り返っては想い出す たくさんの場所
いくつかは変ってしまったけれど
ずっと在っても良くはならない所
消えてしまった所や元のままの所
全ての場所が大切な時を記憶している
今も想い起こせる恋人や友人の姿と一緒にさ
亡くなった人もいるし元気な人もいる
僕の人生、ずっと皆んなを愛してた
けれど友人や恋人だった誰にも
君と比べる者はいないんだ
そうさ想い巡らすことに意味はないんだ今は
何だか新しい愛を思うときには
でもその気持ちは失くさないさ 分かってる
過ぎ去った人たちや出来事への愛さ
分かってるさ たまに立ち止まっては想うと
けれど僕は人生で、もっと君を愛したい
その気持ちは失くさないさ 分かってる
過ぎ去った人たちや出来事への愛さ
分かってる たまに立ち止まっては想うけれど
今僕は人生で、もっと君を愛したい
僕の人生、君をもっと愛していたい
(訳詞/杜村 晩)
A Small,Good Thing