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米国企業業績予想モデル作成の難しさと楽しみ方
1. 米国業績予想を行う動機について
2022年にアクディブにドルを運用することを思い立ち、勉強も兼ねて米国株投資を始めましたが市況も悪くうまくいきませんでした。いくつか米国株投資の本も読んでも、投資=投機という感覚のままでした。
そんな私にきっかけを与えてくれたのは米国資産運用アドバイザーのまりーさん著の『負けない米国株投資術 米ヘッジファンドの勝ち方で資産を増やす!』という本でした(本の内容と感想をリンク先の私の【読書 note】に書きました)。”ファンダメンタル分析”も”コア・サテライト運用”という言葉も初めてだった私にとって、この本には米国株投資で知っておくべきことが凝縮されており、以来たまに読み返して勉強を続けています。
本格的な内容が初心者も分かるよう噛み砕いて書かれている良書ですが、読んでも実践するのは簡単ではありません。一部、本では伝えきれないことがあるのです。それがChapter 3の業績予想です。著者のまりーさんは、やむを得ずこれを勉強会という形で補完しており、私も実力をつけるため参加しています。(下記Xの投稿参照)。ご興味がある方は是非参加をご検討ください。
2. やって分かった業績予想の醍醐味と効果
ここでいう業績予想とは、予想モデルを作って次の四半期決算のRevenue、Adjusted EPS、Guidanceの数字を推定することです。勉強会では毎週1社の業績予想モデルの作成と業績予想を行います。希望者は自分の予想の発表もできるので、私も何度かプレゼンをさせて頂いております。
未だ勉強中の身ですが、少しずつできることも増えてきました。苦労しながらもできる範囲で業績予想をすることで、新たな発見もあったので紹介します。
名前しか知らなかった企業のビジネスモデルが分かるようになった。
例えば、FacebookやInstagramを提供しているMETA。なぜあんなに儲かっているのか、業績予想を作るまでは理解したいという言う考えも起きませんでした。
情報の感度が上がった
例えばWMT(ウォルマート)。米国市民の台所の業績予想と結果を比較すると、TVで流れる米国経済のニュースも自分なりの物差しで聞くことができます。
無駄に株式を買ったり売ったりすることが減った
きちんとファンダメンタルを分析してから株式の購入を考えるので、変なタイミングで無駄に株を買ったり売ったりすることが減りました。これらは運用成績の改善につながっていくと思います。
数字と睨めっこするのがパズルのようで面白い
あくまでも個人的な嗜好ですが、業績予想はパズルを解くような面白さがあります。例えば”数独”が好きな人は、ハマるかもしれません。
3. 業績予想の難しさ
このように、業績予想を行うことで企業分析の実力は確実に上がるのですが、実際に行うと本を読んだときには想像していなかった難しさに気づきました。
英語の決算書を読むのが難しい
米国企業の業績モデルを立てるためには、まず決算報告書を過去2年分程度目を通します。その他の資料(10Q、10K、決算のプレゼン資料、Earnings callのtranscript等)も参考にします。全く知らない企業の英語の資料を読むのは、ハードルが高いです。
業績モデルは対象の会社ごとに作り分ける必要がある
業績予想をするためには、各対象企業ごとにオリジナルの業績予想モデルを作っていきます。なぜなら、モデル構築に必要な財務三表の記載項目や、KPIが企業ごとに違うからです。従って数をこなして慣れるしかありません。
アナリストに不親切な決算書がある
米国企業の情報開示は進んでいるので日本にいながら必要な情報は全て手に入りますが、資料が散らばっていて見つけにくい企業があります。また業績予想に必要でも企業にとって都合が良くない情報は、見つけにくく書かれていることもあります。
Adjusted EPSの予想が難しい
業績予想ではNon GAAPの純利益からAdjusted EPS(調整後1株当たり純利益)を予想します(その背景はSBI証券の『日本株にも通じる!?米国株投資で知っておきたい重要指標!』に詳述されています)。つまり”会社の主張に基づいた純利益”を推定する必要があるのですが、企業の主張を理解するためには会計上の基礎知識も精通している必要があり、私のような初心者は理解に苦労します。
4. 続けるための工夫
以上、業績予想の困難さについてお話ししました。ただ、業績予想については実施しないと意味が半減します。少しでもハードルを下げるために私がしている工夫を紹介します。
知っている/分かりやすい企業の業績予想だけ行う。
自分がよく知っている企業だけ実施します。例えば有名企業で言うと、製品を見たことのあるAppleの方がエヌヴィデアより予想を立てやすいと思います。
また乱暴な言い方をすると、決算書がシンプルで業績予想モデルを立てやすい企業は業績が伸びている印象があります。
最初は売上(Revenue)の予想のみ行う
予想の立てやすい売上の数字だけ推定します。分析対象企業の理解度を高めるにはそれでも十分効果があります。
AIを活用してハードルを下げる
様々な英語の資料を読むのは大変です。その負担を下げるためにAIを活用します。無料で使えるものでは、GoogleのNotebookLMが便利だと思います。資料のpdfをAIに読ませた上で、資料の内容で知りたいことについて日本語で尋ねれば日本語で回答してくれます。
AIの回答はチェックが必要なのでアナリストの代わりは無理ですが、あなたの頼れる相談相手にはなれます。
5. 心がけている事
たとえ完成度が低くても定期的に発表する
私は定期的に自分の業績予想を勉強会で発表しています。
プレゼンは非常に有効な勉強法です。説明できるよう発表直前まで数字を何度も見直して準備をすることで、自分の予想を客観的に見直す機会になるからです。
でも完成度が低くても良いのです。私も最初は酷いものでした。当たり前です。最初からできる人などいないのです。勉強会に参加されている方は是非発表に挑戦してみて下さい。
振り返りをする
正直まだ余裕がなく徹底できていないのですが、業績予想モデルを他人のものと比較して学ぶべきところを学ぶこと、業績発表後のフォローと株価の動きを記録しています。要するにチェックをかけるという事です。
大事なのはPDCAを回すこと
仕事同様、業績予想モデル構築においてもPDCAを回すことを意識しています。
8月末時点でスタンダードクラスの勉強会は20回目を迎えます。何度か発表することで、道半ばですがようやく少し余裕が出てきました。すでに自分で業績予想モデルも作っていますし、その企業がたまたま勉強会で取り上げられることもしばしばです(ARM、TSM等)。
さらに洗練させて、”投機”になっていた私の活動を”投資”と呼べるレベルにするのが、今後何年にも渡って達成する目標です。
バフェットさんは2024年で94歳。投資に関する深い洞察力は今なお世界中の人の尊敬を集めます。一生続けられる勉強の対象として、投資は良い題材と感じています。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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