ネット広告にアタリショックが来るのではないか

ネット広告、今では見ない日は無いと言うほど身近なものになってしまいました。
ネット広告の市場規模は、毎年過去最高額更新の右肩上がり、今年は前年比108%予定、大体五年で倍になるペースで伸びています。
しかし一方、広告単価がそこまで上がったと言う話は聞きません、はっきりしたデータは無いのですが、ブログ主やYouTuberなどで広告収入が下がって大変だという嘆きをよく目にします。少なくとも五年で二倍という広告費の伸びに釣り合うほど上がっていないことだけは確かでしょう。
つまり我々はネットを使うたびにこれまでより多くの広告を観ることになっている、ということです。
皆さんも、かつての途上国で空港を出ると大量の物乞いに囲まれる風景のように、広告だらけでどこに本文があるのか分からなくなってしまったニュースサイトやブログを見たことがあるのでは無いでしょうか。

ただ、あくまでも私論ですが、今後ずっと広告市場が伸び続けるとはどうも考えにくいのです。
本質的な問題として、現在において広告というものの意義が無くなって来ていると考えます。

例えばある街に美味いラーメン屋が100店舗、不味いラーメン屋が100店舗あったとします。それで

街A 美味いラーメン屋のみ広告を出している
街B 美味いラーメン屋も、不味いラーメン屋も広告を出している
街C 不味いラーメン屋のみ広告を出している
とします。

Aの街は、視聴者にとっても、広告主にとっても、広告に価値の有る理想的な状態と言えるでしょう。
昔、広告が新聞やテレビの物だった頃、広告を出すのには多額の費用が掛かりました。
だから、大企業がそれなりに力を入れて作った商品しか広告を出す事が出来ず、結果としてひどい商品が広告される事は、全く無かった訳では無いものの比較的少なかったです。

Bの街だと、視聴者にとっても、広告主にとっても、広告は何の役に立っていません。ただ視聴者は邪魔さを堪えてスルースキルを磨き、広告主もお金をドブに捨てただけです。

Cの街でも、視聴者にとって広告はほとんど何の役にも立っていません。せいぜい不味いラーメン屋に引っかかる確率が1/2から99/199になる誤差程度の効果でしょう。
広告主については、広告を出すのは自殺行為と言えます。はっきりしたマイナスの効果が有るので広告を出す店は無くなるでしょう。


さて、現在のネット環境はどの街に近いでしょうか?
現在よく広告に出ているゲームやマンガは「おすすめするに値する優れた製品」でしょうか?
それとも「世の中から消えた方が良い劣った製品」でしょうか?
私には、現在のネット環境はBやCの街になっていると思います。
これから多くの人は、広告を出している=劣った製品 と言う認識を持つようになり、
それにつれてまともな広告主はネット広告を見限り、それでも広告を出す企業は、投資詐欺や課金ゲームの様な、昔ながらの広告観を持つ、ごく一部の騙されやすい人から、大金を巻き上げる産業ばかりになるでしょう。

こんなやり方が、何時までも持続可能だとは到底思いません。
かつてゲーム業界にアタリショックと言う物が有ったそうです。
詳しくは書きませんが、ゲーム業界初期に余りにもクソゲーが乱発され過ぎた為に、怒った消費者がゲームを買うことを辞めてしまったそうです。
この結果、なんとゲームの市場規模は数年で1/30にもなったそうです。
近い内に、似たような事態がネット広告業界にも、やって来るのでは無いでしょうか。