九十九物語 【白峯神楽の忠告】#2
「なぁ! なぁ! なぁ! 女子の皆さん。肝試し興味ないですか?」
私たちの会話に入ってきたのは廃墟探索を趣味としている家内カイキがきた。
「肝試し?」
「俺らゴールデンウィーク中にしようってんだけれど、俺らだけだと余りにもむさ苦しくて華がないと思って誘ってきたんよ」
「でも、この辺りにそんな心霊スポットみたいな場所存在した?」
「この校舎を真っすぐ行った方向に国道に出るじゃないですか? その奥をずっ―――っと! 行くと、旧美浜トンネルがあるじゃないですか? 」
「旧美浜トンネル?」
「雰囲気はあるけれど、あそこはただ薄暗いって、だけで特に何も無いはずだよ」
「いやいや、最終目標はそのトンネルの向こう側にある廃遊園地。この前、親父にあのトンネルの向こう側に何があるのかって聞いたら、放置されている遊園地があるってきいたから」
「私怖い場所は…ちょっと」
「私もパスかな。興味ない」
気の弱い桜井カスミと興味がもてない境レインは誘いに乗る気ではなかった。私もこの二人が行かないのであれば、行く気にはならなかった。
「大丈夫! 大丈夫! 行くといっても昼間だし、夜なんか行きたくないでしょ。それに聞くところによると、その廃墟、今、すごく綺麗って話なんだ。結構、映えるらしぞ!! 」
「他に行くメンバーって、誰なの?」
境が聞いていた
「あぁ、俺と、秋月、早良の三人」
「え…? 早良君も行くの―――なら、私行こうかな。」
「え? 行くの?」
友達の境は驚いていた。
「うん…、だって…」
桜井は恥ずかしそうな顔をしていたが、私は彼女が早良のことを好いていることをしっていたため察していた。
「ねぇ、聞くところによると、結構、綺麗な場所らしいし行こうよ。青春の思い出作りにはちょうどいいじゃん」
桜井は私と境を誘っていた。
「あんまし、乗り気じゃないけれど、カスミが行くのなら私もいこうかな。もちろん、ハナも行くよね?」
私は、気分が悪いので行く気はなかったが、流される形でいくこととなってしまったようだった。
すべての授業が終わりを告げて、部活のない私は、さっさと家に帰ってしまうのが習慣だった。いつもどおり、体育館裏の通学路から帰ろうとすると、あの白峯神楽がいた。
白峯神楽は体育館にうつっているガラスをじっと見ているのだった。別に体育館の中には誰もいないのにだ―――
おいおい、また奇行しているよ…、あの天才―――?
私は、そんなことを思いつつ、しばらく観察していた。
彼はポケットから小さなプラスチックの袋から粉末を取り出すと、それを舐め始めたのである。そして、舐めたあとは、校庭にそれを投げつけるように撒き散らしていた。
「えぇ……」
おいおい、もしかて高峯神楽の奇行の正体って―――あの白い粉が―――
私は、何も見なかったことにして、別の帰り道から帰ろうとしたのだが、ガラスに写ってしまった私に彼は気づいてたようだ。
「お…、有栖川桜花さんだっけ? こんなところで何か用かい?」
彼は、微笑みながら私を呼び止めた。
「え…、いや…」
白峯神楽が私の名前を知ってることに驚いた。あまり仲が言い訳ではなく、むしろ彼としゃべったのは、今回が初めてであったくらいだからだ。
「あー、はいはい。クラスの中で一番頭がイカレている奴は、何をやっているのであろうっていうという好奇心という奴ですか?」
彼は嘲ながらそう言った。
自分で言うのか…!
「あまりいい趣味とは言えないね。こそこそしているとは怪しい奴め!」
「それは、こっちのセリフだわ! 私は…、帰り道がこっちからでたまたま遭遇しただけ…。それに怪しいのはそっちでしょ」
「何で?」
「その白い粉よ…」
「いやいやいや、怪しくないよ。これは―――キメただけだよ」
「犯罪臭しかしないだろ!」
「なんだ。欲しいなら、欲しいって言えばいいのに…、今回は無料でいいよー。次からは有料でお願いね」
「おい、それを近づけるな!」
彼はケタケタと笑い始めた。
「面白いね。有栖川さん」
「? 」
「これは、有栖川さんが想像しているものではなくて、ただの塩だよ」
「なんだ…。なんで、その塩を学校に撒いていたの」
彼は困った顔しながら、「なんて説明したらいいのだろうな~」と笑いながら言っていた。
「キミって、妖怪とか怪異を信じれるかい?」
「いや、無理」
「だよねー。いきなり、こんなことを言って信じられるほど、純粋な人でもなさそうだしね」
「それで、神楽はそれを退治しているとでもいうの?」
「慧眼だ。頭いいね、有栖川さん」
「ふざけているの?」
「ぜ~ん、ぜん」
この言い草からみてふざけていないというほうが無理な話だ。ひどくこの男におちょくられている気分になる
「神楽って、頭いいのにどうしてそんなに変人なの? 」
「変人? 僕が? 」
彼はまた笑いながら言った。
「授業中とかに、よくわけわからないことしているでしょ」
「あぁ…それはね―――、僕は、神だから」
「……」
大真面目でこうゆうことをいえるメンタルは見習いたいが、聞いた私が馬鹿だったようだ。
「はいはい、痛々しい中二病も大概にしてね」
「やれやれ。キミ達は、いつもオールカテゴライズしてしまうから、良くないよ」
「何を言っているのか、さっぱりなんだけど? 」
「すべてを常識という枠組みに一塊にしてしまうことだよ。それって人間の傲慢に値する行為だと思わないかい? 」
「はい? 」
「価値観の相違だっていうことだよ。啓蒙主義と資本主義の台頭によって、常識というカテゴリが作られて、それに外れた僕の行動つまり、キミたちからみた僕の奇行は狂気として扱われてしまうということさ。だから、僕はあえて、この画一化される学校生徒諸君に警鐘を鳴らしている。それがあの行動なのさ」
「……」
なにを言っているかわからないが、白い薬がなくても頭が十分キマッている人なんだと私は認識していた。
「じゃ、そこの非常識の人」
「あれ?? なんかニュアンスが違うぞ? 」
「何していたの? 回答によっては生徒指導部に報告する」
「ちょっ! だから、さっきから言っているとおり、妖怪退治をしているだけだっていっているでしょ! 」
「高校生にもなってそんな子供騙しみたいなことでごまかせると思っているの? 」
「じゃ、ゴーストバスターで」
「より子供じみているよ! 」
「分かったよ。今度こそ、キミが信じて納得する回答を言うよ」
「またふざけるつもり? 」
「有栖川さんってさー、最近、変な夢を見ていたりするでしょ? 」
白峯神楽は、私が最近困っていたことについて触れたため、気が動転した。
「え…?」
「図星か」
彼はにやりと笑っていた。
まるでしてやったりという顔。
毎晩、同じ悪夢を見ていることを彼に見透かされていた。
「どうして、それを―――」
「あぁ、すごいの背負っているからなんとなくね」
「……!」
この言い草からみても、やはり、白峯神楽のあの噂は本当のようだ。
「それって、私に何か憑いているってこと? 」
「んー、何か憑いているというよりかは、何かを背負っているが正しいかな…」
「背負っている? 」
「箱だから」
「箱?? 幽霊じゃなくて箱を背負っているっていうの? 」
「それも植物に覆われている箱を背負っている。そして、その植物は―――キミの体に侵食しているね」
「冗談でしょ…。私には何も見えない」
「僕には見えるね。はっきりと。うん。これは、ヤバイね。ヤバイことこの上ない」
「それって、どれくらいヤバイの…? 」
「お父さんから貰ったクラリネットのドとレとミが出ないくらいかな―――」
彼は満面の笑みでそういった。
致命的じゃない―――!
私は、毎晩のごとく同じ悪夢を見ているのが気味悪く感じていた。悪夢にでてくる謎の少女が化け物へと変貌を遂げて襲われてしまう夢と何か関係しているのかと思い、白峯神楽に相談することにした。
「ねぇ…」
「んー? 」
「神楽って、本当にそうゆうことに詳しかったりするの? 」
「まぁ…、一般人よりかはねー」
「相談してもいい? 」
「んー…、めんどいからヤダ」
彼は、満面の笑みで断っていた。
少し、殺意を覚えた。
「あっ、そう。生徒指導部に赴いて、高峯神楽君は薬物乱用の疑いが―――」
「ぜひ、相談に乗りましょう」
私は、高峯神楽にうなされている悪夢の内容を話した。
第三話目