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◆ 話のネタ ◆ No.31 『無欲の勝ち!』 株の話
バブルが、始まる少し前、銀行員として地方の支店に勤めていた時の話です。
ある日、私の担当する地区のまったく取引のないおばあさんが、来店されました。
少し前に、元国鉄職員の夫が亡くなり、夫の趣味が若いころからお小遣いで株を買う事だったそうで、夫名義の当行株が、わずかばかりあるので自分名義に変更して欲しいとの依頼で来店されたのでした。
私が、入行した1983年頃は、都市銀行の株価は、すべて500円でした。 それが、バブルの始まる少し前から、徐々に値上がりし始め、銀行間でも差が出るようになっていました。最初の支店の時には、750円位になった時、先輩は、持ち株会の株を売って(今のようにインサイダーのことばすらない)儲かったからといって、飲みに行ってました。
それに対して、支店長の運転手さんは、
「自分は、退職金が少ないので、この持ち株会の株は、退職金代わりに売らずに最後まで持っておく」と堅実でした。
株価は、その後もドンドン上昇を続け、飲んでしまった先輩は、がっかり、運転手さんは、「毎朝新聞で株価を見ると、毎日金持ちになっている 💛」と喜んでいらっしゃいました。
冒頭のおばあさんのお話は、私の2カ店目のお話で1985年頃の話です。
おばあさんは、株の知識は全くなく、おじいさんが若い頃から趣味で株を
何銘柄か買っており当行株も小遣いの範囲で売買されていました。
支店に来店され、おばあさんの依頼をうけ、総務課長が、株券を見て、
時価をはじいてあげ
「おばあさん、当行株の値段は、いくらと思われます?」
「そうじゃね~、長年主人がやっとったけど、小遣いの範囲じゃったけぇ、50万円くらいかねぇ~」
「とんでもない、おばあさん、今の価格は、13百万円しますよ!」
「ひぇ~~」
「おばあさん、株券は、現金と同じですから、盗まれたり、燃えたりしたらお終いですよ。 ご自宅にこれだけの株券を保有されるのは、危険ですから、よろしければ当店の貸金庫をご利用下さい」
「そ、それでは、是非貸金庫に入れさせてもらいます。」
その日の夕方、営業から戻って来ると総務課長から私の地盤で、
おばあさんが、貸金庫契約をされたという情報を頂きました。
当時、営業の一番の仕事は、個人定期を集めることでしたので
翌日、おばあさんの家を訪問しました。
「昨日は、貸金庫を開設頂きありがとうございました。 私がこの地域を担当させて頂いているSと申します。」
「あぁ、宜しくお願い致しますネ。」
「ところで、ご相談なんですが、お客様は、当行株が13百万円まで値上がりしていることは、ご存知なかったんですか?」
「まったく、知らんかったんで、ビックリしました!」
「それでは、まったくあてにされていなかったということですか?」
「えぇ、あてになんかしてません」
「それじゃ、よろしければ、その株を売却して定期預金にされませんか?」
「・・・・・私には、娘が1人います、隣の県に住んでおりそこに孫もいます。 私は、年金暮らしで毎日近所の人とゲートボールを楽しんでいます。 町内会の積み立てで年に1回ご近所の人と1泊旅行をし、孫にお小遣いをあげておりこれで充分です。 おたくの株は、なかったものとして孫の為に残してやるつもりなので、このままにしておきます・・・・」
「そうですか・・・・なかったものとされるんですね・・・」
おばあさんの意思は、固く残念だったのですが、定期預金には、していただけませんでした。 その後も、時々おばあさんの所を訪問して、粗品のサランラップやアルミホイルをお届けしていました。
それからも、株価は、ドンドン上昇を続け、1年経ちました。
「おばあさん、株はなかったものとしてそのままお孫さんに残してあげると1年前におっしゃいましたよね」
「えぇ、そう言いました、今もそのつもりです!」
「物は相談ですが、ご存知ないと思いますが、この1年も株は、順調に上がってきました。」
「そうなんですか?」
「今の価格は、26百万円となっており、1年前の倍になりました。
それでですが、株を半分だけ売って13百万円分を定期預金にして頂けると、毎年金利だけで30万円入ってきます。
これで、好きな旅行に行く回数を増やしたり、お孫さんへのお小遣いも再々あげることができますよ。 株も昨年と一緒の13百万円分残りますし、どうでしょうか?」
「へぇ~そうなんですか?・・・・・・・一度娘と相談して連絡します。」
「それじゃ、お電話お待ちしてますね」
数日後、おばあさんから電話がかかってきて、株を半分売って欲しいとのこでした。
株を売却する日、おばあさんと娘さんが一緒に来店されました。
「おばあさん、本日、株を売ることになるのですが、実は、当行株は、
先日、5,050円という最高値を付けたんです。 本日は、4,950円で、
最高値ではないですが、テストで言うと100点ではないが、90点以上の
合格点くらいの価格ですが、どうされますか?」
実は、こういったケースでは、まず間違いなく、
「 それなら、5千円台に戻ったら売ります !」となります。
「うちら、株の事は、な~んもわからんけぇ、お任せします。 最高値でなくてもまずまずの値段ということなら売って下さい」
ということで売却されました。 おばあさんが、株売却後、順調に値下がりし1度も売却価格を超えることはなく、当行株の最高値は、結局5,050 円でした。 よって後から思うと、ほとんど最高の処で売却されたことになりました。
” 無欲の勝ち!! ”
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◆ 毎週、金曜日に発信予定です。
次回予告:No.32 お金持ち ゴルフ接待の話
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