◆ 話のネタ ◆ No.45 お金持ち2:人は見かけによらない
銀行員時代、様々なお金持ちとの出会いがありました。 今回もお金持ちの話です。
ある支店で取引先課員だった時、自分の地盤の中で、お金が大きく動く可能性があるので、地元の小さな不動産屋さんを、新規の情報拠点にすべく訪問した時の話です。
家族だけでやっている古い小さな不動産屋さんに飛び込み営業をしました。この不動産屋さんがお金を持っているとは全く思えなかったので、不動産売買情報の入手する為の情報拠点にならないかと思って訪問しました。
中に入って声をかけると、70歳くらいの初老の経営者が、ボサボサ髪で、すこし腰からずり落ちている緑色のジャージ姿で、たばこの『しんせい』を咥えてひょろひょろと出て来られました。
私は、「今度この辺りを担当することになった銀行の営業マンでSと申します」と挨拶をして世間話を始めました。 しかし、正直、この社長を見て
ここを訪問したのは、間違いだったと大きく後悔しましたが、行きがかり上、直ぐに退出する訳にもいかず、話をしておりました。
その時、ふと壁を見ると立派なサーキット場の大きなポスターが貼ってあったのに気づき
「社長、このポスターは、なんですか?」
「あっ、それ、うちのサーキット場」
「えっ、社長のところの? いったいどちらでされているのですか?」
「うーん、北海道」
「儲かりまっか?」
「まったく儲からん!」
「でも、社長、北海道だったら、土地の値段が随分安いでしょうから本当
は、もうかってらっしゃるんじゃありませんか?」
「いや、儲からん」
「土地が安いのに何にお金がかかるんですか?」
「あぁ、土地は、高こうないけどサーキット場の舗装にお金がかかるんや」 「えっ、舗装に?」
「そうや、舗装するのに、3億円かかっている」
「な、な、なんでですか?」
「うちは、オートバイのモトクロス用のレースもしてるんや、オートバイの
レース用のコースは、安全の為、真平でないとダメなんや、規定ではセロ
ハンテープをまっすぐ10m延ばして、地面から5mm以上隙間が空いたら
不合格なんや。」
「そんなに、厳しいんですか!」
「そうや、それだけしても毎年オートレースで転倒して、何人も亡くなるん
や」
「それでも毎年レースは、されるんですか?」
「そう、亡くなるのに、毎年レース希望者が参加するんや、それに北海道だ
から、冬は、雪降ってレースどころか、何にも使い道ありゃへん」
それから、何故、社長が北海道にサーキット場を持つようになったか等のこれまでの人生をいろいろ教えて頂けました。 ご家族は、社長と奥様と息子さんの3人で不動産業をされていましたが、北海道の物件が社長の個人名義だったので、相続税対策の必要性をご説明し、まったく何もされていなかったので、その方面で著名な、税理士をご紹介させて頂く約束をしました。
トータル3時間位お話をして、最後に社長が、
「取引もないのに只で、税理士を紹介してもらっては、申し訳ないので、
何か、お礼をせにゃいけんと思うんだか・・・・何をしてあげたらええん
かのぉ?」とおっしゃったので、
「仕事では、個人定期を集めてますので、個人定期をして頂くと嬉しい
です。♬」
「それは、いくらしたらいいの?」
「いくらでも結構ですが、多いほど、嬉しいです 💛」
「そう、考えとくわ」ということで社長と別れました。
その後、銀行に戻って昼食を食べていると社長から電話があり
「Sさん(私のこと)、先ほどの個人定期の件だけど、1億円でいい?」 「えっ!1億円ですか? ・・・・いいだなんて、充分です!」
「あっそう~ 12月の下旬に東京の信用金庫に定期の満期が来るんで
移してあげるわ・・・」
「あ、ありがとうございます ♬」
翌日、社長のところを訪問して、12月下旬に1億円の振込が入ってきたら、個人定期ができるように事前に書類を全部作成して頂きました。
その時、社長が、
「私とかみさんは、旅行が趣味で、年末に2人で、アマゾンに出かけるので
旅行中連絡が取れんけど手続きやっといてね!」
「えぇ? アマゾンに旅行に行かれるのですか? また、何で、アマゾン
なんですか?」
「う~ん、もう行くとこなくなったから・・・」
「・・・・・・・」
12月下旬のその日、15時を過ぎても、東京の信用金庫からは、1億円は、振込まれてきませんでした。😞
回りの皆は、
「そりゃ、かつがれとるわ! 1億円やで、初めて会って、そう簡単に
よそから移してくれる訳ないやろうが・・・」
私も、非常に不安になりましたが、アマゾンにいる社長にも、東京の信用金庫名も不明で連絡がつかず、祈るような気持ちで待っていたところ、
15時30分頃、1億円が振込まれてきました。
後では、分かったのですが、1億円を預金して頂いたこの社長は、個人で定期預金は、10億円お持ちでした。
まったく、人は、見かけで判断しては、いけないと心より思いました。
おまけ: 以前の支店で、新規のお金持ちの自宅に勧誘に行った時、
玄関内の壁が崩れていて驚き、
「何故? 修理されないのですか?」とお聞きしたところ、
「あぁ、いつでも直せるから!」との返事でした。
「確かに・・・・」
◆ 毎週、金曜日に発信予定です。
次回予告:No.46 こころに残る上司 O支店長
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