【展示作品紹介④】妻(しづさん)がモデルに!?長谷川潾二郎「梅雨曇り」
今回紹介する「梅雨曇り」は1984年(潾二郎80歳)の作品です。
晩年の潾二郎は歩行困難のため、ほとんど外出せずアトリエで静物画を描く日々でした。そんな中、アトリエから見える景色を描いたのがこの作品です。
この青いスカートをはいた女性はじつは奥さまのしづさんです。
「曲り角」(※のちに梅雨曇りにタイトル変更)の点景人物の少女、しづ子を参考に。七十才が十五才になるのは難しいと言う
しづさんに言われたんでしょうか。微笑ましいです。このお二人、夫婦仲がすこぶる良く、潾二郎の日記には、日々の何気ない夫婦のやりとりが記されています。
また、絵が売れず(そもそも完成品も少ない)、経済的に大変だった時期はしづさんが服飾の仕事で支えました。文字通り二人三脚で歩んだ人生でした。
ところで、「梅雨曇り」についてはこのような記載もあります。
歩行困難のため外出出来ずここ五、六年 風景を描くことが出来ない。風景を描くのが好きな私にとってこれは大きなマイナスである。私の見る風景は今では窓から見える風景だけである。それを毎日見ていると思いがけず美しいものがあるのを発見する。視覚の角度を変えると別の顔が現れる。(もしも君が一つの角度しか持たないなら何処へ行っても同じものを見るだけだろう)
緑の美はその深さの感覚の中にある。この「梅雨曇り」は緑の壁のように見える。しかしそれは平面ではない。デリケートな変化によって深い奥行の中に呼吸する。又、変化する緑の塊は各々動かし難い面積の美の中に生きている。
最も美しいものは形の奥にひそむ目に見えない幾何学である。交通標識、建築物、アスファルトの道、これらの都会的な人工物が、緑に対して烈しいコントラストを作る。これらの人工物によって緑の美が一層引き立つ。これがこの画のテーマである。
「梅雨曇り」という題は俳句の季語のようでなんとなく情緒的にみられる危険のある画題である。しかしその言葉の陰に本当のテーマをかくしている。
潾二郎は常に緑にこだわってきました。
「梅雨曇り」の緑は画像よりもっと色が濃く生き生きしています。
ぜひ会場で実際にごらんください。 入場無料です。
▶生誕120年 長谷川潾二郎展 ~ひっそりと、ささやかに。あの日の先に
▶会期:2024年9月22日(日・祝)~9月30日(月)
▶会期中無休
▶午前10時~午後6時(最終日午後4時まで)
▶入場無料 (販売なし展示のみ)
▶場所:鈴木美術画廊 東京都中央区銀座1丁目13-4大和銀座ビル
▶TEL.03-3567-1114
▶主催:長谷川潾二郎 愛好家