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呪いの言葉

「呪い」は、のろい・まじない、と読み方が2つある。
今回は、「のろい」の話ではなく、「まじない」の話。
私の今は亡き、じいちゃんの話。


私は一度もじいちゃんに会ったことはなく、思い出もない。
母からじいちゃんの写真や色々な話を聞かせてもらうだけ。
写真のじいちゃんは、背が高く眼鏡男子で今でいうよい男、
随分と働き者であったが、ばあちゃんを泣かせることもあった時にわるい男。

赤紙が届いて戦争へ行き、後もマラリア熱で苦しめられた。
病に伏せている時も、私の写真を見ては
最後まで会いたがっていたらしいが、その願いも空しく
ばあちゃんが看護の合間、少しうたた寝している間に
じいちゃんは天へと旅立ってしまった。
じいちゃんが私に会いたがってくれていたように
私もじいちゃんに会いたかったし、今でもとても恋しい。


そんなじいちゃんは、「まじない」の言葉をもっていた。
たとえば、魚の骨が喉に刺さった時に使うまじない言葉、
いわゆる「ものもらい」になった時に使うまじない言葉、
じいちゃんは、人の不調に見合ったまじない言葉を
「治療」として用い、彼らに教えて
本人がそれらを唱えると、不思議に一度で治るという。

母は上に書いた、2つのまじないを直接じいちゃんに聞き
その度、見事に治っていたらしいが、じいちゃん曰く
これらの言葉は、その状況にない人には決して話さないこと
それが鉄則だったらしい。


母からこの話を聞いた際、私はなんだか信じられなかったが
私も含め、色々な人を確かに治してきたのもまた事実なのだ
じいちゃんが用いていたこれらの「まじない」は
一体なんなのか自分なりに調べてみたところ、
日本の南で今でも「様々な不調や病を自分で治す術」つまり
「呪い言葉」が存在しており、使用している地域があると。

じいちゃんはそれらを用いる人たちと出逢って知り得たのか
若しくは、じいちゃんの母が霊媒師、いわゆる
「イタコさん」だったので、それと繋がりがある事なのか、
残念ながら真実は分からない。


結局、じいちゃんのまじない言葉は上の2つしか知らないが
病を治す以外のまじないもあったのではないか、
映画「天空の城ラピュタ」ではないが、
人を救うまじない言葉もあれば、決して使ってはならない
「禁忌」な言葉も知っていたのではないか
そんな類の話が大好きな私にとって、
じいちゃんと何も話せなかったことは、本当に悔やまれる。


私がじいちゃんに教えてもらいたかったまじない言葉は
「来世で会いたい人に会えるまじない」だ。
それは勿論、じいちゃんだ。
もしも会えたなら、たくさん話したい、笑い合いたい、
そして甘えてみたい。


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