あと5キロ
フルマラソンの終盤、ゴールまであと5キロ!つらくて、つらくて、鉛のような重い脚を右、左、と交互に前にだす。もー無理!倒れこみたい気持ちで前にすすむ、、そんなつらさを思いださせるような疲れたココロとカラダ。
49歳の女子にとって、人事異動で新しい仕事をゼロから覚えることは、かなりつらい。
20代の頃は、キッチンペーパーが水を吸収するくらいの勢いで、何でも楽しく短期間で覚えることができた。メモを取らなくても(もちろん仕事については細かくメモをとっていたが)覚えられていた。30代後半あたりから、職場の内線番号が変更になると「んーと、この番号は誰だったかな」と考える。
47歳で人事異動があり、初めての部署でゼロから仕事を教わった。私のトレーナー担当は20代後半理系男子。母親に近い年齢であろう私に指導してくれた。
システムのことなんか、ちんぷんかんぷん。千万円単位の契約関係なんか携わったこともない。作業説明について、私は頷きながらメモをとる。しっかり事細かにメモをとる。確かにメモをとる。なのに!それなのに!!少し期間が空いて、メモを見ながら作業をするが、ワカラナイ。なんならメモが見当たらない。大変申し訳ないが理系男子に「もう一度教えてください」と頭を下げてお願いする。彼は一度教わったら覚えるタイプなのだろう。マスクをしていても怪訝そうな表情がみえる。覚えが良いのは羨ましい。「前回、説明したときにメモとってましたよね。」とキリッと言われる。えぇ。取りました。しっかり取らせていただきました。ですが、ワカラナイんです。自分で取ったメモをみても、さっぱりワカラナイんです!!!と、叫びたいのだが「すみません。忙しいところ本当に申し訳ないのですが、もう一度教えてください。」と頭を下げる。私は泣きそうで、聞くのもコワイ、声も小さく震え気味。理系男子はマスクをして顔が半分以上隠れているが、呆れて苛立っているのが伝わってくる。こんな感じで、新しい部署での厳しい日々は流れていた。
勤続29年。職場環境も社員のことも、ほぼ知り尽くしていると思っていた。年配者から若い子まで、人づきあいは人並み以上に上手くやってきたつもりだった。そんな私にとって、ここの部署は別の会社の世界であった。
衝撃の人事異動から2年目に入り、少し仕事を覚えた。しかし、思う。新しいことを覚えるのがつらい。なかなか頭に入ってこない。
仕事内容が好きじゃないから覚えられないのか、年齢のせいなのか。
どっちもだな。
そんなこんなで忙しい時期の週末にかけては、フルマラソン残りあと5キロ!って感覚と重なる。
美味しいコーヒーを飲んで、アタマの中を無にしたい。
私よ、今週もよくがんばった。