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仕組み

【 はじめに 】

むかぁし、むかし

あるところに
素粒子くんと言う若者が
おりました

若者は完璧な存在でした

完璧にしかなれませんでした
完璧じゃないということが何なのか
知ることが出来なかったのです

本当は
完璧じゃないことをしようと思えば
完璧じゃないことを完璧にできるのに
それさえも、知らずにおりました

何故なら若者は
愛という存在で出来ていたからです

あるとき若者は
自分という価値に気付くための
自分探しの旅を始めようと思いました

みんなも
素粒子くんと一緒に
愛が愛に気付く
自分探しの旅に出かけませんか?


第1部 【 愛は静寂 】


第1章 広い宇宙


すべてのものが自分で
たったひとりの存在であった
素粒子くんは
自分と比べるものがなく
争うことを知らず
諦めることも知らず
怒ることも悲しむことも知らずに

ただただ、あたたかく穏やかに
ただただ、愛として存在しておりました

宇宙の中に存在していたのか
いなかったのか

動いていたのか
いなかったのか

長い時間が経ったのか
経っていないのか

それさえも
知る必要すらありませんでした

なぜなら
永遠で完璧で至福な存在
それが素粒子くんだったからです

あるとき、素粒子くんは
ふと、
自分というものを感じてみたくなりました
ただ愛の存在として、そこに在った自分を
どうしたら、感じることが出来るのか
比べるものの無い世界で自分を知るには

ゼロがわかるのは
1やマイナス1があるからわかるように

愛をわかるには愛とは違ったものが必要でした

でも、
唯一の存在である素粒子くんには
愛と違ったものを見つけ出すことは出来ませんでした

あぁ、この世界に
自分を知るという
こんなにも大変なことが
あるんだなぁ

そう感じた素粒子くんの中から
涙にも似た
光の粒が流れ落ちました
それが、初めて
自分から生まれた自分以外の存在でした
初めて、自分と違ったものを見た瞬間でした

キラキラと光るものを
見ていた素粒子くんは
自分と、自分とは別なものを見て
自分がそこに在ることを知ることが
出来ました

あたたかな光の粒は
キラキラと可愛らしく
見ているだけで
幸せな気持ちになりました

しばらくの間
それだけで充分でした
ひとりじゃない幸せを感じ
自分が在ることに喜びを感じることが
素粒子くんの幸せの一部となりました

そんなとき
きらっ!
って、なんだ?
君はだれ?
自分だけど自分じゃない
君はだれ?

素粒子くんは
自分と別なものを
もっと知りたくなったのです

そして
その光の粒にたずねてみたくなりました

でも、どうやってたずねたらいいの?
自分の中から出て来たはずの
光の粒
だけど、何を考えているかは伝わってこない
どうしたらいいんだろう…

すると
そんな素粒子くんの様子を見た
光の粒が

僕は君だよ
愛だよ

って、キラキラの笑顔で
素粒子くんに話しかけてきました

初めて聞くもの
それが、言葉だったのか
音でわかりあえたのか
それさえもわからないけれど

ただ、音の波が
素粒子くんの体を駆け巡りました

静寂な存在に
初めて波が立ちました

愛?愛は僕だよ

と、素粒子くんは不思議になって
思わずたずねます
はじめて自分から、音を出した瞬間であることだと
気付きもしませんでした

すると光の粒は

僕は、
君に君の姿を見せるために
君が作り出した光の粒さ

愛である君が作り出すものは
愛しか作れないからね
ただ、ちょっと・・・
形がつちゃってるけどね
と、素粒子くんと自分との違いに
照れ笑いしながらピカピカと光ってみせた

ねぇ
私の名前は、素粒子
私から生まれたけれど・・・
君にも名前はある?

って、おそるおそる聞いてみる

僕の名前はフォトン!
光の粒さ!

光の名前はフォトン
なんて可愛らしい名前なんだろう

自由自在に飛び回り
私がどれだけ大きいものかを教えてくれる
ピカピカ光って
私がどんな色をまとっているかを見せてくれる

フォトン、君は私にとっての愛だよ

それを聞いたフォトンは
嬉しくて嬉しくて、
ビュンビュンと飛び回ります

どお?楽しい?
すごいでしょ?って
キラキラと光ってグルグル回る

それを見ていた素粒子くんは

私もフォトンのように飛び回りたいなぁ
と思いました

ただ在るだけの私でも・・・
フォトンのように
自由に飛び回ることができるのかなぁ・・・

ねぇねぇ、フォトン
どうして君は飛べるの?

すると

どうして?って
そんなこと考えたこともないよー
僕は光
光は自由
ただそれだけのことさ
もしも、そこに理由が必要ならね
それはきっと
君には僕が必要で
君の悩みを解決するために
君が僕を
僕の形として作ったんじゃないかい?
全ての悩みを解決するためにね

そう言って、ケラケラと楽しそうに
フォトンは笑い出しました

フォトンの言葉にうなずきながらも
素粒子くんは

私が私の悩みを解決するためって
それは…
私が私であることを知るために
フォトンが生まれた
フォトンは自由に飛び回って
私の姿を教えてくれる…
確かにそうだけど

フォトンが飛んでいるのを見て
私も飛んでみたいなぁって
そう思った
じゃあ、
フォトンが私を飛ばせてくれる!

そうだね、フォトン!
素粒子くんは、勢いよくフォトンに
問いかけた

君はどんなことでも出来るし
君は何にでもなれるよ
だって君は愛だからね

そう言って
フォトンは素粒子くんの体の一点で
ぐるぐる、ぐるぐると
回り始めました
君は何になりたいの?
小さなものになってみたい?
それとも、
今よりもっと大きなものであることを
知りたいかい?

どんな姿で飛んでみたいんだい?

すると、素粒子くんは

私は
小さなものになってみたい!
小さなものになって飛んでみたいよ!
と、すでに自分がフォトンになれたかのように
ワクワクしながら答えました

ラジャー🎵
そう言ってフォトンは
素粒子くんの体の一部から
もう一つ、同じ素粒子くんを
切り取って見せました

素粒子くんの体から分離された
小さな素粒子くん

おチビちゃんの素粒子くんが
誕生しました

さて、大きな素粒子くんと
おチビちゃんの素粒子くん
同じ素粒子くんではあるけれど
2人は2人
自分が分離された新しい自分

この世界が
3人の世界へと変わったように見えました

はじめまして
ボクは、おチビちゃんです
よろしくお願いいたします

素粒子くんから分離した
小さな存在のおチビちゃんは
しっかりとした口調で
2人に挨拶をしました

2人は、
おチビちゃんが
しっかりものであることよりも
小さな可愛らしい存在であることに
愛おしい気持ちでいっぱいになりました

そんな2人の様子を見ながら
おチビちゃんは、
自分がどれだけ小さな存在であるかを
見せてみたくなりました

どおです?
ボクはこんなにも小さな存在として
誕生しましたよ!
と、得意げに
おチビちゃん自身が
自分の存在を確かめるかのように
自分の体を良くみてみると

なんか!なんか付いてる!?
ボクの体に、体じゃないものが
くっ付いて来るー!

そう叫んで、
その得たいの知らないものから
逃げ回るおチビちゃん

そんな、おチビちゃんの様子をしばらくの間
そっと見つめていたフォトンが
ようやく、口を開きました

おチビちゃん
君にくっついて離れないものはね
それは、君の影だよ
君はその影が無いと
君として、僕や素粒子くん
そして、君さえも
君の存在に気付けやしないのさ
わかるかい?
君が存在するために、
影はね、必ず必要なものなんだよ
これから、君に一つ
大切な話しをしよう

君が存在するために
影が必要だって言っただろう?
君は愛で、そして光だ
だけど、影がないと
愛も光も、わかりはしないんだよ
だからね
これからは、影も君の一部
そうだなぁ
影も、愛の一部、そして光の一部
そんなふうに思って生きてごらん
だって、自分を存在させてくれる
大切な同志だからね

そんな2人の会話を聞いていた
素粒子くんは、黙って
自分から生まれた2人の存在を
ただただ見つめておりました

その見つめる先には
いったい何が
見えていたのでしょうか?

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