見出し画像

飲食に向いていない人間

飲食。飲み、食べること。飲食店の話ではない。
そういう意味で、私は飲食に向いていないと思う。

紛れもなく少食で、少飲(今名付けた)である。

これにはひとりっ子なのも関係しているのではないかと思ったが、書きながら、沢山食べられるひとりっ子の友人を何人も思いついたのでそんなことはないようだ。

思えば小学生の頃から、「晩ごはんが入らなくなるから」という理由で16時以降におやつが出ることはなかった。
しかし、幼なじみの男3人と走り回っているとさすがの私もお腹が空く。そういう時は幼なじみのお母さんが塩おむすびを作ってくれて、みんなでドリフを見ながら食べるのだ。私は食べるのが遅いので、ほとんど男たちが食べる。結果として、晩ごはんが入るくらいの胃の容量は保持されていた。

そういえば、友人たちには言っていないのだが、私は昔からおにぎりが大好きである。おにぎり大好きくんみたいに見えないので、ブレるか……と思って隠していた。最近やっと友人のひとりに言ったらすごくウケていたし、「全然おにぎり好きそうだよ」と言われた。

そうか……もう、おにぎり好きって言っていいのか……。


友人と「私おにぎり大好きなんだ!」「私もおにぎり大好き!」と言い合う時間は、あまりにも小学生でとても良かった。さっきまで人生の話をしていたのに。


飲み物は比較的飲んでいたと思う。夏用の大きい水筒も持っていた。ただ、帰って母に「減ってないやんけ!」と怒られるのが嫌で飲んでいたので、非常に消極的な飲みである。そして飲み物がなくなった友人にほいほいあげていたので、私1人の力ではない。

多分私は、母が怒らないと飲み物を飲まないのだ。今までの人生で何度母に「お茶飲んだ!?」と怒られたことか。

その証拠に、ひとり暮らしを始めたら常にめちゃくちゃ水分不足になってしまった。
気をつけて飲めばいいのだが、別に欲していないので忘れてしまう。しかも脳は欲していないのに細胞は欲しているらしく、クラクラしてくる。
誰か助けてくれ。

トイレに行く度に飲むように習慣づけるといいと聞いて試したこともある。
しかし、私は膀胱も小さいのだ。何度もトイレに行かなければならず、面倒だったので続かなかった。

詰みだ。

どうしてこう、何もかも小さいのか。


でっかくなりて〜〜〜〜〜!!!!!!でっかくなりてぇよ!!!!!!!


一食にパンを2つ食べるのでさえ一苦労。お腹がいっぱいになって気持ち悪くなってくる。コーヒーや酒ならスルスル入るのに、お茶や水は入らない膀胱。水分補給とは呼べない。

私は好き嫌いがほぼないのだが、それだけが救いだ。これで好き嫌いも多かったら終わりも終わりだった。(数少ない嫌いなものは、混ぜ物がしてある豆腐だ。ごま豆腐や卵豆腐などが挙げられる。少し前にウニ豆腐を食べる機会があり、そこでも撃沈した。ちなみにただの豆腐は大好きである。)
まあ、肉は油で胃もたれするのであまり食べられないが……。油にも弱い……。

何なら食べられるんだよと言われれば、野菜と果物である。卵と乳製品も好きだ。
あとは、納豆とキムチと豆腐を混ぜて食べるのが好きだ。

どうだ。健康志向の人間みたいに見えるだろう。

酒も大好きだ。できることなら毎日飲みたい。酒は美味しい。そして、喉が渇いてくるので水分補給もできる。酒は百薬の長とはこういうことか。

健康と不健康の狭間で飲酒して、フラフラしながら己の小ささを恨んでいる、それが私である。


どうやって改善しようかという話がしたかったが、もう諦めた。膀胱炎にさえならなければ、水分不足でもいい。膀胱炎にだけは二度となりたくない(2回経験済み)。
1回目は激痛タイプだった。しかし、治すにはとにかく飲んで体から毒を出すしかないらしい。飲むのも苦痛、出すのも苦痛な地獄の日々を送る羽目になる。
2回目は無限排尿欲タイプだった。さっき行ったはずなのに、3秒後にはもう排尿欲が来る。一生おもらしの不安が付きまとう。成人済みなのにおもらしなんかしたくない。外出なんてできたもんじゃなかった。

それと、少食なんてそもそも改善の余地があるのか?運動しろって?嫌だね。

もうこうなったら、

「味ラジオ」ができるのを待つのみ。


ご存知だろうか。
星新一のショートショートに『味ラジオ』という作品があるのだ。
その世界の人間は皆、ガムのようなものを噛みながらラジオを聴く。ハンバーグを食べていればハンバーグの味がする。チャンネルが変われば味も変わる。

私に最適である。食べ物は大好きだが味を感じたら概ね満足するので、すぐお腹いっぱいになるのだと思う。これなら色々なものを食べられるし、私はガムも大好きだ。

誰か味ラジオを作ってくれないだろうか。まあ味ラジオに慣れきった世界には問題もあるが、ぜひ読んでみてほしい。

Amazonのリンクを貼ろうとしたものの、2回失敗したので諦めることにする。

『妄想銀行』 星新一   新潮社

これで許してくれ。

とにかく、悲しいかな、このように飲食が不得意な人間もいるのだ。しかしいつか味ラジオができて、私が覇権を握る日が必ず来る。震えて待て。それまでに思う存分飲食しておくんだな。

あれ、味ラジオがあっても飲むことは必要……。なるほど。覇権を握る日はまだまだ遠いらしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?