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バイオ炭が持つポテンシャルについてリサーチしてみた

近頃、バイオ炭というキーワードを良く耳にするようになりました。
日本で注目されるようになった背景としては、J-クレジットの方法論に組み込まれたことやSBTi FLAGの影響が大きいのではないでしょうか。
ただ、世界ではもっと前から着目・研究がなされているようです。
2015年のnatureダイジェストの記事を参考に、その歴史やバイオ炭の持つポテンシャルなどを少しまとめてみました。


バイオ炭のルーツ

natureの記事ではバイオ炭の歴史が以下のように記述されています。

バイオ炭が広く知られるようになったのは最近のことだが、歴史は古い。アマゾンに住む人々は、何百年〜何千年も前から、有機物を加熱して「テラ・プレータ(黒い土)」と呼ばれる肥沃な土壌を作っていた。けれどもこの習慣は欧州諸国が南米を侵略した頃に廃れてしまい、別の地域の少数の農民だけがバイオ炭を作り続けた。科学者がバイオ炭に強い関心を寄せるようになったのは10年ほど前のことである。地球温暖化への懸念が大きくなったこの時期に、一部の人々が、大量の炭素を地中に埋没させる手段として、バイオ炭のことを盛んに宣伝し始めたのだ。その後、炭素埋没法としての期待は外れたが、土壌科学者は現在、農業に利用する方法と汚染の軽減に役立てる可能性を模索している。

nature ダイジェスト

バイオ炭のルーツはアマゾンだったのですね。そしてその歴史は私の想像していたよりかなり古いものでした。
海外では2015年頃からバイオ炭に関して広く知られるようになったということなのですが、科学者はそれより前の2005年頃から着目をし、研究を始めたということになります。

バイオ炭の持つポテンシャル

バイオ炭は土壌改良材や脱臭剤など、さまざまな活用方法があり、そのポテンシャルはかなり高いと思います。
natureの記事では以下のように紹介されていました(一部抜粋)。

中でも注目されているのは、バイオ炭が土壌中の水の動きにどのような影響を及ぼすかという問題だ。コロラドカレッジ(米国コロラドスプリングス)の生物地球化学者Rebecca Barnesらは、さまざまな土にバイオ炭を加えて、この問題を検証した¹。通常、砂の中では水はたちまち流れ去ってしまうが、バイオ炭を加ることで水の移動速度を平均92%も遅くすることができた。また、粘土を多く含む土壌は、水を長くとどめすぎてしまうが、バイオ炭を加えることで移動速度を300%以上も速くすることができた。
Barnesは、自分たちの知見の重要性を強調する。粘土の粒子は、大量の水を蓄えることができる一方で、水を通過させることができず植物の根に水を届けられないという問題があるが、これを解消できるからだ。いくつかの研究により、何も加えていない土壌や堆肥を加えた土壌よりも、バイオ炭を加えた土壌の方が植物がよく育つことが示されている²。

nature ダイジェスト

また記事では、他にもバイオ炭が土壌中の微生物の活動に及ぼす良い影響についても言及されていました。
ただし、良い面ばかりではないようで、作物の収穫量を減少させるという報告⁵や、植物の昆虫や病原体に対する防御遺伝子の活性を低下させることも示唆⁶されています。
とはいえ全体的には、バイオ炭がもたらす影響は、悪いものより良いものが多いようです。
記事では以下のように記載されています。

2011年のメタ解析結果からは、全体として平均収穫量が10%増加していて、酸性土壌では14%増加していることが分かった⁸。バイオ炭の効果が最も出やすいのは、土壌が劣化していて肥料も不足しているような場所かもしれない。バイオ炭によって、土壌がもともと持っている栄養分を保持しやすくなるからだ。カリフォルニア大学バークレー校(米国)のAndrew Crane-Droeschは、ケニア西部の劣化した土壌でバイオ炭の効果を調べている。これまでに得られた予備的なデータによると、バイオ炭を使っている畑の収穫量は対照群より32%も多いという。

nature ダイジェスト

メタ分析のデータは2011年と古いですが、バイオ炭が収穫量に与える影響としては今も同じではないかと思います。
また、ここで記載されているように、最も効果が出やすいのは肥料が不足している荒れた土地のようなので、逆に栄養満点の土地に撒くと悪影響を及ぼす可能性もあるかもしれない点、注意が必要です。

バイオ炭の大量生産が生む危険性

原料は何が使われているのか、どこから持ってきているのか、という点にも注意が必要です。
この記事でも言及されていますが、バイオ炭の原料を木材にした場合、森林破壊や土地および生物多様性への悪影響を推し進めてしまう可能性もあります。

バイオ炭の需要が増えたら増えたで、その製造に伴う環境への影響が懸念される。ここで問題になるのが、原料の選択だ。中国は稲や小麦のわらなどの農業廃棄物を利用しようと熱心に取り組み、米国の一部の研究者は厩肥を推しているが、どちらも大量生産には向いていない。木材を原料にすると、森林破壊や土地を痛めつけるような利用法を広めてしまう恐れがある。

nature ダイジェスト

バイオ炭は気候変動対策に有用だと思いますが、そのバイオ炭が逆に環境問題を悪化させることのないよう、どのような過程で調達され、製炭されたのかを十分見ていく必要があると感じました。

引き続きバイオ炭をはじめカーボンネガティブに関する情報など色々と調べていきたいと思いますので、どうぞお付き合い下さい。


参考文献


1.Barnes, R. T., Gallagher, M. E., Masiello, C. A., Liu, Z. & Dugan, B. PLoS ONE 9, e108340 (2014).
2.Liu, J. et al. J. Plant Nutr. Soil Sci.175, 698–707 (2012).
5.Rajkovich, S. et al. Biol. Fert. Soils 48, 271–284 (2012).
6.Viger, M., Hancock, R. D., Miglietta, F. & Taylor, G. GCB Bioenergy http://dx.doi.org/10.1111/gcbb.12182 (2014).
8.Jeffery, S., Verheijen, F. G. A., van der Velde, M. & Bastos, A. C. Agric. Ecosyst. Environ. 144, 175–187 (2011).



上記のようなリサーチはもちろん、LCA算定やScope3評価、生物多様性評価などもやっておりますのでご相談があればお気軽にお問い合わせください!


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