いぼをとった話
数年前両ほっぺたにちいさなプツプツが出来た。
吹き出物は放っておけばそのうち治ると思いながら数年、治るどころかうっすら色付いてきて少し大きくなってきた。
重い腰を混み合う皮膚科へ。
診察に入るや医師は「老人性いぼですね、内服薬も塗り薬も効きません」「ウイルス性ではないから人にうつりはしないけど見た目の問題ですね」と言われた。
レーザーで削る治療があるらしいがこの機械を持っている病院自体少ないので必要であれば紹介状を書くとのこと。
元々美容に無頓着で(清潔感さえ保てていればよしと思っていた)このぶつぶつに深く悩んではいなかったのだが「イボって本当に取れるのか?」という興味が勝った。
紹介状をもらい完全予約制という形成外科へ電話をかけた。
事前に見たホームページは至って落ち着いた作りで安さを売りしたり浮世離れした高級感を漂わせてもおらずちょっと安心した。
保険外診療のため恐る恐る値段を尋ねると「カウンセリングは無料、大きさや数にもよるが1〜5万くらい」とのこと。
数日後その形成外科を尋ねた。
他の患者さんとは一切顔を合わせない鉄壁の作りの院内だなぁと思っている間に医師のカウンセリングへ呼ばれた。
「うん、脂漏生角化症(老人性イボの別名)ですね。
こりゃ(こめかみらへんを見ながら)数が多いねぇ。年々増えるし大きくなるよ」 こめかみの黒い点はシミだと思っていたがいぼなんだそう。
ややショック。
施術後の再発率はゼロではない、10%以下とのこと。
金額はいぼ一つにつき1万円だそう。
43才で再びフリーターとなった私に手痛い出費だが話のネタに一番色が濃くて大きなのを取ることにした。
ほんの少しチクっとする麻酔をほっぺに打ち、小さめにジジジッと音を立てながら医師がいぼを削っていく。
焦げる臭いがして「私は焼くとこんな臭いがするのか」と思うと焼き鳥になったような気がしてちょっと可笑しかった。
1分もせずに施術は終わり、医師から手で触ってみて下さいと促され、いぼのあった所を手探りで探すも凸がすっかり無くなっていた。
一週間患部を保護する麻酔入り絆創膏を貰い会計へ。
「現金払いの方はポイントがつきますので」とポイントカードを頂いたものの、このカードを満杯にするにはいくらかかるのだろうと下世話なことを考えた。
麻酔入り絆創膏が効いているのか夜になっても痛みなどない。
風呂に入ると絆創膏が取れてしまったのでしばしいぼの跡地を観察、直径3ミリ程の黒みがあるいぼだったが、平らにでも赤くなっていた。
私には金額が高いと感じるのでいぼが爆発的に増えない限り、もう足を踏み入れることはないかもしれないが面白い体験だった。
そして5日が経過、いぼの跡地は赤みは残っているが日が立つにつれ若干薄くなりつつある。
そのうち新陳代謝が上手くいけば色は戻るんじゃなかろうか?