姉が引きこもりの妹へ
2024年10月26日
14時ごろに加藤諦三のテレフォン人生相談に相談した28歳の君へ
29歳の姉が大学卒業後から引きこもり、躁鬱を患い、母親が倒れ寝たきりになり、父親にも「お前だけが頼りだ」と言われ、自分の人生も台無しになりそうだと相談した君へ
居ても立っても居られなくなって、このノートを書いている。
世界中の他の誰でもなく、君1人に向けて書いている
私は君とほぼ似ている境遇だ
私は君より1つ若い27の女だ
4つ上の兄がいる
兄は専門学校を卒業した後、1年契約社員として働き、その後に退職して数年ニートだった。
その頃から精神的な病気にもなってたんだろう。専門家でもない私がいうのもなんだが、強迫性障害ではないかと思う。
引きこもってたわけではなく家の中を普通に歩いて家族との仲も比較的良好だった。
数年ニートしたあと、頑張ってまた会社員になった。データ入力の仕事だったが、「自分の仕事に間違いがないか不安で仕方がない」と1ヶ月で退職した。
その後、今に至るまでニートだ。
いわゆる童貞ニートの子供部屋おじさんだ。
君の姉と同じように偏食もひどく、コンビニのパスタやいちごミルクのような体に悪いものばかりを好み、尿管結石ができて非常に苦しんだのにも関わらず食生活を改めようとしない。
もちろん医療費は全額親負担だ。
先ほども書いたが、おそらく強迫性障害なんだろう。異常なほどの潔癖症になり、お風呂に2時間入ったり30分以上かけて手を洗うようになった。
当時まだ私は実家暮らしだったので、そんな兄の様子を見てるのが辛くて、ついには流れてもない水の音が聞こえて気が狂いそうだった。
テレビのニュースで定期的に「無敵の人」の無差別犯罪が報道されるたび、「自分の兄もいつか人を殺すんじゃないか」と怯える。
今でもそうだ。
親も楽観的に見えて非常に腹立たしい。
ぶん殴って家を追い出してでもどうにかしろと言いたい気分だ。
仕事中にラジオから流れる君の相談を聞いて「私と同じじゃないか」と思い、仕事をサボって最後まで話を聞いていた。
私には君の気持ちが痛いほどわかる。
そして君が人生相談の間、耐え難いほどの無気力さや切なさを抱えていることも感じられた。
弁護士の先生も加藤諦三さんも、そしてリスナーの人もみんな
「福祉に繋げろ」
「君の人生は君だけのもの」
「家を出ろ」
そう言ってきた。
しかし私にはわかる
君があの人生相談で言って欲しかったセリフは
そんなものじゃない。
君が言って欲しかったセリフは
「あなたのお姉さんと同じように精神疾患を抱えて長期間引きこもってる人も、何かのきっかけで社会復帰できるようになる。だから大丈夫」
だったんだろう。
根拠のない「大丈夫」を言って欲しかったんだろう。
あのときの私も、そして今の私もそうだ。
君の言葉の端々から、君が非常に賢い人間であることは想像がつく。
そんな君のことだ。
福祉のことなんてすでに調べてただろう。
そして以前に福祉に頼ってたけど無駄だと言っていた。
実際に自分が頑張っても徒労に終わった経験があったわけだ。
ネットで調べればすぐに出てくるようなありきたりな現実的なアドバイスを君は求めてたわけじゃないんだろう。
著名な心理学者からの「大丈夫」が欲しかったんだろう。
そう言ってもらって、自分を勇気づけたかったんだろう。
だけどありきたりなことしか言われずに、辛かったろう。
勇気を出したのにね。
終盤、君の返事がすごく辛そうで私は胸が痛かった。
だから君の欲しいセリフを私は何度でもいう。
きっと大丈夫だ。
君も、私も
きっと、大丈夫だよ。
今日はずっと君のことを考えていた。
名前も顔も住んでいる場所も、何もわからない君のことを。
おそらく世界で誰よりも似た境遇の君のことを。
このノートを見つけてくれたら嬉しい。
君は1人じゃない。
少なくとも私がいる。
それだけは忘れないでくれ。
どうか君が、このノートを見つけてくれますように。