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りりちゃんと飲む酒の味


不思議と気が合う

会えば、飲むことしか用事はない

彼女の心を聞いてから会うことが多くなった

顔を見て、酒を飲む。

元気だったかな

彼女にはいろんなところに連れて行ってもらった

飲むことと食べることが好きな人だった

誰も人に言いたくないものはいくつかある

彼女にしても同じ

二人で昼日中から飲む

男の悪口を言いながら

と思うだろうが、その話題は避ける

取り止めなく料理を楽しみながら彼女はビールから酎ハイを飲む

お互い酒は強い

今日の私は仕事でないのでロングスカートで、きている

それも素晴らしい総レースだ

色はやめとこう

とりあえず、二人ともおかしいのだ

そのおかしさが、酒をうまくする

話は何をしたかはお互い覚えていない

気に留めるような話は人前ではしない

ただ、飲んで楽しめればいいのだ

ここのメニューをいい加減に頼んだり店に訪ねて頼む

異様な女二人連れだ

酔うこともなく二人で再会を楽しんでいるだけ

多分、話題になるのはお互いの犬の話が一番かもしれない

彼女曰く

飼い主に似て可愛さはないし
躾ができていないとはいつも言われる

天真爛漫だと言い返す

話してて思うのは二人とも本当にずれている

何処か観光に行くとか、そんな気もない

何かを見たら、心が癒せるなんて、そんなこともない

彼女の手首の傷は、まだ、まざまざと見える

見ないふりをしてみる

どれだけの時間が流れたら癒せるのだろうか?
一滴、迂闊にテーブルに落ちたのを目ざとく見られた

「泣かないで、大丈夫だから!」

「うん、・・・・・」

彼女は仕事に行くときは
サポーターをつけていると言っていた

それなら怪しむ人はいないと言っていた

この傷は薄くなることもあるだろう

が、心の傷は消えることはないと思う

「どうしたの?EVEさんらしくもないですね」

彼女の瞳が潤むのを見て

「バカみたいだね、男のために泣くなんてね」

「とりあえず飲むか!  
.代行でしか帰れないから、とことん飲んでみるかね」

それから、取り止めなく飲んだ

「EVEさんだけです。泣いてくれる人
私、出会えたこと感謝しています」

別れ際に彼女は珍しく涙を流した

「また、飲もうね」

そんな飲み会を何度重ねたか分かりませんでした

が、彼女もしたたかに生き抜いてきました。

お互い言葉に出さず、癒えない傷を心の奥深くに沈めて

男なんて、こんなものかと

酒を飲み交わしていたこともありました

私が仕事抜きにこの町に来るのは彼女と飲むときだけ

幸か不幸かお互い酒は強かった

そんな話でした


最後までお付き合いいただきありがとうございました


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雪絵
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