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【雑文】春の雨が降る

今年は雨だ
春の雨が降る

今年も会えないのにやってきた

これで何回目だろう

車の中から外を見る

私の心のようだ

冷たい雨が降る

目の前には桜の花が満開だ

花は散り始めている

ここから見ていてはいけない

足袋が濡れる

約束の場所は

ここではない

小高い丘の上だ

蛇の目傘をさして歩き始める

ゆっくり歩いた

今年も来ない
と、言うことは

貴方の家は変わりなく
暮らしているのか?

何を願っている
貴方が自由になることは
貴方が一人になることだ

家を捨てて暮らそうと
貴方は言ってくれた

誰かを裏切れば

私も裏切られる

だから、こうして待っている

貴方が一人になることを

生きて会えるのだろうか?

いっそ奪い取ってしまえば

奪い取れば私は幸せになれるのだろうか

勇気はない

何も知らない

あなたを信じて
あなただけを愛した人から

引き離すことはできない

私が待てばいいのだ

黙って待てばいいのだ

どれだけ年を重ねても
夫としての役目が終わったら
会いに来ると言ってくれた

その言葉だけを信じて生きてきた

貴方の妹から

「お兄ちゃんに近づかないで
お義姉さんは何をも知らないのだから」

泣いて言われた

あれから、どれだけ過ぎただろうか?

貴方は夫の仮面を被って生きている
私は被れきれず家をでた

私は女の盛りが終わる
この桜のように咲き終わる

それでも待つのか?
待つことだけが私の生きることになった

ゆっくり丘を下り始めた

ふと、目の前に人が立った

妹さんだった

何も聞かずともわかった

何も言わず通り過ぎた

蛇の目傘を閉じた

冷たい雨が身体を濡らす

後ろから泣き声が聞こえる

もう当てもなく待つこともなくなった

それでも

来年もわたしはくるだろう、
待つことも期待もなくなった
約束のここに


ありがとうございました
恋は人生を狂わせる
今日も始まります
一日おきをつけてください


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雪絵
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