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2024年米大統領選と投資リスク

今年の大統領選まで残り半年たらず、バイデン政権の3年半を点検してみたい。
結論:オバマ政権の延長線だから、どうなるかは当選時点に想像できた。しかし、これほどの無能ぶりは想像を超えたもので、中長期視点から見る株式投資のリスクの増大に繋がるのではないかと思う。

1、インフレを制御できなかった4年間
・コロナ前、トランプ政権下の2017年から、FRBは政策金利を引き上げ、量的緩和をやめ、金融緊縮へ方向転換し始めた。

米ドルマネーサプライM2推移

・しかし、2021年バイデン政権になってから、再び金融緩和へ舵を切る。ドルのM2推移を見れば、どれだけドルを刷ったかは一目瞭然。
・コロナ禍を口実に国民にドルをばら撒いたり、学生ローンの免除を宣言したりして支持基盤の拡大を狙い、財政政策でドルをすりまくり、グリーン政策でエネルギー価格や生産コストを押し上げるなど。全て2021年からのスーパーインフレを生み出す要因になっている。
・結局トランプ政権はオバマやバイデン政権と比べて一番M2の増加率が低く、インフレが緩やかな時代だった。
・インフレで生活が苦しくなるのは資産を持たないアメリカの庶民たち。

3、米国内の混乱と対立を助長
・2020のフロイド事件とその後のBLM運動は当選前だが、民主党の最初の大失敗。
・事件を利用してリベラルへの支持を集めようとするのは見え見えだが、逆にBLMという馬鹿げた運動を助長してしまった。
・男女間対立、人種間対立を煽り、不法移民を容認するなどして、これを利用して民主党政権を半永久化しようとする狙いは90年代以降民主党の長期戦略に見える。
・一番人々を愕然とさせたのは、今年の反ユダヤ・反イスラエル・ハマス支持運動である。全米各地大学の茶番劇は1960~1970年代中国の文化大革命を彷彿させる。
・平等を謳歌する左だが、民主党政権下でもアメリカ国内の経済格差がますます拡大したことはもっと興味深い。
・移民問題、民主党はトランプ政権下で国境の壁を批判していた。しかし、2021以降、メキシコとの国境からの不法移民は記録を超えたレベル、国境管理がずさんすぎて不法移民の収容施設も足りない。トランプの批判されまくった国境の壁の政策は今になってますますアメリカ人の理解と支持を得ている。

4、冷戦後最悪の国際情勢
・東南アジアでの敗走(ミャンマーで起きたクーデターと民主主義の終結。トランプ政権時と比べて、バイデン政権は親中・アメリカ離れの加速させている、2024年時点でASEANのうち親米国家は半分以下)
・インド(インドを甘やかしすぎて、おそらく20年後の新しい地政学リスクをタネをばら撒いている)
・ペロシの訪台以降、中国軍による台湾周辺の軍事演習が常態化した。忘れてはならないのは、ロシアのウクライナ侵攻は軍事演習が始まりだった。おそらく将来の台湾侵攻も軍事演習が序幕になる形の戦争になるかもしれない。
・目下中国国内の混迷は自国の政策決定によるところが大きい。バイデン政権による中国封じ込め戦略は中途半端で甘すぎたと言える。制裁を食らった中国企業は倒れるどころか、これを機にアメリカ以外への進出や自社の経営強靭化をはかり、アメリカ離れの意味で成功しているように見えた。
・2021アフガニスタンで米軍の醜態は、翌年プーチンが対宇全面戦争へ踏み切った決断を促した一因になったことは否めない。
・ウクライナ戦争の勃発とその後の謎対応、そして現在ウクライナが窮地に立たされている裏での西側対露融和派の暗躍。アフガニスタンの件にも関わらず、なぜNSA(国家安全保障補佐官)のサリバンを首にしなかったか興味深い。実態はわからないが、現在もウクライナやイスラエルにおける危機のこの人の責任が大きいと思われる。
・ウクライナ戦争の序盤で迷走したロシアだが、中途半端の経済制裁と介入を優柔不断する西側の鳩派の隙を突いて、ロシアは完全に戦時体制の転換と戦争の長期化を実現した。ロシアを支えている中国、北朝鮮、イランや、中立を謳いながら事実上にロシアの侵略行為に加担しているインドを代表とするグローバルサウス。これらの国々は西側が作った国際秩序をぶっ壊す主役になりつつある。
・核戦争を恐れ、直接の軍事介入に踏み切れない西側は、ウクライナの敗戦を容認し、さらなる大規模戦争(台湾有事)のタネをばら撒くことになる。ちなみに、ロシアがウクライナ東部を占領したままでの停戦は、力による現状変化の正当化とロシアの勝利を意味する。
・イスラエルの危機。ハマスによるテロ攻撃後国際社会がイスラエルに同情する絶好のタイミングを見逃し、今になってイスラエルはますます孤立化し、人質の安全も確保できないままである。さらには、米国内にとどまらず世界中で親ハマス・反イスラエルの茶番劇が流行っている。もっとも馬鹿げたのは、LGBTなどの過激リベラルがこの世でもっとも保守的で反リベラルのイスラム教原理主義のハマスを擁護していることである。
・冷戦後の秩序が崩壊することは現在進行中で不可避。

5、アメリカという国の本質
・最強軍事力を担保に世界秩序(概ねの世界平和)を維持し、ドルの基軸通貨の地位を利用し、国債を無上限に発行して世界中の富を集め、それを軍事力の維持に回すという循環。(アメリカの最大の輸出品は「世界秩序」である。もちろんこれは貿易収支に計上されないのだが)
・ちなみに、これは近代国家政府のロジックと同じである。要するに、国家暴力の独占によって徴税を行い、集めた税金をまた国家暴力の維持に使うという循環。
・もちろん、伝統的な国家政府と最大の違いは、自由民主主義というイデオロギーの旗である。専制や抑圧を嫌い、自由に憧れる世界中の人材や頭脳はアメリカに向かい、アメリカの国力増強に貢献してきた。
・冷戦後のアメリカは事実上、世界帝国の中枢。もちろん君主が存在しない帝国である。世界最強を誇る軍事力と自由民主主義のイデオロギーという二つの武器を併用し、21世紀版の世界のローマ帝国のような存在になった。
・しかし、そのハードパワーとソフトパワーという二つの武器は相対的弱体化あるいは魅力を失いつつある。
・冷戦後、なぜ世界中はアメリカによる国際秩序を暗黙の了解とみなしてきたのか、それは端的に言えば、アメリカがこの世界の秩序を担保してくれるからだ。
・2000年代の中東における二つの戦争やリーマンショックはあったが、本質上パックスアメリカーナの崩壊は、オバマが在任中の世界警察をやめる宣言から始まった。
・2014年から2016年の中国とフィリピンの南シナ海対峙事件でフィリピンを見捨てたオバマ政権。
・2010年代から中国が南シナ海の島々を軍事化する動きを容認したオバマ政権。
・2014ロシアによるクリミア併合を事実上容認したオバマ政権。
……
・はっきり言って、中国やロシアのような国には、リベラルの外交政策は通用しないし、通用するのはパワーの裏付けがあるリアリズム。

6、投資家へのリスク
・台湾有事(可能性大、破壊力無限大)第三次世界大戦の引き金
・中東紛争の拡大(可能性中、破壊力大)21世紀版オイルショック
・現状停戦とロシアの勝利(可能性大、破壊力大)EUの再構築につながる
・核兵器の拡散(可能性100%、破壊力中)北朝鮮やイランが事実上核兵器保有国になるように、次々の専制国家は核兵器を求めるようになるだろう。なぜなら、今回のウクライナ戦争で核兵器が国際介入を防ぐに如何に有効かロシアが証明したからだ。

7、2024年大統領選予想
・最後まで誰もわからん
・ただし、結果によって色々見えてきたことがあるだろう
・バイデンの続投(4割):これほどの失敗をやらかしてきた大統領が続投することは、アメリカの現在の政治体制がうまく機能していないとこを強く意味する。政治の世界は結果主義で、ダメな政治家が退くのは当たり前。
・トランプの再選(6割):落選にも関わらず大統領の座に返り咲くことは、そのライバルである米民主党が如何に政権運営に失敗したかを意味する。

最後に、それでも投資家はアメリカに目を向けなければならない。なぜなら、世界の他の地域はもっともっとクソだからだ。人間はつねに理想を選べず、一番悪くない選択肢から選ぶのだ。
ただし、様々な長期リスクは何らかの形で顕在化し、1929年のマーケットの再現してくれるのは時間の問題。

6/4追記
・トランプ氏の不倫口止め料をめぐる裁判で有罪判決が出た、しかも重罪
・このタイミングでこの程度の不正会計という軽罪を重罪に仕立てた米国の裁判
・これは昨今米国における三権分立と司法の独立
・手段を問わずトランプの再選を阻止したいというリベラルの焦りが見えてきた。
・確かにトランプはダメな人間であり、クソな政治家であるかもしれないが、目的達成のために手段を問わない姿勢は、いずれもっと大きな悲劇をもたらす。
・2世紀半守られてきたアメリカの国是をアメリカ人自身が捨てたときには、アメリカはアメリカではなくなる。そのときは米国株の売り時かもしれない。

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